恐怖分析
これは、在り来りな夢だ。
しかし、私は”恐怖”していた。
体に汗が滲む。
(あぁ!またヤツが来た!)
息が荒くなる。
(何処かに隠れる場所は、逃げる場所はないか!)
心臓が激しく鼓動する。
(ヤツが来る、ヤツが来る!ヤツが来る!!)
これは夢だ。
一方で冷静な私が観察をする。
昨日見た映画が背景となっている。
追跡者は最近したゲームの登場人物ばかりだ。
夢の中の”私”は場面によって、年齢、性別が変わっている。
そして、夢の舞台の上では常に中心人物でありながら、追跡者から危害は一切受けない。
(このベニヤ板の裏に・・・!)
今の夢の中の”私”は、小学生程度の年齢の男の子。
思考や観察能力は一般的な大人程度はある。
頭を振り乱し、がむしゃらに走り近づいてくる追跡者をやり過ごすための方法を画策している。
しかし、妙だ。
(体は入るけれど、横からは丸見えじゃないか!)
これは夢なのだ。
(本当にやり過ごせるのか!?)
いつも分かっている。
(でも、もうすぐ其処に・・・)
だが、何故か私は”恐怖”している。
(あぁどうしよう、どうしよう・・・!?)
夢を見る時に、これ程恐怖することはない。
一体何を恐れているのだ?
(ヤツが来た!)
体が次第に痙攣するのが分かる。
鼓動が一層激しくなり、夢の中の”私”の視界を白黒と点滅させる程に混乱している。
(足が見える、真横にいる!)
息ができない。
胸が痛い。
痙攣が激しくなる。
(あぁ、ヤツ顔が・・・)
はたと、目が覚めた。
荒々しい息と、たっぷりの冷や汗。
心臓は痛いほどに跳ね回っている。
それでも思考は継続する。
今まで、夢の中でどれほど追われようが、傷つけられようがこのような”恐怖”を抱いたことはない。
今と過去の経験の違いを考える。
かつて見てきた夢の中でも、私は”私”を観察していた。
夢と並行して、思考もしている。
では、違いとは?
唯一つ、夢の中で感知したものがないもの。
緊張。
動揺。
危機感。
このままの状態が続けば、死ぬかも知れないと思われる程の体調の変化。
痙攣。
過呼吸。
跳ねる心臓。
どれも、体が機能不全を起こしていたことを、冷静な私は自覚していた。
このままでは危ないと、思っていた。
”死”が見えてた。
覚めて居れば忘れてしまうそれが、明瞭と体に現れていた。
成程、これが”恐怖”の原因か。
草臥れた私は呆れ、再び体を横たえた。




