3/30
二人羽織
がたがた、がたがた、震えている。
炬燵に入り、羽織を着て、手袋をしても、震えてる。
私が震えている様を、右側に座る母が見ている。
にこにこ、にこにこ、私を見ている。
寒いのだろうか、恐ろしいのか。
震えの理由が、分からない。
分からいのが恐ろしくなり、下を向いて、震えている。
がたがた、がたがた。
炬燵布団を見ながら、震えている。
不意に、背中からばさり、と大きな何かが私を覆った。
「おお寒い、おお寒い。お前も寒かろう。」
知らぬ声が、嗄れた声が、背中から聞こえる。
羽織を着た、誰かが背中を、覆っている。
視界には、羽織の袖。
そこから伸びる、萎びた、枯れ枝のような、細い腕。
「寒かろう、寒かろう。」
違う、違う。
目だけを右に、ちらと動かす。
母は、いない。
「おお寒い、おお寒い。お前も寒かろう。」
違う、違う。
寒くなどない。
お前が、背中に乗っかるから。
私を覆うから。
がたがた、がたがた。
私は震えている。




