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合わせ鏡
覗いても覗いても、自分が居る。
四方を鏡に囲まれた部屋に座っていた。
まず、右を見た。
白いシーツ。白い布団。
やせ細り、ベッドの上に横たわる、幾重にも重なった私が居た。
左には点滴のスタンドと、ドラマなんかで見る、よくわからない機械。
様々なチューブに繋がれている。
あぁ死ぬんだ、と思った。
次に、左を見た。
電柱にぶつかり、ひしゃげた白い軽自動車。
フロントガラスを上半身が突き破り、歪んだボンネットに突っ伏している、幾重にも重なった私が居た。
黒い煙。
白いボンネットに映える、赤い血。
にも関わらず、無傷で綺麗な項が、やけに気になった。
それでも、あぁ死ぬんだな、と思った。
3度目は、後ろを見た。
ガラス張りにも関わらず、靄が内に閉じ込められたかの様に、ガラスの向こうが見えない、オフィスビル前。
頭の中身をぶちまけて、顔が半分になっている、幾重にも重なった私が居た。
手足もひしゃげたり、千切れていたり。糸の切れた操り人形を地面に叩きつけたかの様である。
なんと、醜い為体だろう。
やはり、あぁ死ぬんだな、と思った。
あとは前だけだ。
どうせ、死ぬのだろう。
何人もの私が重なり、死んでゆくのだろう。
そう思って、前を見た。
そこには、無表情で私を指差す、たった1人の私が居た。




