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12話 霧

12話 霧


「一回戦第三試合ここで決着となります!」会場には細身の男の声が響き渡る。


細身の男と共に決着の合図がなると会場からはたちまち観客達の非難の声が上がった。

「おいどうなってんだっ何も見えねぇぞ!」

「何なのよコレェ!」

会場には混乱する観客で溢れかえっている。


しかしそれもその筈だ。

目前にある闘技場内は不思議な霧に包まれ、観客達の視界が極端に悪かった。観客達の大部分は試合の決着が付いたとて目前で起きた事態の把握が出来ずにいた。


「それはそれは申し訳ございません。」

「アルセ坊ちゃん。」

「能力を解除してもらえますか?」

アルセが頷くと闘技場内を覆っていた霧がが晴れていった。


視界が開け、闘技場を見た観客は唖然とする。

そこにはアルセ一人を残し、対戦相手の「グラレムル」のメンバー五人が意識を失っている。

「あれがユーベン家の一人息子か...」

「五人を...それも一瞬で」

事態の把握の出来ずにいる観客だったがそのアルセ・ユーベンの強さに唖然とする。


しかし中にはアルセの強さを理解した者達もいた。

その一人は琥珀色の目を光らせ、アルセに睨みをつけている。

「今の見た?」

「やばいそうなのがいるね。」

「リーダーアイツに何が起きたの?」

「それは...」


アルセ・ユーベンの一連の動きはこうだ。

奴は試合開始の合図と共に均衡「***」を発動。例の霧を闘技場内に発生させ、視界が閉ざされた「グラレムル」はアルセの進行を阻害する事ができなかった。これによってアルセは至近距離に至るまで相手との距離を詰め、初めは前衛に立つ防御系の能力者「タンカー」の意識を体術で意識を刈り取る。


アレはおそらくユーベン家が伝承している「無心流」の何かだろう。


アルセはタンカーの意識を奪うと、次は動きを見せるサポート職の「ノーマン」と万能職の「メレオン」にへと接近する。


しかしそこで可笑しなことが起こった。

それは霧の中にいるアルセ・ユーベンが二人に見えたことだ。霧の中にいる二人目のアルセ・ユーベンは蜃気楼なのかはたまた実態のある何か定かでは無いが、それは「グラレムル」へと襲いかかった。

その不意な出来事に「グラレムル」のノーマンとメレオンは敢えなくダウンしてしまう。

その後は残されたハスラーとキーマンだったが、彼らはなす術なく、霧の中でアルセとアルセの形をした何かによって引き倒された。

「こんなところだね」

「や、厄介そうだね...」

「でも問題ないよ。」

「本当に?!」

「流石リーダー!」

「それより目先の敵を見ないとだね。」

「まず私達が気にするべきなのは次の対戦相手のハーメイルだね。重要な均衡の情報がまるで出ていなしね。」

「今分かってるのは赤毛の女の子とタッパのある男の子の均衡だけだからね。」

「一回戦目は赤毛の女の子一人でほぼ片付けちゃったから仕方ないけど、男の子の均衡が知れたのがデカいね。」

「タッパのでかい男の子はスタンダードなタンカーって感じの均衡みたいだからそれから推測すると他の三人は何か癖のある能力な気がするんだよね。」

「それってリーダーの勘?」

「うん」

「リーダー楽しそうだね。」

「え?」

「ずっと笑ってるよ。」

そこで私は釣り上がった自分の表情に気づいた。

「そうだね...私は戦線に行くべき人間だからね。」

「???」

その言葉には仲間までもが首を傾げた。


「では皆さま、次の試合までしばらくの休憩を挟みますのでお食事など村にある屋台にて六方祭りをお楽しみ下さい!」

「あっ!」

「お食事でしたらこの葉牛肉(モーリーカウ)などはいかがでしょうか?この臭みのない肉汁溢れる葉牛肉はこの地域では絶品の料理と名高く、さらにこの料理は滋養強壮にもよく...」


