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クレアの独白  作者: こはぎ
第2章 クレアの旅路
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決意の理由

 


 クレアは、常に孤独だった。

 みんなはクレアを愛してくれたし、クレアもみんなを愛していたが、それでもクレアは自分が孤独であると知っていた。

 その原因は、たった一つ。

 クレアがこんな規格外な魔法の才能を持っていたからにほかならない。

 しょうがないといえば、しょうがないのだ、生まれつきなのだから。

 しかし、クレアは知っていた。これがそんなふうに割りきれるほど、単純なことではないと。本能的に恐れてしまうのだ。それをどうしろというのか。「化け物」だと影から言われていたのをメイド達が自分の子供を決して近づけないことをクレアは知っていた。

 そんなクレアを救ってくれたのは、従者であるキリだった。

 何故、キリがクレアを救ったのか。

 理由は簡単だ。

 キリも自分と同じように恐れられていたのだ。





 キリの容姿は、少し変わっていた。

 黒目、黒髪というどの民族にも当てはまらない容姿だった。

 貴族の血が入っていない庶民が黒目もしくは黒髪という特徴を持つ場合、それはとてつもない力を持っていることを表している。

 それは、魔力だったり、腕力だったり、色々あるのだけれど、その中でも一番最悪なのはとてつもない力を二つ以上持っていること。

 そう、キリはとてつもない魔力と俊敏さを持って生まれてしまったのだ。黒目で黒髪だというだけで。

 その容姿が持つ意味に気づいたキリの両親は、キリを恐れ、また金になると思い、キリを売った。

 凄腕の暗殺者に。

 そして、キリの暗殺者としての人生が始まる。

 キリが初めて人を殺したのは、5歳の時。

 物心ついたときから、人が殺されるのを見ていたキリは、そのことに何も感じなかった。恐怖も悲しみも、何も。暗殺者は密かに微笑んだ。これはいい駒になると。

 キリは、それから狂ったように何人も何人も殺した。それは例えばどこかの国の王女だったり、反乱勢力のトップだったり、はたまた同郷である暗殺者だったり。

 そして、「狂った人形」という異名が各国に知れ渡った頃、キリは私のお爺様に遭遇することになる。

 そして、その才能を買われたキリは、今自分の従者としてここにいる。





 クレアは、キリがいなかったらとうの昔にこの世にいなかっただろうと思う、そしてそれはキリも一緒だとも。

 自分とキリは、似た者同士だ。

 周りに異端扱いされても、キリがいるなら自分は……

 だから、クレアはキリを捨てることをしなかった。否、出来なかった。

 海へ飛び出すことを決めた時、クレアは大いに悩んだ。

 自分がここでキリを連れて行くということは、キリを生涯自分の従者として縛り付けるということだからだ。

 悩んだ末にクレアは、直接キリに問いかけることにした。



「キリは私について行きたい?」

「クレアがいないところで俺は生きていくことはできない。だから、ついていかないなんて選択肢が俺にはない」



 だから、クレアはキリだけを連れて海へ飛び出したのだ。

 もうこれ以上何も考えたくないと。



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