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序列

俺は委員等に聞く。委員長は少し戸惑ったように話し始める。


「わ、私って、人間じゃないですか」


「う、うん。そうだね」


その通りだが、いきなりそんなことを言わなくてもいいのでは……俺は少し困惑しながらも委員長の話を聞く。


「でも、私にも親はいるわけで、今から会いに行こうと思っているんです」


「あ~、なるほどね」


俺は委員長のことをあまり多くは知らないが、田辺からいろいろと聞いているのである程度の情報は把握している。


つまり、委員長は親である【聖獣】に会いに行こうとしているのだろう。そして、その【聖獣】は立古神社にいる。


立古神社は俺と同じ方角の場所にあるのでそれなら俺と同じ方角に変えるっていうのも納得だ。


「よくよく考えたら、委員長はその実の親のところに、あの【魔獣】から解放されてからほとんど会いに行ってないもんな」


「はい、そうなんです」


「確か、解放される直前にこっそり会いに行ったのが最後じゃなかったか?」


「……は、い」


うん?なんだろう。委員長の顔が険しくなってややひきつっているように見える。俺は何かまずいことでも言ってしまっただろうか。


俺がそんなことを考えていると、不安や警戒が入り混じった眼で俺のことを見ながら話しかけてくる。


「あの、ちなみになんですけど……」


「うん?なに?」


俺は内心焦りながらも余裕を持って委員長を見る。ここで少しでも印象を挽回する答えを言わないと……


これ以上内輪揉めを起こしたくはない。俺は委員長の発する言葉に全力で耳を傾ける。


「なんで、私が立古神社に行ったことを知っているんですか?わ、私誰にも言ってないし、その時周りに誰もいなかったと思うんですけど……」


ああ!そういうことか。俺は委員長が警戒する理由がわかる。誰も知らないはずのことを俺が知っていたのだからそりゃ疑いたくもなる。


だがここで本当のことを言うべきか?多少うそをついても委員長との関係性を壊さないようにするべきではないか?……


俺は少し迷うが、うそをついてもこれから一緒にいる機会が増えることを考えると、ここでうそをついても後々ぼろが出る可能性が高い。


ここで本当のことを言って、多少軽蔑されても信用を勝ち取った方がいいだろう。俺は本当のことを言うことにする。


「委員長」


「な、なにかな?」


いまだ警戒を解いていない目。フーと俺は深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。そして、委員長の目を真剣な目で見据える。


そして、深々と勢い良く90度に頭を下げる。


「その件に関しては誠にすいませんでした!!」


「え、えっと、そんな急に頭を下げられても、事情がわかんないから……」


突然の謝罪に委員長はもちろん戸惑っているが、そんなことには構わず俺は勢い良く言う。


こういう時は誠実な対応、真摯な気持ちそういったものが伝わらなければならないのだ。うじうじとするのではなくキリリと言わなければならない。


「事情ですね?わからないならば説明します!俺はあなたのことが気になって、あなたの後をつけていました!!」


「え、でも周りには誰もいなか……」


委員長が言いかけるのを俺は発言してさえぎる。


「それもそのはずです!俺は委員長に気が付かれないように委員長の風に乗ってきたほのかな甘い香りをかぎながら追っていましたから」


「え?」


「そして、委員長の、女の子の小さくもしっかりとした軽快な足音を少し遠いところから聞いてましたから!!」


俺は力強くそういう。さりげなく「ほのかな甘い香り」や「小さくもしっかりとした足取り」など、女の子が聞いたら喜びそうな単語を交えながら話す。


謝罪と見せかけてその裏ではさりげなく、その女子のことをほめる。ネット記事にもこうすればいいって書いてあった。


俺はさげていた顔をちらっと上げて委員長の表情をうかがう。


「え、素直にきもすぎます……」


あれぇ?!おかしい。委員長はこの世のごみが収束されたものを見るかのような軽蔑のまなざしを俺に向けていた。


今までの委員長では考えられないようなするどい目を眼鏡の奥から向けていた。


もしかして、俺は言葉選びを間違えてしまったのか?くそぅ、あのネット記事め。騙された!!!


