忠告
ついに白昼堂々、瞼を開けていても夢幻の類が見えるようになったのかと思った。
それは私がベッドの上で胡座をかき、腕を組む中、真正面に居た。
まじまじと見つめているにも関わらず、その男は私に顔を向ける処か視線の一つも寄越さない。
見えるのは体の右側のみ。
何故かじっと、玄関前の床を凝視している。
しかし、私の関心は、男やそいつが見つめる床でもなく、自分の頭の方にあった。
平素よりおかしな事ばかり考える頭ではあったが、いよいよ焼きが回ったか。
そう思いながら組んでいた腕を解き、うんざりとした思いで頭をがしがしと掻いていたら、ふと喉が渇いた。
害があるものなら、とっくに私に何かしら及んでいるだろうし、何故か、自分の頭が作り出したモノだと私は決めつけていた。
ベッドから腰を下ろし、男の前を横切るように冷蔵庫へ向かう。
男を無視し、冷蔵庫の扉に手をかけた瞬間だった。
「お前はそこにいる」
真左に居る男が、低い声でそう呟いた。
いやはや、幻が喋るとは、愈々病院行きかな。
そう思い、男の方を向いた。
水を入れたコップを持ち、左を向きながら、瞬きをした瞬間。
冷蔵庫の前で、私は頭を玄関に向け、天井を見上ていた。




