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女子との連絡先交換

「それは?」


俺は村田が出してきた動画が何かわからなかったので質問する。すると、村田はそれにこたえる。


「これは『キャルチャー』さんの最初の動画。まずはこれを見てほしい」


そう言ってその動画を再生した。動画のタイトルは「猫日和」というとても可愛らしいタイトルだ。


その動画は猫が町中を移動するさまをとらえたもので、周りに人や風景が写っているときはしっかりとモザイクをかけており、猫だけはきちんと映している。


そんな様子が1分ほど続き動画は終わる。そして、村田が俺たちに聞いてくる。


「いまの動画を見てどういう印象を受けた?」


「まぁ、普通の投稿者っていうイメージかな」


「節度を守っているしっかりとした人物っていう感じですね」


「素朴ながらしっかりとしているっていうイメージかな。今の再生回数のためになら何でもする貪欲な感じはないな」


田辺、委員長、俺の順番で自分が思ったことを言っていく。そして、村田がいう。


「そう、みんな思ったことだろうけど今と全く人物像が違うんだ」


「そうだな。だが、そういうものじゃないのか?例えば、それまで真面目な人が大量の金を手に入れて性格が変わった、っていう話とかあるわけだしな」


田辺が村田に対して、そう反論する。


「その通りだ。でも、それは大量の大金を手に入れた場合の話だ。そして、今回だと大量の再生回数とお置き換えることができる。そうだね?」


「ああ」


「この投稿者は大量の再生回数を手に入れたわけじゃない。むしろ、今それを目指している状況だ。なのに、初期と今でこんなに違うなんてあり得るのかな?」


「まぁ、実際起こっているわけだしな。それに目的のために頑張って信念がどんどん変わった可能性もあるんじゃないのか」


俺は村田の質問に対して、答える。だが、村田はそれをやさしく否定する。


「確かに。でも、この人はほぼ毎日投稿していて、この最初の動画も約1ヵ月前のことだ。一か月でここまで変わるのは少し妙じゃないかな」


村田はそう言って、俺たちは黙る。そして、少しの沈黙の後に委員長が言う。


「つまり、村田さんはこう言いたいんですね。この短期間で急激な性格の変わり方はおかしい。これは外部の仕業、つまり【魔獣】の仕業ではないのかと」


「そう、その可能性が高いと個人的には思っているんだよね」


なるほど、そう言われればそうだろうという気がしてくる。だが、ここで俺は一つの疑問が生じる。


「まて、それっておかしくないか?」


「何が?」


「もしも村田の言っていることが正しいとしたら、もしも【魔獣】の仕業だとしたらなんでわざわざその人間の性格を変えるなんて、めんどくさいことするんだ?」


「可能性はいろいろと考えられる。例えば、精神的な【魔術】をつかう【魔獣】でその人間を操っているのだとか」


「なんで操るんだ?」


「さぁ、魔獣の考えていることを理解しようなんて思っちゃだめだよ。あれとは本質的には相いれないんだから」


「でも、そんな精神的な【魔術】をつかう【魔獣】だとしたら危険じゃないのか?自分達がもうすでに操られている可能性もあるぞ」


俺は村田に尋ねる。村田はふっと笑って答える。


「ああ。だけど、いつだって危険はつきものだ。君たちがあの空間で戦ったときもかなり危険だったと思うよ」


恐らくは委員長のおっさんと戦ったことを言っているのだろう。


「それはその通りだけど……」


「つまり、【魔獣】の気配のする奴を片っ端から当たっていけばいいってことか?」


田辺が村田にそう提案する。その手案に村田は賛同する。


「ああ、それには賛成だ。だけど田辺がこの作戦に参加するのは認められない」


「なんでだよ?俺だけ仲間外れにしようってわけじゃないよな」


「もちろんだ。これは君のためを思っての提案だ」


「俺のため?」


「そう。君は【魔獣】の気配なんてわからないだろう?それにいざとなったときに戦えない」


「そういう時は俺だって逃げるさ」


「君は……【魔獣】という存在を甘く見すぎている。奴らは一般人が勝てるレベルの相手じゃない」


「だから、俺には無理だからやめておけ、と」


「そうだ。でも、君に何もするなってわけじゃない。RINEで何か動きがあったら送るから、全体の動向を把握しつつ、指示を出してほしいんだ」


「……」


要は、危険のないところか指示を出せってことだ。過保護すぎるかもしれない。だが、今回は村田に賛成だ。


誰か一人が田辺と一緒にいればいいじゃないかと思うかもしれないが、そうすると調べる人の数が減って犯人を突き止めるのが遅くなる。


そこら辺のことをわかったうえで村田は指示を出しているんだろう。さすがに、この道を数年やってきているだけのことはある。


少しの間田辺は何か考えているようなそぶりを見せる。そして、村田の言っていることにこたえる。


「……わかった。それでいい」


「ありがとう。じゃあ、話を進めていくけど……」


そう言って俺たちは話をつづけた。田辺はそのあとの話し合いにほとんど加わることはなく、終始無言状態だった。


その話し合いが終わり大体の方針が決まったところで、俺たちは委員長の家から帰る。






俺は自分の家に到着する。やれやれ、大変だった。委員長の家から帰るときに途中までは一緒だったんだが、田辺は何もしゃべらない。


そのせいで、村田と俺が二人だけで話すという二人が話して一人は黙ったままという何とも気まずい構図ができてしまった。


俺は、田辺とケンカしたことがない。というのも、口論になって喧嘩しそうになったらいつだって村田が止めてくれた。


だが、今回の件で村田は田辺がこの作戦に参加することを良しとはしないだろう。


それはもちろん、いやがらせとかではなくて田辺のことを思って、のことだ。


つまり、村田は喧嘩が起きたとしてもそれを止める気はない。


喧嘩をしてでも、田辺の安全を優先するだろう。あいつは、そういうやつだ。


そして、田辺も今回の村田がしていることに対して不満があるはずだ。


いくら頭では村田の言っていることが正しいと分かっていても自分だけ仲間外れにされたら、不満があるに決まっている。


ましてや、1年以上いた村田が自分よりも出会って1日か2日の委員長の方が信頼されているとなったら、ストレスがあるだろう。


そんな状態の村田と田辺では喧嘩が起きる可能性が高い。


ならば喧嘩が起きた時にだれが止めるのか?


