8 稲葉晴信はメールを受け取る
戦慄のスポーツニュースが終わると、それを待っていたかのようなタイミングで匠人からのメール受信を携帯電話が告げた。
取り急ぎ電話機を開き、メールフォームを開く。そこには、スポーツニュースで推理した通りのことが書かれてあった。
『先輩、スポーツニュース見たろ? 要するに崖布さんの言ってた通りっすよ』
やはりぶつけそうになっているらしい。
『本柳さんにくらわした次の月の18日から18日が来る度に6、7、8回辺りにぶつけそうになっちゃうんすよ』
《!》
これは盲点だった。確かに俺がぶつけられそうになったのも、18日だったかもしれない。そして、18日は本柳が死んだ日なのだ。
『昨日は28日だったから大丈夫だと思ってたのに……』
0時を過ぎたため、あの事件はもう昨日の出来事である。しかし……、18と28。語尾が8ならそれでいいということなのか。
いったい俺達の元でなにが起こっているのだろうか。
『それと、マジ気味悪いんすけと、なんか変なメールが来るようになったんすよ。雨とあとこれなんて読むんだろ? 甘いの真ん中の横線が無いやつ。なんかそいつからいきなりメルアドも教えてないのに。訳解んないよ。恐えよ先輩』
《!》
これもか。この雨廿からのメールまで共通してるのか。このままではまずい。いずれどちらかが死ぬことになるかもしれない。これはどう見ても、本柳と無関係とは思えないのだ。
『俺もうどうすりゃいいのか解んねえよ……』
それは俺が聞きたいぐらいだ。どう考えてもお祓いが必要だろう。
間違い無く本柳が絡んでいる。だが、奴の何が絡んでいるのかよく判らない。本柳本人が絡んでいるのか、本柳の顔見知りが絡んでいるのか。どちらなのかによって採るべき対処法が全く変わってくるのだ。
おそらくは本人だ。事件当夜の匠人の対応のしかたや、エアコン炎上事件を踏まえると、どうしてもこの結論に行き着いてしまう。
もうシーズンが始まってしまった。どのタイミングでお祓いに行こうか迷い所である。毎週月曜はほぼ休み。そして、運が良ければ、もう一日ほど、移動日という名の休みがある。本来なら練習に使いたい時間だが、こうなってしまってはしかたがない。一人で行くべきなのか、匠人を伴って行くべきなのか。
いまひとつ判断に迷うところではあるが、取り敢えずは誘ってみることにしよう。
『ショート、俺んとこにも来てんだよ、雨と甘いの線無いやつ。でさ、本柳殺った日エアコン燃えたりしたろ。多分俺ら祟られたんじゃねえかと思うんだよ。
だからさ、一回俺らでお祓いして来ようぜ。な?』
さて、この返事はいったいどうなるのか。とはいえ、普通なら否が応にも行くことになるとは思うが。
ここで問題になるのは本柳だ。果たしてあっさり行かせてくれるだろうか。自分の存亡がかかっているのだ。言わば生命の危機である。どうにかして監視をかい潜らなければならない。明日、匠人と共に計画を詰めることにしよう。