そんな宣伝番組のようになりつつある会場を他所に控え室にいるハーメイルは呻き声を上げるエルナードを看病していた。

「ぐぉぉぉぉぁぉぉぁぉぁぉぉぉぉぉぁぉぉぉぉ」

獣のように呻き声を上げるエルナードは真っ青な顔で地面にへたり込んでいた。

「お腹が痛いーーーーーーーーーーーーーー!!」

「お前バカだろ!」

エルナードは食い意地を張り過ぎたのか、腹を下していた。

「助け、てヴィタァァァ」

「え」

エルナードはヴィタの足を掴むとヴィタの体を伝い、ズルズルとよじ登る。

「うぉぉ!こっちに来るなぁー」

エルナードを突き飛ばすヴィタだったが、エルナードの様を見て足を止めた。

「おいなんだその構えは!まさか!!」

エルナードは青い顔をし、足を八の字に開くと"アレ"が出ないように必死に踏ん張っていた。

「どうすんだよコレ!!」

「と、とと、とにかくエルくんはトイレ行ってきなよ。」

リエナもまたエルの様を見て慌てふためく。

「ごめんもう無理ィィっ!」

「やめろ!ここで漏らすな!」

「エ、エルくん落ち着いてっ!」

「大丈夫だから落ち着いて!」

「ごめんまじで無理っっっ!!!」

「まてまてお前ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!」


ブリッ

気色の悪い音が鳴った。

「ぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

控え室ではアレが排出される音と共に皆の悲鳴の声が鳴った。

「あはは〜さいあくだ〜〜〜〜」

そんな時、控え室の扉を誰かが叩いた。

「「「「「えっ」」」」

ヴィタ、エンナ、リエナ、テネの四人が息を揃えて言葉を漏らす。

(まずい誰かが来た!)

(エルナードの!!)

(アレが!!)

(見られちゃうよ〜!!)


ピンチに追い詰められると時間がゆっくりと流れるというが、その瞬間は確実にゆっくりと時間が過ぎていた。


控え室の扉がゆっくりと音を立て、扉が開いた。


「なにこれ、」

そこで控え室に入ってきたのは小さな猫みたいな女の子だった。そこで彼女が目にしたのは地べたにへたりこみ、顔を真っ青にしているハーメイルの皆んなの姿だった。

「誰...?」

ヴィタがそう言い放つと女の子は怪訝な感じで言い返した。

「アンタ私の事知らないの?」

(アレ?!知り合いだったか?)

(おいっ!リエナ!誰だよこの子!)

(し、知らないわよ!)

(皆落ち着いて!今はそんな事よりも彼女を何とかしてを此処から追い出さないとエルのアレが見られちゃうわよ!)

(確かに〜)

(よく聞いて!)

(エルのアレが彼女に見られるようなの事になればきっとこれから...)


道ゆく人たちに...

「おいおい!見ろよアイツら大会で脱糞したハーメイルじゃねぇか?」

「おッ!ほんとだ脱糞だ!」

「脱糞よ」

「脱糞だ」

「脱糞チームだ」

きっとこれから白い目で見られるに違いないわ!

((((それはまずい!))))

これは世間から見ればささやかな事かもしれないがまだ幼い彼らにとってそれはとても屈辱的なことだなんとも阻止しなければ行けない。

「私は次の対戦相手loyal catのリーダーキャットよ。」

「その小さい脳みそに刻んどきなさい。」

「次の対戦相手か、」

「まあいいわ」

「アンタ達はあのムカつく武人道の奴らボコボコにしてくれたしね。」

「そうか、それは良かった。」

「で、それはそうとアンタ達ここでなにがあったn」

キャットがそう問いかけるとあからさまにヴィタは目を逸らした。

「???」

キャット首を傾げる。

(ヴィタあんた目逸らしてないで何か言いなさいよ!!)

(わかったよ!!)