……消去法で俺しかいない。委員長では付き合いが浅いから止めることは難しいだろう。


だが、先ほども言ったように俺は喧嘩をしたことがない。つまり、どうやって仲直りするのかを俺は知らない。


だが、そんな喧嘩した状態で今回の相手に挑むのは危険だ。【魔獣】はもちろん警戒すべきだが、今回の相手は特に、だ。


今回の相手が【精神魔術】の類を使う可能性がある。


もしも、そういったものを使用するのであれば、筋肉しか取り柄のない俺は操られて役に立たない可能性が高い。


そのためにも連携は必須といっても過言じゃないと思うんだが……


「はぁ、どうしたもんかな」


俺がボソッとつぶやいていると、母が「早くご飯食べなさい!洗い物があるんだから」と言ってくる。俺はそれに従いご飯を急いで食べる。


そのまま風呂に入り、風呂から出てアニメを見ようとすると俺はいくつか通知が来ていることに気が付く。それは村田からだった。


「さっきは空気が悪かったよね?不快な思いをさせたのならごめん。でも、今回の件に関しては絶対に譲らないから」


予想通りというべきか、子供っぽいすね方をするなというべきか、村田らしいことが書かれていた。


「わかってる。俺だって田辺を死なせたいわけじゃない。だが、それで仲が悪くなることが正しいと思えない」


俺は村田の言っていることに賛同しつつも自分の意見を交えながら返信する。するとすぐに既読がつき返信が返ってくる


「わかってる」


最終的には和解してもらわないと困る。出来る事なら今回の相手と戦う前には、な。そんなことを思いながら、アニメを見て少し勉強しそのまま寝る。






翌日になって、学校に行く。少し憂鬱な足取りだ。やれやれ、これから今までと同じように接しつつも多少気を使わなければならない。


そう考えると、俺の心境がどのようなものなのかは容易に想像がつくだろう。おっと、そんなことを言っていたら田辺がいるのを俺は見かける。


登校中に田辺と会うのはさほど珍しいことではない。通学路が俺と田辺は一部近いところもあるのでよく合う。


このまま田辺がおれたちから離れて孤立して、勝手に行動をとって襲われる。これが現状考えうる最悪のパターンだ。


今回の相手は下手に刺激しなければ襲ってこないだろう。実際、俺たちの周りで誰かが行方不明や死亡した、なんて聞かないからな。


だからこそ、今回の相手は動くときには動くだろう。俺たちもそれに備えて誰一人かけることなく万全を期して挑むべきだ。


「よう、田辺。お前、またゲームでもしていたんじゃないのか?」


「ああ、いや、これがマジで面白いんだよ。今はまだ下火だけど次に来るゲーム覇権はたぶんこいつだな」


俺かけた言葉に対する田辺の返答はいつも通りのものだった。どうやら、俺が思っていたよりも田辺は思い詰めているわけではないようだ。


俺はほっと一息つく。高校生にもなるんだし、いつまでも子供じゃない。ある程度は周りをみえるようにもなってくるか……


「また、ゲームのやりすぎで寝坊して学校に来るのが遅れました、とかなるなよ?高校は普通に留年とかもするんだから……」


「わーってる。俺がそんなへまするかよ。自分の限界ラインぐらいわかるわ。そういうお前こそどうなんだよ?」


「どう、とは?」


「また、アニメの見過ぎでアニメ中毒になるんじゃないのかって俺は言いたいんだよ」


「大丈夫だって。長期休暇になったらそうなるかもしれないけど、直近の長期休暇はGWだからな。まだ、一か月も先だ」


「お前、GWが終わったあとにはすぐに中間考査があるだろ?そんなんじゃ勉強もろくにできないだろ?高校なめてんのはお前の方だ」


「大丈夫だろ。直前に積み込めば普通になんとかなるって」


俺たちがそんなことを話しているうちに、学校につく。俺達はそこで教室に入り自分たちの席に着く。


すると、委員長がおずおずと近づいてくる。そして、話しかけてくる。


「あ、あの矢井田さん、田辺さんっ!!」


「「ん?なに?」」


俺たちはきれいにハモりながら委員長の方を見る。


「私も携帯持ちましたから、RINEを私と交換してくれませんか?」


「あれ、もう持ったの?」


「はい」


「辻井さん、つまり委員長のお父さんはしばらくこっちこれないって言ってなかったっけ?もしそうなら、スマホの契約できないと思うんだけど……」


