ボス部屋
お久しぶりです。
彼らは今、ボスへと続く扉の前にいる。ボス部屋の前は比較的に安全なことが多く、冒険者はみなここで一休みして向かうのが普通である。彼らも例に漏れずいまボス部屋の前で円を組むように座りながら休んでいる。
「さて、まぁまぁ休憩取ったけど。どうだ?」
「私達は全く問題ないわ?」
「…………」
拓、阿久斗、唯は、準備万端である。ボスと言っても5階層。拓と唯は、ここのダンジョンではないが経験済みだし、阿久斗に至っては、「安全なところで見てるよ」なんて言っている。しかし、今回の傍観者は阿久斗だけではない。拓と唯もである。そして、唯一戦うものは、先程もだんまりを決めていた愁哉。ただ一人。
彼はここに来るまで1匹も倒していない。そんな彼の準備が出来るのを皆が待っている状態である。
「まぁいくらでも時間かけろよ。俺らはさっき行った通りお前に協力はするからよ。」
拓がそう言ってから何分だっただろうか。皆が喋らずただ、じっとしてる時間が彼の言葉により、終わりをつげる。
「良し。行こう。」
「おう。」
「頑張んなさい」
「頑張って!!」
皆が応援してくれる中、更に彼はー
「んで、一つお願いがあってさ、、、」
少し緊張を含んだ彼の言葉にみんなが、視線で相槌を打つ。
「何もしないでほしいんだ。」
「んだよ、そんなこと?あたりま…」
「何があっても。例え死にそうになっても」
彼の言葉に、全員が息を呑む。
「俺はなもともと嫌々で、この学校に入学した。入りたいやつがいたら間違いなく罵倒されるだろうがな。」
みんなを、聞く姿勢に強制的にした愁哉は更に言葉を続ける。
「入試テストも全て何もしてない。でも入学した。いやさせられた。たぶん俺の師匠が裏で何かやったんだろう。まぁでも、それでもやる気は出なかった。だからやろうともしなかった。変わろうともしなかった。
だが、今はそれは過去形だ。変わりたいんだ。さっきも言ったが、この調子で何回も潜ってみんなに背中を押されながら冒険しても、俺は間違いなくこの先も握れない。だから、、、これを最初で最後にしたいんだ。これで握れなかったら俺はみんなのもとへ行こうと思うだから、例え何が起きても何もしないで欲しいんだ。」
彼はこのまま背中を押され続けても変われないと確信していた。背中は押してくれた。ここまで変われた。壁の前まで来れた。だから、ここからは自分の戦い。自分がその手で壊さない限り、永遠に同じことの繰り返し。そう決めた彼はここで握れなかったら、みんなのもとへ、家族のもとへ、行く事にした。
「いい顔すんじゃねーか」
「はいはい。わかったわよ」
「そもそも僕はもともと何も出来ないからね」
そんな彼を否定するものは誰一人いなかった。そんな反応に少しは止められるかと思った愁哉は、少し驚きが顔に出てしまう。それを見逃さかなかった阿久斗がー
「止められると思ったでしょ?止めないよ?何でかは少し恥ずかしいから言いたくないかな。くさーい言葉はもう一杯言っちゃったもんね。僕も拓も。」
阿久斗達が止めなかった理由はたった1つである。
彼が変われると信じてるからー
だから誰一人止めない。そんな彼らの思いを何となわかってしまった愁哉は、「じゃあ、行こうか」と、この空気を流すために出発の催促をし、みんなが首を縦に振り、立ち上がる。
ー彼の最初で最後の挑戦が始まる
言いたいことも言えないこんな世の中じゃ♪
少しリアルでトラブルがあり投稿遅れました。
読んでいただきありがとうございました。