「そ、それは言えないな。」

ヴィタは白々しく明後日方角を見ながら言い放った。

「どうしてよ。」

「どうしてって僕たちはまた敵同士だろ?そんな仲良しこよしは終わってからだ。」

「ふーん」

彼女は今の発言が癪に触ったのかその顔には苛立ちが見えた。しかし畳み掛けるようにエンナとテネが追い打ちをかけてしまう。

「悪いんだけどあなた私達から離れたほうがいいわよ(臭いから)」

「そ〜だよ〜この部屋から出たほうがいいよ〜痛い目を見る前に(臭いから)」

エルナードの近くにいるからわかる徐々に控え室には充満し始めるエルナードのう⚪︎この匂い。

 

そんなみんなの思いとは裏腹にハーメイルの皆から投げかけられた言葉をキャットは自身を牽制しているように受け取った。

「アンタらいい覚悟してるね。」

キャットはバキバキと手の骨を鳴らし、戦闘体制に はいる。

(え?何か怒ってないかこの子)

「君なにをそんなに怒って...」

そんな時エルナードが立ち上がった。

「えっお前、大丈夫かよ」

エルナードはヴィタの言葉を無視し、歩みを始める。そしてエルナードはキャットの前で立ち止まった。

「なによ」

若年層の部のフィアレントでは一際身長の高いエルナードと対面し、キャットには緊張が走る。

「やるわけ?」

「退いてくれ、」

どこか此処にあらずのエルナードは遠い何かを見つめている。

「嫌よ。」

「退かなかったら...」

「退かなかったら何よ」

「トイレに行けないです。」

「え?」

「そうなのね。」

「早く言いなさいよ。」

「ここで漏らされたら溜まったもんじゃないからね。」

((((いや、もうその人漏らしてます。))))

キャットはドアの前を譲り、エルナードは控え室を後にした。

「アンタ達一体何なのよ...」

「まぁいいわ。」

「此処で問題起こしても私たちにいい事なんてないしね。」

「次の試合覚悟しなさいよ。」

調子の狂わされたのかキャットは怒りが冷め、控え室を後にした。

「何なのよアイツら人の善意を...」

「あっ!キャットっ!ここにいたんだ!」

「ちょっと!キャットじゃなくてリーダーって言ってよ!」

「ごめんごめん!」

「それでどこに行ってたの?」

「どこって...」

「なんか臭い部屋よ。」

「ん?臭い部屋?」

キャットと合流したloyal catのメンバーは首を傾げた。


「エル、それで調子はどうだ?」

「本当に気持ち悪い...吐きそう。」

「マジかよ、」

「もう試合始まるぞ、、」

そんな時、会場からは細身の男の声が聞こえた。

「では準決勝ハーメイル対loyal catの試合を始めたいと思います。」

ハーメイルのみんなの顔は次第に青くなる。

「皆さん大きな拍手でお迎えください。」

すると控え室には次第に観客の拍手が聞こえてきた。

「じゃあ...いく?」

「行くしかないよエンナ」

「まぁ私達が頑張ればいけるよね?ヴィタ?

「分からん」

「グスッ皆んなごめんね...」

エルナードはパンツだけでなく上の方まで濡らしている。

「分かったから泣くなよ。」

「取り敢えず早くお前はズボンを変えてこい。」

「うん。」


そうして僕らは準決勝の舞台へと足を踏み入れた。



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登場人物

ヴィタ・エネディクト...小柄な黒髪の少年。

均衡名[結晶化]

エンナ・イーファ...赤髪の少女。

均衡名[点呼]

テネ・ウィザード...子紫色の髪の少女。

均衡名[寝ン無]

エルナード・グランド...大柄な少年で青柳色の髪の少年。

均衡名[光盾]

リエナ・バック...翡翠色の髪の少女。

均衡名[八岐大蛇]

アルセ・ユーベン...白髪の少年。

均衡名[ ]


冒険者

灰色の髪色をした中年男性。

鋼鉄の鎧で身を纏い、剣を巧みに操る。コロシアムの元王者。

均衡名[強器]


ギルナ・コバルナ

桃色の髪の毛の若い女性。

聖職者で作中に出てくる神を信仰している。

均衡名[緑化]


謎の少女

ヴィタの夢に出てきた少女。

[ ]


ケイツ・エネディクト

均衡名[水壁]

ヴィタの父親で村の地主ユーベン家と深く関わりのある人物。


アルフレッド・ユーベン

均衡名[ ]

アルセの父親で村の地主、厳格な人柄で知られているが彼には変な収集癖があり、ユーベン家で働く人間のほとんどは何処かしらからヘッドハンティングされた人で構成されている。

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