キース兄様最強説
「クレア、ここ間違えてる。」
「あ、はい。
ありがとうございます、キース兄様。」
私は、今真面目にテスト勉強をしています。
何故なら、キース兄様がいるから!!
キース兄様を悲しませることはしない主義である私は、全身全霊で勉強をしていました。
「クレア、流石だね!!」
と言うキース兄様のお言葉をいただくために!!
しかし、本当にテスト勉強は嫌なのです。
だって、おかしいのです!!
明らかに前世と比べて、範囲が広すぎるのです!!
何ですか、歴史の範囲が古代全部って!!
物理の教科書、まるまる一冊が範囲って!!
それに幅も広すぎるのです!!
魔法誕生のことから微分・積分、動摩擦力、イノベーションに簿記のことまで。
これが学園で学ぶことなのですか!!
日本とは全く違うのです。
スパルタなのです、スパルタ!!
でもまぁ、習うことはほぼ前世と変わらないので覚えるというよりは思い出すという感じなのでとても楽ですが。
しかしそのせいで、キース兄様に質問することが余りないのです。
もう、無理やりにでも聞きに行きましょうか?
いえ、それだと他の人々に迷惑がかかってしまうのです。
「どうかした、クレア?
手が止まってるよ?」
「すいません、キース兄様。
何でもございません。」
私は、邪念を追い払って今度こそ真面目にテスト勉強をし始めました。
2時間くらい経った頃でしょうか。
ずっと集中して机に向かっていたので、肩が痛くなり始めた私は、少し休憩しようかなと思い、思い切り伸びをしました。
すると、隣に座っていたクリスが
「クレア〜、ここわかんないんだけど教えてくれない?」
と可愛く、小首をかしげてテキストを見せて尋ねてきました。
不覚にもその仕草に私は、きゅんときてしまいました。
可愛すぎて。
本当にクリスは女子より女子らしいのです。
私は、そんな動揺を隠すために問題を教えようとテキストに手を伸ばしました。
「何処がわからないの?」
テキストが私の手に触れようとしたその時です。
目の前から、突然テキストがなくなったのは。
「そこ、私語禁止!!
問題なら、俺が教えるから他の人に聞かなくてもいいし、教えなくてもいいよ。
で、何クリス、何処がわからないの?」
そう言って、キース兄様が私とクリスの間に割り込んできたのは。
どうやら、キース兄様が空間魔法でテキストをとったようなのです。
すると、クリスは苦笑いをしながら、キース兄様に言いました。
「相変わらずですね、キース兄さん。
そんなに嫉妬しなくてもいいじゃないですか。」
って、キース兄様が嫉妬!?
クリスと私が仲良くしてたから!!
私は、思わず顏を赤くしてしまいました。
「いーや、嫉妬するよ、俺は。
何か問題ある、クリス?」
「問題大アリですよ。
折角のアピールチャ………いえ、何でもありません。」
「まぁ、せいぜい頑張ってよお二方。
ちなみにクレアの恋人には、俺より強い人じゃないと認めないからね。」
クレアの恋人!!ってもしかして、今話してた内容って………
私は、再び顔を赤くしてしまいました。
ていうか、キース兄様より強い人なんて連れてこれないのです。
これじゃあ、私は誰とも付き合えないのです。
いっそのこと、キース兄様と付き合うっていう手もありますけど。
もちろん、冗談ですよ?
「ちょっと、無理難題じゃないですか、それ。
だって、キース兄さんって魔法も武術もどちらも強いじゃないですか!!」
そうなんです!!
キース兄様はとっても強いのです!!
魔法も自由に操るのはもちろん、幼い頃から元騎士団団長のお爺様に武術を教えられたこともあって、武術も最強。
もう、最強なのです!!
「一応、この国の戦闘力ベスト10には入ってるみたいだね。
まぁ、リチャード皇子様よりは弱いけど。」
「そう言いながら、お前俺に二回に一回は勝つじゃないか。
チャームの量も質も俺とそんなに変わらないしな。」
「光栄の極みでございます、リチャード皇子。」
「本当に俺の部下に出来ないのが、惜しく思われる。
それより、今は勉強会なんだが、真面目に勉強してくれないか?」
今が勉強会だということをすっかり忘れていた私達は、それからは本当に真面目に勉強をしていました。
本当ですよ、本当!!




