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16 【雨廿】と【本柳】が結び付く

 病院から退院し、リハビリ生活中にチームの連中が見舞に来てくれた。もうめどが立ち、一週間後に復帰できるという状況下での連中の襲来に、

《おめーらただ騒ぎに来ただけだろ……》

 という感がどうしても拭えない。まあ、あれからずっとビジター(野球ではアウェーのことをビジターという)戦ばかりで、ようやっと今週からホームに戻ってきたという事情があったのだということは、解っているつもりなのだが。









「しゅぇんぷぁーい、とっぱやりましょーよぉ、とっぱ! ガハハハハハハハ!」

 とっぱとは花札のことである。すっかり酔っ払ってしまった黒金以下数名の後輩達が俺に花札を勧めてきたのだ。ちなみにこの【とっぱ】というのが、ゲームの名称なのか、北海道弁の花札なのかは俺には解らない。

 まだ返事もしていないのに、俺の分まで勝手に配り始めてしまった。

「俺右手使えねえんだからカード持てねえって!」

 雨廿について考えていたい俺は、なにかと理由を付けて断ろうと試みるが、

「らりいっれんふか、りはばりっしゅよ、りーはーびーり! ガハハハハハハハ!」

 と、一向に聞いてくれる気配が無い。もう少し怪我人を労ってほしいものである。

 かくして俺も、とっぱに混じることになってしまったのである。

 配られ終わった手札を見て俺は愕然とする。どうにもこうにもイカサマとしか思えないような手札だった。一点も無いのだ。ものの見事に一点も無いのである。

「だーっ、おめーらイカサマしてんじゃねーぞ! なんなんだよこのカスばっかの手札は!」

「それはごしゅーしょーしゃまれふ。ガハハハハハハハ!」

 黒金が大仰に手を合わせて頭を下げた後、例によって腹を抱えて笑い転げた。つくづく思う。

《黒金ってマジ酒癖悪いなぁ……》

 と。

 結局イカサマだと主張する俺の意見は却下され、配り直し無しで続行ということになってしまったようだ。雨、桜、梅、菖蒲、盆図とほとんどの絵柄の零点札が揃った手札を憎々し気に睨み付けているうち、あることに気が付いた。

「……、雨の……、札に描かれてある木って……、シダレヤナギ……、か?」

「しょーれふゆぉー、ガハハハハハ!」

 爆笑モードに突入している黒金の言うことなど、少しもあてにならない。

「おーい、誰かぁ! 花札の雨の札に描いてある木って何だか解るやついるかぁ!?」

 大声を張り上げ、座に加わっていなかった連中にも聞いてみる。

「あれはシダレヤナギだぞー!」

 という声が元康から返ってきた。どうやら間違い無いようだ。初めて【雨廿】と【本柳】が絡んだ瞬間だった。

 雨が花札の雨に描かれている枝垂柳を指すのであれば、廿はおそらく二十点札を指しているのだろう。あれはどういう札だったか……。

「誰か雨の二十点、持ってるやついるか?」

 とにかく一度、直に見てみたい。そうすることによっておそらく雨廿がなにを目論んであのメールを出しているのかはっきりするのだ。

「にゃにいっへんれふか! ほんにゃほんみへへふわへにゃいらにゃいれふか! ガハ、ガハ、ガハハハハハハハ!」

 どうやら黒金が持っているらしい。

「もうクロが持ってるってバレバレなんだから、見せてくれてもいいだろー」

 まあ、酒が入って頑固&強引大魔王と化した黒金にこんなことを言っても無駄だろうとは思うのだが。

「らーめれーふよーら!」

 本当に酒癖の悪い男だ。ここはもうやむを得ない。この勝負はフけ狙いに走って、次の勝負にもっといい手札&雨の二十点札を期待するとしよう。




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