プロローグ
聖クレリエント帝国の港は、いつも以上に人が賑わっていた。
道の両脇には、商売のチャンスだとばかりに屋台がひしめきあっている。
船の到着するところには、聖クレリエント帝国の国旗が掲げられ、厳粛な空気が漂っていた。
祭りでもなんでもない平日にこんなことがおこる理由といえば、そうひとつしかない。
ようやく彼らが帰ってくるのだ。
そんなお祭りモード一色の港に、遠くの方から一台の船が近づいてきた。
大きくもなく、小さくもない、いたって普通の船が。
あれだろうか?彼らが乗っている船は?
その甲板には、彼ららしい二人の人影が見えた。
なにやら、楽しそうに話しているようだ。
「やっとだね、キリ。もうすぐ帰るのね、我が故郷、聖クレリエント帝国に」
「そうだね、クレア。何年ぶりだろう?ここに来るのは?」
「十年ぶりよ。私が何もかも捨てて、逃げ出して、飛び出してからもう十年も経ってしまったのね」
「別に責めることはないと思うけどな」
「ありがとう、キリ。そう言ってもらえると助かる」
ここから語られるのは、二人のお話。
全てを捨てて、海に飛び出した少女は一体何を見聞きし、何を感じ、そして、どんな決断をするのか。
とあるクレアの冒険譚、第2章ここに始動。




