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クレアの独白  作者: こはぎ
第2章 クレアの旅路
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船酔い

 


 雲ひとつない真っ青な空、太陽の光が反射してキラキラ輝く海、理想的な航海日和ではあるのですが

 私は甲板で一人ため息をついていました


「なんで、ここは海の上なの!!」






 私は今まで船に乗ったことがありませんでした

 確かに前世で船をテレビ越しに見たことがあるので、どんなものかは知っていたのですが、乗ったことはありませんでした

 そのため、私は船に乗ることをとても楽しみにしていました


「キリ!船よ!船!楽しみだね!」

「珍しく興奮してるけど、慣れてないと船酔いとか大変だと思うんだけど……」

「平気よ!私、車酔いとかしないし!」

「……くるま?」


 そんなやりとりをしながら、私は港ではしゃいでいました

 私がこんなに興奮しているのにはある訳がありました

 それは前世、私が久美だった時のことでした

 その頃の私は海産物をこよなく愛していました

 しかし、私は海のない街で育ったので海なんておろか、漁の様子も実際に見たことはありませんでした

 その事件は私が中学生になった時におこりました

 私がいつも通り琉太を迎えに家に行くと、なにやら騒がしい声がしました

 何だろうと思って、窓から覗くとなにやら琉太を囲んで何かを祝っているようでした


「琉太、さっき何を祝ってたの?」

「あぁ、小型の船を扱う免許が取っただけだよ。大したことじゃ……」

「大したことよ!いつの間に船に乗ってるの!ずるい!!」


 夏休みの間、琉太は家族とハワイに行っていました

 その時、父が役の都合上、免許を取らなければならなかったので、ついでに取ってしまったらしいのです

 私はそこから何度も船に乗せてと琉太にねだりましたが、危ないからと一度も乗せてくれませんでした

 そう、だから私は今とても興奮しているのです

 前世からの念願である船にやっと乗れるのですから

 しかし、私は一つ大きなことを失念していたのです

 私たちが乗る船はリーチ号と言って、聖クレリエント帝国とハールーン国を繋ぐ貿易船です

 貿易船最大のサイズを誇り、観光船としても機能している最新の船でした

 私たちはこの船に観光客を装って乗り込みました

 部屋はスイート、つまり最高級でした

 流石、リチャード皇子なのです

 私たちはまるでホテルの一室のような船の中でゆっくりとくつろいでいました

 しかし船が動き始めると、何か胃がムカムカしてきました

 私は何だろうと思って魔法を使おうとしました、が使えませんでした

 何度も何度も繰り返しましたが、やはり使えませんでした


「キリ、魔法が使えないんだけど何で?」

「やっぱり、知らなかったか。クレア、魔法は陸の上でしか使えないんだよ」

「はぁ!?」


 な、なんということでしょう

 そんなこと本には書いてなかったような気がするのですが

 と驚いた反動で胃が動いてしまい、私は咄嗟に口を抑えました

 そして、ダッシュで甲板に向かいました

 そして、勢いよく吐きました

 それはそれは勢いよく


「船酔いなんてしないって言ってたのはどちら様でしたっけ?」

「私様でしたねー。もう、なんでここは海の上なの!!」

「船に乗ってるからでしょ」


 キリの冷静なツッコミに私は項垂れました

 そこから、私たちはずっと甲板にいました

 部屋に戻ろうとするたびに気持ち悪くなってしまったからです

 空にはたくさんの鳥が飛んでいました

 船酔いなんて知らずに優雅に飛んでいました


「あぁ、鳥になりたい……」

「無理でしょ、何言ってるって!!クレアさがって!!」


 キリはそう言って私の前に出ると、何かを掴みました

 その何かが私には鳥にしか見えませんでしたが、そんなことも気にせずに私はまた吐いていました


「それで、何だったの?」

「聞きたい?」

「そりゃもちろん!」

「リールからの手紙」


 そう言ってキリは私に手紙を渡しました


 -こうなることは最初からわかっていたような気がする

 久美はそういう人間だったから

 だから、私はその行動をあなたらしいと思う

 全く責めるつもりはない

 ただ、何も言わずに出て行ったことは許さない

 絶対に許さない

 だから、必ず帰ってきて、約束!

 それと船酔いの薬を一緒に同封しておきます

 きっと、クレアのことだから海の上で魔法が使えないことを忘れてはしゃいでいると思うので-


 ぽたりと私の頬から涙が流れました

 本当にリールは、琉太は私の最高の恋人というか幼馴染というか友達なのです

 このことは一生変わることはないと思いました

 そして、私は同封されていた船酔いの薬を飲みました

 すると、さっきまでの船酔いが嘘のようになくなりました

 リールには頭があがらないのです

 回復した私が外を見ると、少し先に陸が見えてきました


「あれは、ハールーン国?」

「違うよ、あれはアルビノ島だ」



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