三歳の誕生日
御機嫌よう
私の自我は、二歳半くらいから安定してきたのか、自我だけが眠るということは無くなりました。
これで存分にキース兄様、いえ、この世界を観察することができます!!
さて、私は今私の三歳のお誕生日会の会場の準備が終わるのを待っているのです。
控え室で。
とても、緊張するのです。
なんで、私はあんな大勢の前で話さなければならないのか………
この日までの道のりは予想を遥かに超えるほど、大変でした。
◇ ◇ ◇
まず、何故こんなに盛大に祝うのかについて。
貴族の子供達にとって三歳のお誕生日会ってとても重要な意味を持つらしいのです。
この国には、昔からの習慣で親戚以外に赤ちゃんを見せるのは三歳を過ぎてからなのだそうです。
貴族は特に顕著で、必ず三歳のお誕生日会を開き、沢山の人を招いてお披露目をしなければならないそうなのです。
なんと、その時に婚約をする場合もあるのだとか。
三歳児ですよ、三歳児!?
貴族って大変なのです。
お誕生日会の準備は、半年前から始まりました。
最初に始まったのは、礼儀についての講義です。
これが苦痛で苦痛で………
「クレアお嬢様、そこの礼の角度が違います!!
あぁ、そこはもっと姿勢をただして!!」
「「クレア、可愛いよ!!
こっち向いて!!」」
「キース御坊ちゃまもステラ奥様も煩いです!!
黙ってください!!」
いつにも増して、メリーが怖かったのです。
ですが、キース兄様とステラ母様に勝ってしまうなんて、メリーって最強なのです。
また、三か月前くらいになると、私のドレス選びが始まりました。
まぁ、これはキース兄様とステラ母様の管轄です。
いや、まぁ、お二人のことは大好きなのです。
ですが、あれは………
「クレア、これを着てみようか?
似合うと思うんだ!!」
とキース兄様に言われて、白い雪のようなドレスを着ると
「いえ、キース。
それだと、クレアの可愛さが十分に引き出されていないわ!!
こっちも着てみて!!」
とステラ母様に言われ、ピンクのフリフリの私が一番苦手とするドレスを着せられました。
それを拒否すると、
「嫌かい、クレア?
それなら、これはどうだ?
これは絶対に気にいると思うよ!!」
とキース兄様がパープルの妖精のコスプレのようなドレスを差し出し、
「いいえ、キース!!
絶対こっちよ!!」
とステラ母様が薄ピンクの花をモチーフにしたドレスを差し出してきました。
「「さぁ、どっち!?」」
と、二人がこちらを向いて尋ねてきましたが、正直どちらも嫌だったので
「どっちも嫌!!
私はこのドレスがいいってさっきから言ってるじゃん!!」
「「それは、クレアには早すぎる!!」」
と言うとまた、二人は議論を始めるというループが10時間くらい続いていました。
その間、私はずっと立ちっぱなしでした。
あぁ、足が痛い。
ていうか、私は可愛い系の服が大嫌いなのです!!
なのに、あの二人は私に可愛い系の服を着せようとするのですから、困ったものです。
最終的にドレスは自分で選びました。
控えめなレースにドレスのあちこちに散りばめられた星、そんな淡い青紫のドレスを選びました。
まぁ、一目惚れです。
私は、最初にこれを主張したのですが、まぁ、あの二人に潰されまして………
まぁ、つまり本当に疲れました。
◇ ◇ ◇
さて、会場の準備が整ったみたいなので、私は皆様の前に出ていかなければなりません。
あぁ、緊張します。
人、人、人、人………
なんで効果が無いのです!!
「クレア、リラックスだよ!!
リラックス!!
クレアはやれば、できる子なんだから、さぁ、肩の力を抜いて………
行っておいで!!」
キース兄様に背中を押され、私は舞台に向かいました。
心臓はドキン、ドキンと激しく動き、手は震えていました。
しかし、さっきのキース兄様のお言葉に勇気をもらいました。
さて、尋常に勝負!!