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袋
私は袋を被っていた。
スーパーやコンビニで貰うような、白いビニール袋を。
そして、私は道のど真ん中に立っていた。
私の前後左右を行き交う人々は無言であったり、知り合い同士会話を交わしたり、電話をかけていたりと、思い思いの行動をしている。
それは、何処の街にもある、日常の光景である。
その中心に立つ、私を除いて。
私は安心する。
誰も見ていない、と。
誰も関心を向けていない、と。
そこで私は、袋を右手で掴み、乱暴に頭から外した。
その瞬間、雑踏は消え、静寂が訪れた。
人が居なくなったのではない。
皆そこに居るのだ。
まるで時間が止まったかのように一斉に動きを止め、マネキンの如くじっとしている。
首を、私に向けて。
瞬き一つしない見開かれた多数の目が、私を見ている。
前も、後ろも、右も左もビルの窓の向こうからも、皆。
私を見ている。
私は右手で掴んでいた袋を慌てて被った。
静寂は破られ、雑踏が蘇った。
こうするしかないのか。
寂しさを抱えながら、私はそこに立ち続けた。