「ええ、そうです。でも、お父さんが携帯を持ってないままだと、周りと話も合わないだろうからって私に輸送で契約したスマホを送ってくれたんです」


今の時代に高校生でスマホを持っていないとなれば、周りと話が合わないのはその通りだ。父親として娘のことをきちんと配慮してくれているんだな。


俺はそう思いつつ委員長とRINE交換をする。そして、アニメを見ようとすると、村田からRINEの通知が来ていることに気が付く。


俺は何か『キャルチャー』に動きがあったのか?と思いつつ内容を見る。


「『キャルチャー』が投稿していたこの最新の動画見た?」


そう言って下には動画のリンクが張られていた。そういえば、毎日更新だったなと思いつつ見ていなかったのでそれを開く。


『共学の男子タイプ』という題名で、俺たちのクラスの男子たちが、分けられたタイプごとに映されているというものだった。


『王子様タイプ』と書かれたテロップが表示され、その後に今日取られたであろう村田の動画が映し出される。


『チュッ』というキスを画面に向かって片目をつぶりながらしている。これはコメント欄が歓喜に満ちるだろうな。


今度は『クールタイプ』と表示され、眼鏡をかけた男子が出てくる。それはいつも村田達と一緒にいる男子生徒だ。


そう言ってどんどん表示されていく。『子犬系男子』、『運動系男子』、『不良系男子』、『天才系男子』、『最強系男子』などなど……


ちなみに俺は『陰気系男子』として紹介されている。俺と田辺が昨日教室の隅で話しているところを動画でとられていたようだ。


そうして、合計10個ぐらい紹介されて動画は終了する。俺が見終わったところで村田が追加で俺に送ってくる。


「気が付いた、この動画の共通点に?」


俺は自分が見て思ったことを送る。


「ああ。俺たちのクラスの生徒が大半を占めている」


ここから、犯人がこのクラスの中にいるとと断定するのは軽率だ。別のクラスの人間が俺たちを撮影した可能性もあるわけだからな。


だが、まだ高校生活が始まって数日しかたっていない。別のクラスにわざわざいって、このような動画を勝手に撮っていたら誰か一人ぐらい気づけそうなものだ。


なので、断定はしきれないがこのクラスの中に犯人がいる確率が高くなった、と考えられるだろう。


俺がそんなことを考えていると村田から有力な情報が送られる。


「実はこの動画にある俺の動画は昨日撮ったものなんだ」


「なんで、そんなことがわかるんだ?」


「カメラに視線が合っていただろう?あれは盗撮の類ではなくて昨日俺が動画をとってもいいと何人かと約束してとったものなんだ。『HUTERE』に投稿されるとは思わなかったけど……」


「じゃあ、『キャルチャー』の正体がわかるってことか?」


「いや、あの場で俺にカメラを向けていたのは3人いたんだ。だから、あの場の3人だと思う」


「名前を言ってくれ」


「名前は、それぞれ木下花音きのしたかのんさん、小町楓こまちかえでさん、神室紗耶香かむろさやかさん、以上3人だ」


「どれも、お前と一緒にいる陽キャ集団じゃん」


「僕と一緒にいることが多いことは否定しないけど、全員が全員陽キャとは限らないよ」


「わかったよ。だが、これで一気に犯人候補の数が絞られたな」


「ああ。ここからはこの3人を俺達全員で見て行けば、どこかでしっぽは出すと思うよ」


「そうだな。委員長や田辺にはこの情報を共有しているのか?」


「いいや、まだだ。だから、君の方から伝えておいてくれないかな?」


「わかった」


そう言って俺は田辺と委員長にこのことを伝えておく。そして、俺はそのあとの授業を真面目にいつも通り受ける。


そして、そのまま学校が終わり家に帰っているときに前に委員長がいることに気が付く。


委員長の家は俺の家と真逆の方向にあるはずなのに、妙だなと思い俺は委員長の近くまで行き、肩を手でたたく。


すると委員長が振り返って俺の方を見る


「あ、矢井田さん、どうかしましたか?」


そして、俺は何でこっちの方角に行っているのかを委員長に聞く。


「ねぇ、なんで別の方角に行っているの?」




始めて評価してくださりありがとうございます。反応があったので自分の書いている文章に自信を持つ事ができました!

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