劇が終わったら?
拍手が未だに鳴り響いている。
ほとんどの人が立ち上がり、手を叩いている。
その光景は、今まで頑張ってきた私達にとって、感動以外の何物にもかえがたいものでした。
思わず、舞台裏なのにもかかわらず、みんなで肩を抱き合って号泣してしまいました。
ということで結論、私達の劇は、大成功を収めました。
演じていた時の記憶は、緊張しすぎて真っ白だったけど。
劇が終わり、教室に戻ってきた私たちは、再び肩を抱き合いながら涙を流した。
「クレア、お疲れ様!!」
「スフィアこそ、お疲れ様!!」
私達は、いつもより早めに寮に帰って、今日までのことを振り返っていた。
そして、話は移ろい、あの話に変わっていった、
「もうすぐ、新年、新学期だね。」
スフィアは、本当に私が悩んでいることをつくのが上手い。
今だって、そうだ。
私がずっと悩んでいる事をズバッと聞いてくる。
「まだ、新学期までは3ヶ月もあるよ。」
私は、これ以上この事について話したくなくて、ついつい話をそらしてしまった。
真正面から、ぶつかる勇気なんて私にはないんだ。
「考えはまとまってるの?」
「いや、まだ………」
「そう。話ならいつでもどこでも何度でも聞くからね!!」
「うん、ありがとう!!」
笑顔で返事をして、私はその答えを誤魔化した。
それがよくないことだということは、知っているけど………
でも………
まだ、もう少し時間をください。
心の中でそう願って、私は眠りについた。
◇ ◇ ◇
「学園祭劇の部、優勝を祝ってカンパーイ!!」
「「「「「「カンパーイ!!」」」」」
翌日の昼、私達は、下町で食堂をやっているという子のお力をお借りして、その食堂で学園祭の打ち上げをしていた。
何故、学園祭の他の思い出を話さないのか?と言われれば、答えは簡単。
劇の部に参加する人は、準備や片付け、受付などをやらなければいけないため、全体を回る時間がなかったのだ。
「クレア、お疲れ様!!」
「クリスこそ、お疲れ様!!」
「クレア、お疲れ様です。」
「リールもね!!」
私達三人は、そうやって仲良く話していた。
劇のあのスフィア監督によるスパルタ指導のこととか、最後の拍手に感動したこととか。
そう、あの質問をされるまでは。
「あのさぁ、ずっと気になってたんだけど、クレアとクリスってできてんの?」
「ん?できてるって………?」
それは、ある庶民派の子の一言だった。
私は、ずっとこのことを恐れていた。
庶民派の子は、こうやってすぐからかってくるから。
だから、「庶民派」って言って、避けていたのに。
からかわれるなんて、しかも今、この時期に………
最悪だ。
私には、答える術がない。
だって、まだ決められないんだから。
そんな私の気持ちも知らずに、みんなはどんどん盛り上がっていく。
「あー、だから付き合ってるのってこと!!」
「あ、それ私も気になってた!!」
「私も私も!!」
「本当のところはどうなの!?」
「パーっと話しちゃえよ!!」
「「やめろよ!!」」
店内にクリスとリールの声が響く。
クリスとリールはそう言うと、私の手を引いて店を出た。
動揺している私に気が付いて、多分こういうことをしてくれたんだろう。
本当に二人とも優しいな。
なんで、私なんかを………
あぁ、私が決められないのが悪いんだ。
わかってる。
わかってるけど、でも………
中途半端になるのだけは、絶対に嫌だ!!
「クレア、焦らなくていいんだよ?
ゆっくり、ゆっくり決めてくれればいいから。」
「そうですよ、クレア。
急ぐことなんてないんです。
周りを気にする必要もない。
自分をしっかり見つめなおせばいいんです。」
二人は、ギュッと私の手を握って、私の目を見てそう言ってくれた。
「ありがとう。
私、二人に好きって思われて、本当に嬉しい。
ありがとう、ありがとう………」
私は、思わず泣きそうになったのをぐっとこらえて、満面の笑みで言葉を返した。
上手く笑えているか、わかんないけど。
すると、二人は何故か顔を赤らめていた。
風邪だろうか?
「どうしたの?風邪?」
「「クレアって本当に鈍感!!」」
二人にそう言われて、少し拗ねていると二人は私の肩をつかんで
「「でも、そういうところが好きだから!!」」
と、満面の笑みで言ったのです。
それは、物凄い衝撃でした。
そう、私が気絶するくらいには。




