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同化
伸び放題で蓬髪の女が掌に傷をつけていた。
何故そんな事をするのかと訊ねると、
「神に近づきたい」
からだという。
どうりで、目の前に磔刑台がある訳だ
しかし、そういった傷だとかは、いつのまにかついているものなのではないか
聖痕というものだ。
その事を教えると、
「お前には信仰心が無いから、この苦境の意味を知らないのだ」
と言う。
そう言いながら足の甲を釘で貫いている。
確かに私に信心は無いが、こんな事をされて、神は果たして喜ぶものなのだろうか。
“あぁ自分と同じだ嬉しい”だなどと神が宣うとは思えない。
「哀れな奴め、そうやって何でも理屈を捏ねるから何もかもわからないままなのだ」
頭上の十字架から、満足そうな顔で女は脇腹から血を流した。




