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ながら呼吸

作者: 傀儡納言

拝啓 スマホ人間様

スマホをいじりながら、生きている。

もはやそう思えてくるほどに、私の生活はスマホに浸食されている。


朝はスマホのアラームで目覚め、止めたついでに、とりあえずSNSアプリを一通り開いてみる。

ネットニュースを漁りながら朝食をとり、知らなくてもいいどうでもいい情報に侵されながら職場に向かう。


日中は動画配信サイトを開いて、好きなクリエイターの動画を流し見しながら、だらだらと雑務をこなす。

仕事仲間と向かい合って喋りながら昼食をとっている、ように見えて、お互いの手元のスマホでは各々が別々の人間と会話をしている。

私と仕事仲間は、胡乱(うろん)な亜空間に隔たれている。私が見ている亜空間の片端(かたはし)は、黒い絶望の片鱗である。亜空間の対岸に立つ仕事仲間には、一体何が見えているのだろうか。

私と仕事仲間。

私と私のスマホ。

仕事仲間と仕事仲間のスマホ。

私と仕事仲間のスマホ。

仕事仲間と私のスマホ。

私のスマホと仕事仲間のスマホ。

私と私のスマホと仕事仲間と仕事仲間のスマホ。

スマホのスマホとスマホのスマホ。

スマホのスマホのスマホとスマホのスマホのスマホ。

スマホのスマホのスマホのスマホとスマホのスマホのスマホのスマホ。


()び付いた歯車を無理やり回しながら、本当に必要なのかどうかも分からない雑務を完遂させる。

スマホを眺めながら仕事仲間と挨拶を交わし、知らなくてもいいどうでもいい情報に侵されながら巣に帰る。


日は落ちて、空は暗くなったというのに、スマホの電源は落ちることなく、液晶画面は明るいまま。

稼いだ金を払って、不健康を買う。

買った不健康を(むさぼ)って、明日を生きる。


生き延びている間、それを繰り返す。

死ぬまでずっと、それを繰り返す。


私をいじりながら、生きている。

もはやそう思えてくるほどに、スマホの生活は私に浸食されている。

一緒にカラオケに行った時ぐらいは、一緒に盛り上がってほしいなぁ。


敬具

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