「はぁ、もう過去のことを言ってもしょうがないから今回は許してあげます」


よ、よかった。最低限の誠意を示すことはできたようだ。俺がほっと一息ついていると委員長がこちらをくるっと振り返り見る。


「ただし、今度同じようなことをしたらマジで許さないから」


「は、はい」


いつもの敬語を使わず、普段よりも鋭い目、そしてワントーン低い声。それらが俺の中でナニか新しいものを目覚めそうさせようとしていた。






そんなことを俺と委員長がしているうちに、立古神社に到着した。石の階段の上に社があり、神社があることがわかる。


石の階段の周りは木々があり、ここを登るしかないようだ。石段は泥などが隙間にたまっておらず、丁寧に掃除されているのがわかる。


石の階段はかなりあり、50段ぐらいあり、軽い運動になる。俺は委員長が登っていくのに後からついて行く。


そして、神社の建物の前につく。


「ほら、つきましたよ」


「お、おじゃまします?」


なんといっていいのかわからず困惑しつつも神社の中に入ろうとする。すると、委員長から言われる。


「一応土足厳禁なんで、靴は脱いでおいてください」


「あ、ああ、わかった」


俺は委員長の言うことにおとなしく従い、靴を脱ぐ。そして、そのまま神社の廊下を奥へ奥へと進む。


中は和風なつくりになっている。外側からではあまり意識したことがなかったがなかなか大きいようだ。


障子が丁寧に張られており、たまに見る部屋は和風で畳になっている。ここで、俺は気になったことを委員長に問う。


「なぁ、この神社に宮司はいないのか?さっきからここに人の気配がしないんだが」


俺は周りを見る。だが、人の気配がいない割にはきれいだ。畳もきれいだし、障子も丁寧に張られて、きっちり掃除もされている気がする。


「ああ、前まではいなかったんですよ。でも、最近人が来て掃除してくれるようになったんです」


「ふ~ん、そうなのか」


俺はそう言って進んでいく。委員長は途中で止まり、一つの大きな部屋の障子を開ける。その中には、白くてでかい蛇がいた。


その白い蛇は金色の目をしており非常に優雅だ。そして、その眼はキリリと吊り上がっているが、委員長をやさしく見ている。


「よく来たね、さくら」


「お母さん!」


白い蛇がしゃべり始めた。そして、委員長は嬉しそうに白い蛇の方を見てしゃべり始める。


「今日はどうかしたのかい、さくら?また、あいつがなにか……」


「そのことなんだけど、あの【魔獣】はもういないんだよ」


「おお、そうか。で、いったい誰が恐れを倒したんだい?」


「あの人!」


そう言って俺のことを指さす。俺抜きで会話が始まっていたから、俺の存在が忘れられたのかと思ったがちゃんと覚えていたようだ。


それにしても、先ほどまでの俺に対する態度からは考えられないような、優しい笑みを浮かべながら俺のことを指さしている。


「失礼ですが、お名前をお伺いしても?」


「ああ、はい。矢井田、矢井田新って言います」


「ふむ、矢井田様と申されるのか。この度は桜を救っていただきありがとうございます」


そう言って深々と頭を下げられる。だが、俺はそんなことをされても困るだけなので、「頭を上げてください」という。


「それにしても、桜が男を連れてくるとは……桜も成長したんだな。ところで、桜とすでにそういった関係ってことはありませんかな?」


俺に聞いてこられても……と思い大蛇の方をちらっと見ると口元が笑っているのに気が付き、からかっているだけだと気が付く。


委員長は質問のことがどういうことなのかを察したようだが、からかわれていることがわからなかったようで顔をやや赤らめながら、それを否定する。


「ち、違います。矢井田君とはそういう関係ではないですから」


「ほ~そうか」


からかうように笑いながら委員長を見る。


「ところで先ほど『男を』って言われてましたけど、女なら連れてきたことがあるんですか?」


俺は何か話題を作らねば、と思い先ほど言っていたことをやや強引にだが、聞いてみる。


「ああ、そうですね。なんでも、近くで桜に会って場所がわからなかったので案内してもらった、とかいってきましたね」


「その女生徒は今も交流関係が続いているんですか?」


「はい、そうですね。といっても1年ぐらい前からなのでそこまで昔の話というわけではございませんが……」


俺の質問に大蛇が丁寧に答えてくれる。


「その人のことは俺も知っていますか?」


「いいや、ご存じないと思うぞ。なにせ、その女性は25歳ぐらいの女性だから、接点がそもそもないと思います」


「まぁ、そうですね」


大蛇の言う通り俺はそんな人に心当たりが全くない。話題づくりのために無理やり聞いた質問だしな……


「それじゃあ、ここらへんでお暇させてもらいます。委員長と大蛇さんのおしゃべりを邪魔するのも忍びないので。それでは」


