帰省なんかしたくない!!
ごちゃごちゃした問題も解決したある日、学園は夏季休業期間を迎えました。
この期間は約一ヶ月ほどで、ほとんどの生徒が実家に帰ります。
かく言う私もその内の一人なのです。
久々の実家に私は、げんなりしていました。
だって、絶対帰ったらキース兄様とステラ母様の着せ替え人形にされるのです。
そんな場所に帰って、嬉しいと思いますか!!
いえ、思いません!!
私は、今後のことを考えて、思わずため息をついてしまいました。
「ため息なんかついてどうしたの?」
スフィアはそう言って、私の顔を覗き込みました。
「ちょっとね……」
私は、そう答えるとまたため息をつきました。
「そんなため息ばかりのクレアに朗報です!!
今期の夏季休業期間に遊びに行きませんか?
リチャードの別荘に!!」
私はすぐにその提案に乗っかりました。
◇◇◇
そして、夏季休業期間1日目。
私達がやってきたのは、山奥にある古典的なコテージでした。
メンバーは、私、スフィア、クリス、リール、リチャード、キリ、後それぞれの使用人なのです!!
私がここに滞在するのは、一週間!!
その間、あの地獄から抜け出せると思うと本当に嬉しいのです!!
私は、スキップをするほど浮かれていました。
コテージの中は、思った以上に広くなっていました。
流石、王族の別荘なのです。
荷物もそれぞれ振り分けられた部屋に置き、さぁ昼食にしようとしたその時でした。
突然、外から「キャー」という叫び声が聞こえたのは。
私達は、一斉に声の元に向かいました。
やはり一番速いのは、リチャード皇子でした。
一瞬で私達の前からいなくなってしまったのです。
私達が声の元に着いた時には、全て終わっていました。
どうやら、非戦闘員の使用人が大型の魔獣に襲われそうになったようなのです。
私は、その時実感しました。
どんなに努力してもこの人だけには敵わないと。
そう思ったのは、私だけではないらしく、キリやスフィア、クリスも何も言えず立ち続けていました。
「リチャード、また腕をお上げになりましたか?
一体どこで学んでくるのやら。
ずっと一緒にいるはずの私をも驚かす野生じみた成長スピードですね。」
いつものことだというようにリールだけは、リチャードに話しかけていました。
「野生じみたってお前なぁ。
失礼だぞ、全く!!
なんか、身についてたんだよ!!
気がついたら!!」
「それが野生じみていると言うんです。」
「うるさい!!正常だ!!正常!!」
私達は、そんな二人の会話を黙って聞くことしか出来ませんでした。
それから一週間、私は楽しく……魔法の練習をしていました。
リチャード皇子のあの戦いに感化され、みんなうずうずしてしまったのです!!
あれに追いつきたい!!もっと強くなりたい!!って。
その様子にスフィアは、呆れ顔でため息をついていました。




