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目
目がある。
洗面所の、くすんだ鏡越し。
私の背後に。
目がある。
ぎょろりとしたそれは瞼を持ち、手足を生やしている。
それが、私の背後をうろつく。
ふららと浮遊し、しきりに瞬きをしがら、凡そ役に立っていなさそうな手足を、海月の如くぶらぶらさせている。
暫くすると、不意に、それと目が合った。
当て無く彷徨っていた目は静止し、私の背後にゆっくりと近づく。
私は羽虫が顔の周りを集る程の気持ちの悪さで、それを見ていた。
ゆったりと近づき、それは私の背中にぴったりと張り付いた。
鏡一杯に、目が映る。
あぁ気味が悪い。
私は蠅を払うのと同じ感覚で、腕を背後に向けて思い切り振り回した。
腕が当たる瞬間、目は瞼をぎゅっと閉じ、目の端から涙を流している。
目の癖に、痛がるのか。
私はそれが、酷く癇に触った。




