魔法のLESSEN
フィン兄様が反乱をおこしたって言うのは嘘で、ただの祭りだと言うことがわかった今、私は急に暇になってしまいました。
そして、一週間も地獄、いえ自宅で過ごさなければならなくなりました。
ステラ母様とキース兄様から逃げることができ、なおかつ自分にとって有益になること。
そんな都合のいい話を私は、キース兄様とステラ母様のスキスキ攻撃をかわしながら、考えていました。
が、見つかりませんでした。
そんな時でした。
あの話が舞い込んできたのは。
「大変です!!大変です!!領主様!!」
そう言って駆け込んできたのは、東の森の森番でした。
コーナー家の領地は、四方を森に囲まれています。
その森は、主に南、北、東、西の四つに分類されており、東の森はその中でも最大の大きさを誇っていました。
「どうなさったのですか!!」
その時は、ちょうど他の方々が出払っていたので家の中にいたのは、私とキリだけでした。
「領主様は!!領主様はいらっしゃいませんか!!」
「残念ながら、今はいません。」
「そんな……!!」
彼はそう言うと、へなへなと倒れこみました。
何故、こういう時に限って皆出払っているのでしょうか?
私は、内心動揺していました。
しかし、いついかなる時も冷静に分析する、それが私のモットーでした。
私は、深呼吸をして心を落ち着かせると、彼に尋ねました。
「一体、何があったのです?
全て話してください!!」
「は、はい!!
東の森でゴブリンの群れが発生しました。
数は、50匹より多い模様。
至急、駆除をお願い申し上げます!!」
こ、これはいいストレス発散になりそうなのです!!
そう思うとすぐに私は手を二回叩きました。
ポンッ
そんな音と共に現れたのは、私の戦闘用具を持ったキリでした。
「全く人使いが荒いよ、クレアは。」
「別に荒くないわよ!!キリ!!」
東の森の森番は、驚きのあまり口を開けて放心状態に陥っていました。
私は、彼をメリーに任せるとキリと共に東の森まで飛んで行きました。
そこに広がっていたのは、東の森全体を埋め尽くすゴブリン達でした。
上から見ると、その異常さがよくわかりました。
その数は50匹をゆうに越し、約500匹のゴブリンがいました。
私はそれを見てとてもワクワクしていました。
「キリ!!これはいい魔法の練習になりそうだね!!」
「それより、まず町の人の安全を確保することの方が先でしょ、クレア。
今回は、領主代理としてここにいるんだからしっかりして。」
「はい、ごめんなさい。」
キリに怒られてしまったのです。
確かに今の言動は、領主代理として相応しくないものだったのです。
しっかりしなくては!!
「では、まず最初に東の森全体に結界をはります!!
キリは、結界の外にいるゴブリンの駆除を頼みます!!」
「了解、クレア。」
キリは、そう言うと地上に降りて行きました。
私はそれを見届けると、東の森の中央まで飛んでいきました。
「土の精霊よ、水の精霊よ、我に応えよ。
【sacred-place】」
その瞬間私の手から光が溢れ出し、東の森全体を包みました。
光が収まると東の森はドーム状の結界に包まれていました。
魔法成功なのです!!
少し詠唱を長くしたので、ざっと一週間はもつでしょう。
その内に、全てを殲滅するのです!!
あぁ!!ワクワクしてきました!!
私が結界をはり終えると、すぐにキリがやってきました。
流石、キリ!!仕事が早いのです!!
「で、これからどうするの、クレア。」
「そうね………」
私は、悩みました。
どうやってこいつらを駆逐するのかを。
丸焼きにしましょうか、串刺しにしましょうか、それとも………
と真剣に悩んでたら、キリに頭を叩かれました。
「殺し方じゃなくて、カイン様にいつ報告するのかってこと。」
「あぁ!!」
そっちのことだったのです!!
あー、恥ずかしい!!これじゃまるで、私が殺したがってるみたいではないですか!!
いや、実際そうなんですけど……
「話すの面倒臭いし、一発で仕留めるわ!!
キリはその補助をお願い!!」
「了解、クレア。」
東の森を一つも傷つけず、ゴブリンだけを殺す方法。
そんな魔法、私が知っている限り一つしかないのです!!
「森羅万象の精霊よ、我に応えよ。
【pure-place】」
その瞬間、あれだけいたゴブリンが忽然と消えました。
どうやら、魔法は成功なのです!!
それを確認した瞬間、私の意識は暗転しました。
目がさめると私は自分のベットの上にいました。
周りには、家族全員が。
「もっと周りを頼れよ!!」
「クレアの為なら何でもするよ!!」
「クレアはもっと周りを見なさい!!」
「無理だけはするな、クレア!!」
「ああいうことは先に言ってくれると嬉しいです、クレアお嬢様。」
私は本当にみんなに愛されているのです。
こんな嬉しいことはないのです。
「ありがとうございます!!」
と、感動に浸る前に。
「私はどれくらい寝ていましたか?」
「一週間です、クレアお嬢様。」
「ありがとう、キリ。」
やったーーーーー!!
どうやら、私は明日学園に帰る日のようです!!
これで地獄はまぬがれ……
「そうだ、クレア!!
今日はクレアの回復祝いにルール家の方々も呼んでパーティーにしましょう!!
さぁ、ドレスを選ぶわよ!!」
「俺もクレアのドレスを選ぶの手伝うよ!!」
いやーーーーー!!
どうやら、地獄を免れることはできなかったようなのです。
私は潔く地獄に向かいました。
 




