12/30
蜥蜴
「あなたのお名前は?」
頭上から聞き覚えのない声が訊ねた。
しかし、私はそれに構わず、地面に屈み、蜥蜴をじっと眺めていた。
それは白いアスファルトの上に、肥えた黒い身体がえらく映え、しかし、唯じっとしていた。
「どちらにお住まいで?」
肥えていた筈の蜥蜴は身動ぎもせず、少しずつやせ細ってゆく。
「ご家族はいらっしゃるんですか?」
蜥蜴の細る身体は、もはや干物の如き様相となってしまった。
「ご友人は?」
干からびた蜥蜴、はいつの間にか集った蟻の群れにばらされ、跡形もなくなってしまった。
私は、哀しくなった。
「いつもここ…」
「死にました。」
私は不意に、そう言った。
「どうして…」
「死にました。」
質問を遮るように、私は何度も何度も、蜥蜴の居なくなった白いアスファルトを見つめ、繰り返す。
「死にました。」と。




