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嫉妬
あの人が知らない女と居る。
女を殺そう、と思った。
手には包丁。
私は駆け出す。
暗闇の中、スポットライトに照らされた2人。
私は女の左脇腹に。
ずぶり
その瞬間、体と視界がぐらり、と揺れた。
目の前には見知らぬ男。
私の左脇腹には。
包丁が。
また、視界と体が揺れる。
知らない男が、倒れそうになる私の体を抱えた。
その向こう。
遠くに、スポットライトに照らされた、こちらに背を向けた男がもう1人。
あの人だ。
そう思った途端、向けていた背を、ゆっくりと、こちらに返そうとしている。
あぁまずい。
このままでは、この男と居る処を見られてしまう。
咄嗟に、左脇腹に刺さった包丁を右手で抜き。
私の体を支える男の右首筋に。
ざくり
支えていた腕が離れ、私はどさりと地面に落ちた。
重たく鈍い体を、やっとの思いで仰向けにする。
ぼやけてゆく視界の中。
首を両手で抑え、膝から崩れ落ちてゆく男は。
あの人の、顔をしていた。
そして2人は血だまりの中、動かなくなった。




