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クレアの独白  作者: こはぎ
第1章 クレアの独白
31/43

劇が終わったら?

 


 拍手が未だに鳴り響いている。

 ほとんどの人が立ち上がり、手を叩いている。

 その光景は、今まで頑張ってきた私達にとって、感動以外の何物にもかえがたいものでした。

 思わず、舞台裏なのにもかかわらず、みんなで肩を抱き合って号泣してしまいました。

 ということで結論、私達の劇は、大成功を収めました。

 演じていた時の記憶は、緊張しすぎて真っ白だったけど。

 劇が終わり、教室に戻ってきた私たちは、再び肩を抱き合いながら涙を流した。





「クレア、お疲れ様!!」

「スフィアこそ、お疲れ様!!」



 私達は、いつもより早めに寮に帰って、今日までのことを振り返っていた。

 そして、話は移ろい、あの話に変わっていった、


「もうすぐ、新年、新学期だね。」



 スフィアは、本当に私が悩んでいることをつくのが上手い。

 今だって、そうだ。

 私がずっと悩んでいる事をズバッと聞いてくる。



「まだ、新学期までは3ヶ月もあるよ。」



 私は、これ以上この事について話したくなくて、ついつい話をそらしてしまった。

 真正面から、ぶつかる勇気なんて私にはないんだ。



「考えはまとまってるの?」

「いや、まだ………」

「そう。話ならいつでもどこでも何度でも聞くからね!!」

「うん、ありがとう!!」



 笑顔で返事をして、私はその答えを誤魔化した。

 それがよくないことだということは、知っているけど………

 でも………

 まだ、もう少し時間をください。

 心の中でそう願って、私は眠りについた。





  ◇ ◇ ◇



「学園祭劇の部、優勝を祝ってカンパーイ!!」

「「「「「「カンパーイ!!」」」」」


 翌日の昼、私達は、下町で食堂をやっているという子のお力をお借りして、その食堂で学園祭の打ち上げをしていた。

 何故、学園祭の他の思い出を話さないのか?と言われれば、答えは簡単。

 劇の部に参加する人は、準備や片付け、受付などをやらなければいけないため、全体を回る時間がなかったのだ。



「クレア、お疲れ様!!」

「クリスこそ、お疲れ様!!」

「クレア、お疲れ様です。」

「リールもね!!」



 私達三人は、そうやって仲良く話していた。

 劇のあのスフィア監督によるスパルタ指導のこととか、最後の拍手に感動したこととか。

 そう、あの質問をされるまでは。



「あのさぁ、ずっと気になってたんだけど、クレアとクリスってできてんの?」

「ん?できてるって………?」



 それは、ある庶民派の子の一言だった。

 私は、ずっとこのことを恐れていた。

 庶民派の子は、こうやってすぐからかってくるから。

 だから、「庶民派」って言って、避けていたのに。

 からかわれるなんて、しかも今、この時期に………

 最悪だ。

 私には、答える術がない。

 だって、まだ決められないんだから。

 そんな私の気持ちも知らずに、みんなはどんどん盛り上がっていく。



「あー、だから付き合ってるのってこと!!」

「あ、それ私も気になってた!!」

「私も私も!!」

「本当のところはどうなの!?」

「パーっと話しちゃえよ!!」



「「やめろよ!!」」



 店内にクリスとリールの声が響く。

 クリスとリールはそう言うと、私の手を引いて店を出た。

 動揺している私に気が付いて、多分こういうことをしてくれたんだろう。

 本当に二人とも優しいな。

 なんで、私なんかを………

 あぁ、私が決められないのが悪いんだ。

 わかってる。

 わかってるけど、でも………

 中途半端になるのだけは、絶対に嫌だ!!



「クレア、焦らなくていいんだよ?

 ゆっくり、ゆっくり決めてくれればいいから。」

「そうですよ、クレア。

 急ぐことなんてないんです。

 周りを気にする必要もない。

 自分をしっかり見つめなおせばいいんです。」



 二人は、ギュッと私の手を握って、私の目を見てそう言ってくれた。



「ありがとう。

 私、二人に好きって思われて、本当に嬉しい。

 ありがとう、ありがとう………」



 私は、思わず泣きそうになったのをぐっとこらえて、満面の笑みで言葉を返した。

 上手く笑えているか、わかんないけど。

 すると、二人は何故か顔を赤らめていた。

 風邪だろうか?



「どうしたの?風邪?」

「「クレアって本当に鈍感!!」」



 二人にそう言われて、少し拗ねていると二人は私の肩をつかんで



「「でも、そういうところが好きだから!!」」



 と、満面の笑みで言ったのです。

 それは、物凄い衝撃でした。

 そう、私が気絶するくらいには。



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