星に祈る
私達は、急いで自宅に向かった。
馬車だと遅いので、魔法を使って。
もしかしたら、帰ったら逆に事を拗らせてしまうのかもしれないのだけれど。
それでも、もう大切な人は失いたくないから!!
私は、より速度を速くした。
久しぶりに帰った我が家は、悲惨なことになっていた。
雑草は生い茂り、窓はところどころ割れ、夜中だというのに光が一つもついていなかった。
まるで、誰も住んでいないみたい。
私は、おかしいと思った。
だって、フィン兄様に屋敷を渡すのはキリ調べによると、まだ一週間もあったはずだ。
なのに……!!
「くそ!!何がどうなってんだ!!」
キリは悔しそうに呟いた。
しかし、今すべきことは冷静に物事を把握すること。
私は、とりあえず無属性魔法「サーチ」を使った。
この魔法は、周囲の状況を教えてくれる魔法で、地球で言うレーダーみたいなものだ。
五メートル、十メートル、十五メートルと範囲を広げていくと、南西の方角二十五メートル先に複数の人の反応がでた。
私は、未だに落ち込んでるキリの背中を思い切り叩いた。
「キリ!!
落ち込んでる場合じゃない!!行くよ!!」
すると、キリは思い切り自分の頬を叩き、私を見てにやっと笑った。
「わかった。
ところで、何処に?」
そういえば、キリに目的地を言ってなかった。
まぁ、キリならいいか!!
「説明するのは、後!!
いいから着いてきて!!」
私は、そう言って空中に飛び上がった。
少し遅れて、キリも空中に飛び上がった。
そして、私達は南西にある森に向かった。
サーチをこまめに使いながら目的地に着いたと思ったら、そこには誰もいなかった。
「おかしいな、ここなんだけど……」
私とキリは、不思議そうに首をひねった。
すると、キリはいきなり手を叩いた。
「クレア、関係あるかわかんないんだけど……」
そう言って、キリは私のもとに来る前、カイン父様と話したことを教えてくれた。
◇ ◇ ◇
「キリ、ちょっとこっちに来なさい。」
「はい、ただいま。」
カイン父様は、準備をしていたキリの元に押し掛けると、珍しく真面目な顔をして、そうキリを呼んだ。
そして、こう言ったのだと言う。
「これから、私達家族には大きな試練がやって来るだろう。
切り離され、ボロボロになり、もしかしたらお互いを憎みあうかもしれない。
その時、キリはクレアの、クレアだけの味方になってくれないだろうか。
よろしく頼む。」
そう言うと、カイン父様はキリに向かって一礼をした。
それは、いつものカイン父様からは到底かけ離れた行動だった。
キリが何か言う前にさっと体を起こすとカイン父様は、部屋を出る前にぽそりと呟いた。
「もし、どうしても家族の力が欲しいときには星に祈りなさい。
私からのアドバイスだ。では。」
◇ ◇ ◇
私は、その話を聞いて絶句した。
なんで、なんでこいつは……
「なんでそんな大事なこと黙ってたのよ!!」
キリは、私がどうしてそんなことを言ったのかわからないらしい。
いつもは、もっと頭が切れるのに。
「だーかーら!!
星に祈るって言うのは、魔法を使う、特に何かを暴く魔法を使うって言う隠語なの!!
こんな簡単なことにも気づかないなんてキリらしくない!!」
キリは、それでもキョトンとしていた。
どうやら、本気で知らなかったらしい。
なんて、珍しい。
私は、そんなキリを横目に固定魔法を行使した。
「[appear-person]」
すると、周りの森林は消え失せ、そこに現れたのはなんと自宅だった。
私は、とても驚いた。
そして、思った。
何してるんですか、キース兄様。




