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クレアの独白  作者: こはぎ
第1章 クレアの独白
28/43

スパルタ監督、スフィア

 


 文化祭まで後一ヶ月に迫ったある日

 私達は、教室で劇の練習をしていました。



「サラ様、どうか後ろに。

 怪しいものには近づかないように。」



 クリス(ライ)は、そう言って私の腕を掴みます。

 若干腕が震えているのです。



「ライ!!

 あれは、怪しいものではないわ!!

 レイよ!!

 私の恋人なのよ!!

 だから、ライ!!

 そこをどいて!!」



 私は、必死にサラを演じます。

 昔のことを思い出して、なるべくリアルに見せれるように。

 私は、狂おしいほどの愛を演じます。



「私は、私は断じて認めません!!

 あんな下賤なものを恋人にするなんて………

 何故、そんなことをするのですか!!」



 そう言うクリス(ライ)は、少し遠慮がちで。

 もっと、ガツガツきて欲しいのです!!

 リアルな感じが出せないのです!!



「何故、あなたの承諾が必要なの!!

 私は、私は、レイのことが………」

「それ以上言ったら、私は貴女を閉じ込めることにいたします。

 貴女を独り占めできるように。

 私だけの貴女にするのです。

 貴女が私をみてくれないのなら、そうするしかありません。」

「何を言い出すの!!ライ!!

 止めなさい!!ライ!!

 この腕を離して!!」



「はい、カーット!!」



 カチンコの音が鳴り響き、私は動きを止めました。



「クレア、とっても素敵だよ!!

 ナイス演技!!

 グッジョブ!!

 そのまんまでいいよ!!」

「スフィア監督、ありがとうございます!!」



 私は、スフィアの言葉に胸をなでおろしました。



「それに比べて、クーリースー!!」

「はいぃぃ!!」

「あの演技は何なの!?

 もっと気持ちを込めて!!

 ヤンデレになりきって!!」

「無理だよ〜。」

「無理じゃない!!

 私の弟でしょ!!

 できるはずよ、クリスなら!!」



 そうなんです。

 クリスの演技がすごいことになっているのです。

 あれですね、大根役者?

 棒立ち、棒読み?

 まぁ、とにかく酷いのです。

 練習、練習あるのみなのです!!



「じゃあ、もう一回!!

 同じところから!!」



 今日もスフィア監督の容赦ない指導が止まりません。





 さて、何故ここにクリスとスフィアがいるのかと申しますと、単純な話なのです。

 積極的な貴族の数が少なく、人数が足りず、Bクラスと合同という形をとらせてもらったのです。

 まぁ、二人と一緒にできて、嬉しいのでいいのです!!




  ◇ ◇ ◇



「あぁ、疲れた………」



 私とクリスは、寮の交流スペースで今日の反省会&お互いをねぎらう会をしていました。



「お疲れ、クリス。

 ふふっ、今日は一段としごかれてたね?」

「本当だよ〜。

 もう、クタクタ〜。」

「無理なら、無理ってちゃんと言いなさいよ。」

「いやだよ。」



 急にクリスは真剣な顔をして、私の手を握りました。



「えっ、クリス!?

 手が!!手が触れてる!!」

「え?ダメ?」

「え、いや、何ていうか、その、えーっと………」



 私は、思い切り動揺してしまいました。



「僕は、クレアと付き合いたいんだ。

 そのためなら、何だってするつもりだよ。

 これもそのため。

 クレアのため。」



 積極的なクリスにどきどきしながら、私は何故クリスの演技が下手なのか、その理由がわかりました。



「クリス、それよ!!」

「えっ?」

「その心構えが問題なのよ!!

 私のために演技しようとするから、あんな下手な演技になるの!!

 自分からやりたいと思わない限り、クリスの演技は上手くなんてならない!!

 もっと、ちゃんと向き合ってよ!!

 私のことが好きなのは、嬉しいけど………

 でも、ダメよ!!

 今のままじゃ!!

 自分のために行動しない人間を私は嫌うわ!!

 もっと、ちゃんと考えなさい!!」



 クリスは驚いたように、目を見開いていました。

 私は、そう言い残してその場を去りました。





 寮に戻ると、ニヤニヤした顔のスフィアが待っていました。

 もしかして、さっきの会話を聞いていたのでしょうか?

 正直、気持ち悪いのです。



「クレア、良いこと言った!!

 あれが言いたかったのよ、私は!!

 ありがとう、言ってくれて。

 私からの言葉じゃ、クリスには伝わらなかったわ。」

「やっぱり聞いてたのね。

 でも、言い過ぎてはなかったかしら?」

「あれくらいがちょうど良いのよ!!

 クリスには!!」

「そうかなぁ?

 ていうか、あの話の続き、聞かせてもらうわよ!!」

「え、何の話?」

「リチャード皇子とのことよ!!」

「えー、恥ずかしい///」

「スフィア!!」



 こうして、ガールズトークは、夜遅くまで続きました。

 その詳細は、今はまだ秘密なのです。



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