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死者の思い
目の前に男、女、子供の死体がある。
その3つが同じ処に重なっている。
私が何気なくそれを眺めていっると、一番下の男の目が開いた。
「なぁあんた、もしかして俺は死んだのか?」
男は戸惑った表情で訊ねた。
すると、その上にうつ伏せに重なった女の口が開く。
「どうして?何で私は死んだの?ねぇどうして?」
女は混乱した様子で声を発する。
今度は一番上に重なった子供が首を傾げた。
「ぼくなにしてるんだろう?」
子供は純朴な瞳で私を見つめる。
そして3人はその場から動かないまま、口々に疑問を喚いた。
「本当に俺は死んだのか?」
「何で私なの?なんで…」
「どうしてぼく、うごけないんだろう?」
「あんた、知ってるなら教えてくれよ」
「いやよ、私死にたくない…」
「おうちにかえりたいなぁ」
あぁ五月蝿い。
同じ場所に死んだだけでこんなに喚かれたのでは、こちらまで死にたくなってしまう。
死者の思いなど、知りたくもない。
私は顔を顰めた。




