オセロで角を取った時にチェックメイトって言う弟がカワイイ
俺には年の離れた弟がいるのだが、これがかわいいのだ。
オセロをして遊んでいると角を取るたびに「チェックメイト」っていってドヤ顔をする。
いやいや、まだ勝負は終わってないから。
言葉の意味を説明しても「チェックメイト」って言うのをやめない。
その後逆転されると「チェックメイトっていったもん!」って言いながら号泣する。
かわいい。
俺も大人げないなーと思いながらも、ついつい本気で相手をしてしまうのだ。
まぁ……オセロだしな。
中学になった弟は、意外にもプログラミングの勉強を始めた。
なんでもアプリを制作しているのだとか。
「チェックメイトの要素は入れるのか?」
そう言ってからかってやると、マジ切れするところがかわいい。
天使か?
さらに時は流れ、俺は独身サラリーマン生活を楽しみつつ、ちょくちょく実家に足を運んでは弟の様子を見に行った。
受験勉強にはげむかたわら、ゲーム作りも続けているという。
完成したらテストプレイさせてくれと言うと「チェックメイト」ってからかわなければいいよと、マジ顔で言う。
本当にかわいいなコイツ。
やがて、弟は大学生になり、卒業後にゲーム会社に就職。
彼女もできて順風満帆な生活を送っているとか。
よかったな。
「なぁ……兄貴。
もうすぐゲームが完成するんだよ。
それまでもう少し、頑張ってくれよな」
病床に伏す俺の傍らで、弟はポロポロと涙を流しながら言う。
お前が作ったゲームで遊ぶまでは死ねないぞ。
「兄貴、俺さ……結婚するんだ」
そうか、良かったな。
プロポーズの決め言葉はやっぱりチェックメイトだったのか? と尋ねると「そんなはずないだろ」と苦笑いする弟。
やっぱりかわいいやつだなって思った。
それから数か月後。
弟が制作に携わったゲームが発売された。
ミリオンヒットとまではいかないものの、業界での評判もそこそこだと言う。
そのゲームには主人公がチェックメイトと叫ぶシーンがある。
序盤の中ボスを倒す時のことなのだが、なんとこのボスに俺の声が使われているのだ。
「ようやく兄貴にチェックメイトできたよ。
いままでありがとう……ほんとに」
奥さんと共に墓石の前で頭を下げる弟。
黒いネクタイがびしっと決まっている。
カッコいい。
もう遊んでやれないけど、奥さんのお腹の中にいるお前の子供が新しい遊び相手になるだろうよ。
俺みたいに意地悪しないで適度に負けてやるんだぞ。