冒険前
今、彼らはダンジョンの前にいる。ここは学校の転送装置から行けるダンジョンの1つである。
学校から行くダンジョンは全て学校の転送装置を通らなければならないのだが、そのときに必要なのが許可証である。
許可証は、パーティーを組むときにリーダーが先生に人数と名前を書き、申請し、それを先生が許可したら発行されるもので、これがないと転送装置の前の受付で引き留められてしまう。
今回、愁哉達のチームは拓がリーダーになり申請した。
「割とあっさりと通ったのよ!」と拓が言う様に意外に許可が降りなかったりする。これに必要なのは今までの成績と授業態度が加味される為、皆、授業は真面目に受けるし、テストも必死だ。しかし今回は時期が早いこともあり、成績判断が入学式と、クラス決めの時しかない為更に難しかったが、Aクラス2人居るし、この2人は、否、3人はダンジョン経験者の為、許可が降りた。
「まさか僕以外みんな入ったことあるとはねー。置いてかれた気分だよ」
「気分っていうか置いてかれてんだろ?実際」
阿久斗が、少ししょぼくれ気味で言った言葉に拓が馬鹿にした笑いを込めた言葉で返した。
そんな二人を見ていた愁哉に唯が近寄り話かけてきた。
「来る事にしたのね?」
「ん?ああ。」
今も緊張で上の空になりつつある愁哉は流す感じで返す。
が、、、唯はそれでも話を続けてくる。
「あんたの事を話す阿久斗がすごい本気でね。私はほんとは、あんたなんてなんとも思ってなかったわ。でもあんたも私達と同じなんでしょうね
だったら、、、だったらなんとかしてあげたいじゃない。阿久斗に感謝しなさいよ!」
悲しそうな、薄笑いをし、阿久斗と拓を見ながら話した唯は最後に愁哉の背中を割と強めに叩き、喝を入れ、はしゃぐ2人に混ざっていった。
(いってー。力つえーわ。だけど、そうだな。あいつと会わなかったらこんな機会ほんとに無かった。だから最初で、最後の挑戦。これで出来なかったらー)
「じゃあ、そろそろ行こうか!準備できた?」
彼が考え事をしていると、阿久斗達が寄ってきて彼に告げた。
「ああ」
「そんなほっそい剣でいいのか?」
愁哉が腰から下げるのは、学校の支給品の中にあった剣で、刃渡りは非常に狭く、鞘に入ってる。ーいわゆる日本刀だがこっちの世界では名前は刀と言われてる。そんなあまり見ない剣をみて、拓が質問した。
「ああ、これが俺の顕魂に1番近かったからね。てかほぼ一緒だ。流石学校だよ。」
「じゃあちゃっちゃと今晩の飯代でも稼ぎに行きますか。一様ギルドで依頼受けてきたからよ。」
ギルドには依頼が張り出される。
国から出るものもあれば、村や一個人が出す依頼と、様々な依頼があるが、大きくランクで別れている。
ギルドのランクはA〜D、Sまである。また、S級のみS1、S2が存在し、S1はギルドが出す最上級の依頼。特急任務。S2が国からのみの発行になる、緊急任務。今までで発令されたのは、神魔が出た4回だけ。学校ではCまでしか受けることができない。Cランクは、基本ほとんどの冒険者がなれるレベルである。が、Bランクからは少しレベルが上がる。一流と言われるのはBランクからであり、CからBに為るのはかなり大変だ。その年のギルド長が決めた、ギルド任務を受け、それをこなして自分の強さを証明しなくてはならない。ちなみに去年はあるダンジョンの25階層のボスの討伐だったそうだが、かなり難しく多くの冒険車が亡くなった。
ーそう。冒険は死ぬことだってあるのである。失敗はほとんど死に直結する。
今回彼らが受けるのは【ゴブリンの革の調達】Eランクである。
「忘れ物はないよね?」
「冒険する心ちゃんと持ってきたかー?」
「そんなん持ってないやついるわけ無いでしょ。」
心配症の阿久斗がもう何度目かになる質問をし、それを皆にむしされ、拓の冗談を唯が、流す。そして、愁哉は深呼吸をする。
ーそして、
彼は心で決める。この挑戦が最後だと。しかし彼は気づいていない。諦めきった心が今はもう一度立ち上がろうとしてる事を。入学時の彼とは考え方が全く違うものになってることを。
そんな心に答えてくれるものが自分の心に眠る事をー
読んで頂きありがとうございました。