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病床
「無様だなぁ」
明るい調子の、無邪気そうな声が言う。
腹痛、嘔吐、発熱と寒気の中。
頭上から、悪意のない嘲りを浴びせるかのように。
「苦しいか?辛いか?」
からかう様に、愉快そうに問いかられる。
私の方は、返事をする暇があったら、吐き気を僅かでも治められないか、という思いで一杯だった。
脱水を抑え。
体を温め。
何より、この頭痛をどうにかせねば。
「なんで、そんなに必死なんだい?」
体を起こし、洗面所へ向かう私に、背後から挑発するように言う。
「普段はあれ程自棄っぱちな癖に。」声がぐわんと頭に響く。
便器の前にかがみ込む。
「あれ程嫌がっている癖に」愉快さは苛立ちへ声色を変える。
蓋を開け、覗き込む。
「あれ程、死にたがっている癖に!」
苛立ちを爆発させるかのように、部屋中に叫び声が轟いた。
空の胃から僅かに出た苦い水を吐き出し、すぐに流した。
壁に寄りかかり、僅かに引いた頭痛の中で思う。
確かに、おかしな話だな。
そして私はベッドに戻った。