そう言って俺は立古神社の玄関の扉を開けて出ていく。






「っは、はぁ、はぁ」


矢井田が出て言った瞬間、白い大蛇は地面に倒れこむ。その顔は青ざめており冷や汗をかいている。


その尋常ならざる様子を委員長はみて気が付きそばに急いで寄り添う。そして、声をかける。


「ど、どうしたのママン。何か嫌なことでもあったの?」


委員長が自分と一緒の二人だけの時に自分を呼ぶ呼び方になったので、委員長が多少リラックスしてくれたのだと分かり、笑みを浮かべる。


「いいや、桜。ただ、緊張しただけだよ」


「緊張?矢井田に何かされたの?」


委員長は矢井田が去っていた扉の方を鋭い眼光で睨みつけながらそう言う。


「いや、それも違う。ただあの人は【龍】と何かしら深い関係があるんじゃないのかい?」


「【龍】?うん、確か【龍】の力を持っているとか言っていた気がするけど」


「なっ!?【龍】の力を直接・・持っているとそういったのかい?」


「うん?よくわからないけど、【龍】の影響で桁違いの身体能力を得ていると言ってたよ」


「桁違いの身体能力?そんなもの九つの属性の中にない……やはり、直接か!となると、この世界の序列はあの人が1位?ということに……」


「ねぇ、ママン。さっきから何の話をしているのかさっぱりわかんないんだけど、説明してくれないかな?」


委員長は大蛇がぶつぶつと自分抜きで話をしていることが、不服だったので大蛇にそうお願いする。


大蛇も多少自分の容体が回復しているということもあり、委員長に話すことに決める。


「ああ、そうだな。まぁ、基本的なことぐらいは語ってあげよう。私達、蛇は【龍】の眷属みたいなものなんだ」


「【龍】の眷属?まぁ、形も似ているし龍神とか蛇神とかどっちも神社でまつられていることもあるもんね」


大蛇が言ったことに委員長は理解を示す。だが、蛇はそれを否定する。


「いや、『似ている』じゃない。私たちが似させてもらったんだ」


「どういうこと?」


「【龍】の力はとてつもなく大きい。だから、力が弱かった我々は龍の形に似ることで疑似的な眷属になり【龍】の力を分けてもらったんだ」


そんな大蛇の意見に委員長は冷静に指摘する。


「待って。【龍】の力が強大なものだとして、そんなに力があるなら目撃情報があるはず。でも、あるのは伝承ぐらいで実物が発見されたことは一度もない。おかしくない?」


「いいや、【龍】の力は我々の予想をはるかに超えているものだった。【龍】はただ存在しているだけでこの世界を壊してしまう」


「え?」


委員長はあまりのスケールの違う話に驚愕することになる。大蛇は話を続ける。


「それ故に、【龍】はこの世界から去り新しい世界を構築した。これがいわゆる異世界とよばれるものになる」


「それなら【龍】はもうこの世界にいないってこと?なら、なんでみんな【龍】の存在を知っているの?」


「それの方法が桜がさっき言っていた伝承だ。【龍】が存在していた時の話が脈々と現代にまで受け継がれているということだ」


「スケールが違いすぎる……」


「ああ、同感だ。この世界をあの存在はたった一つで越えてしまった」


委員長は少しの間呆然とするも、大蛇に気になっていたことを聞く。


「それで、矢井田は、【龍】の力を持った矢井田の立ち位置はどうなっているの?」


「彼の、いや、あの人の立ち位置は【龍】の序列の中でも最高峰のものだ」


「その序列っていうのはなに?」


委員長はあまり耳慣れていない単語の意味を大蛇に問う。


「この世界の一部の存在は【龍】の力を少しだが持っているんだよ。私だってそのうちに入る。その中でどれだけ【龍】の力を持っているのかで序列が決まるんだよ」


「それで、矢井田君は最高峰だと?」


「ああ、そうだ。おそらく【龍】の影響を最もおおく受けている存在だろう。そして、序列が上のものの言うことは絶対だ」


「つまり、ママンは矢井田の言うことを絶対に守らないといけないってこと?」


「ああ、そうだ。向こうはそのことを知らないみたいだがな」


「それって、ママンの要素を持っている私も矢井田の言うことを聞かなければならないということ?」


委員長は少し顔色を悪くしながら、大蛇にそう尋ねる。


「いや、【龍】ではない要素を桜は持っているだろう?それに私の要素よりもほかの要素の方が多いから、聞かなくてもいいと思うぞ」


「そう、そうなの」


委員長はほっとしたように胸をなでおろす。


「まぁ、お前はいつも通りにふるまっていけばいい。私のことなど気にせずにな」


「うん、わかった。じゃあ、私はここらへんでお暇させてもらうね」


そう言って、委員長は神社を去っていく。






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