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クレアの独白  作者: こはぎ
第1章 クレアの独白
20/43

クレアとクリス

 


 この聖クレリエント学園には、定期試験と呼ばれる試験があります。

 年に4回行われていて、それと同時にクラス編成も行われています。

 この試験の最も恐ろしい所はここにあります。

 この学園では、定期試験毎に学年の人数を10人ずつ減らしています。

 簡単に言うと、下から10番目に入った人は全員即退学ということです。



 あぁ、恐ろしや〜!!



 さて、私も気を引き締めて勉強せねばなりません。

 何故なら、ただ今テスト二週間前だからです。

 私は、一人で生きていくと決めました。

 ならば、それだけの地位を手に入れなければなりません。

 その為に私は、三年間の学園生活における定期試験で毎回トップ5に入らなければならないのです。

 そうしなければ、この世界ではやっていけないのです。



 そう言えば、自殺未遂したときの私と今話している私が大分違うのではないかと思いませんでしたか?



 まぁ、あれですね。



 自殺未遂頃の私は、全面的に久美の精神が表に出てしまっていて、ちょっとあれだったんです。

 実は、久美って所謂「ヤンデレ」ってやつだったんだですよね。

 だから、その、何というか、すぐ死にたがるというか…………



 現代人の悪いところですよね。



 まぁ、前世の『記憶』が戻って2日も経てば、精神も安定してきて、私もまともになるのです。

 クレアは「ヤンデレ」では、ないのでクレアと久美が合わさった私も「ヤンデレ」ではありません。

 確かに、クレアに比べたら、少しだけネガティヴ思考になっていますが。

 全てキリの言った通りになったのです。

 キリには敵わないのです。



 しかし、本当に一人で生きていけるのでしょうか?

 一人といってもキリはずっと一緒ですが。



 今更ですが、ここはクリアランスです。

 そう、クリアランスなのです。

 地球とは違い、女性が働くことが一般的ではないのです。

 これは、困りました。

 昨日、あれだけ啖呵をきっておきながら言うことはできないのです。



「ごめんなさい。結婚してください!!」



 なんて。

 流石に私の強靭なメンタルでもこんなことは言えないのです。

 私と結婚してくれる人なんてそうそういないでしょうし、私はそんなに身分が高くないので、政略結婚をする相手もいません。

 あ、一応貴族なんですけど、貴族の中でも位は下の方なのです。

 貴族の位は、上から


 大公


 公爵


 王子


 侯爵


 辺境伯


 伯爵


 子爵


 男爵


 準男爵


 勲侯爵


 となっているのです。

 男爵以下三つの位は、主に軍人に与えられるもので貴族としてのお務めはあまりなく、領地も持っていません。

 子爵より上の貴族は、全て同等の責任を持つことになります。

 まぁ、領地を持ったり、役職を持ったり、そんな感じです。

 かくいうコーナー家はこの子爵にあたります。

 しかし、ここで一つ問題が。

 貴族の男性というものは、揃いも揃ってプライドが高い生き物です。

 したがって、自分より身分の低い女性とは結婚したがりません。

 また、軍人の男性はその真逆で、自分より身分の高い女性とは結婚したがりません。

 つまり、どういうことかというと私と結婚してくれような人は、子爵にしかいないということなのです。

 しかし、ここでもう一つ問題が発生します。

 我が国では、子爵は三世代連続で功績をあげ、なおかつそれを王様直々に認められた場合ではないと貰えないのです。

 昔は、戦争があったおかげで、功績をあげやすく、子爵も増え続けていたのですが。

 ここ数十年は、戦争もなく平和なご時世が続いているので子爵は減少の傾向にあります。

 つまり、結婚候補が減少傾向にあるのです!!

 ゆゆしき問題なのです!!本当に!!





 つまり、何が言いたいかというと、私は今昨日のことをとっても後悔しています。

 考えてもしょうがないので、私は図書館に向かいました。

 寮だと同じ部屋のスフィアに出会ってしまいますからね。

 ですが、さっきから気になることがあるのです。

 あの棚の陰から物凄い視線が向けられているような気がするのですが、気のせいでしょうか?

 私はその視線を無視して、黙々と勉強を始めました。





 -数日後-



 結果を言うと、私また一番でした。



 テスト勉強を頑張ったおかげですね!

 なので、席は変わらずキープです!

 クリスとスフィアは仲良くBクラスに落ち、リチャード皇子とリールはなんと私と同列一位。



 凄いですね、お二人………



 まぁ、その所為でとても気まずいのですが。

 多分、リールは狙って一番になったのでしょう。

 あいつはそういうやつです。

 そう言えば、この後私はクリスと会う約束をしていました。

 それは数日前のこと





  ◇ ◇ ◇




「クレア!!」



 私が寮に向かうために一人で廊下を歩いていると、後ろから名前を呼ばれました。

 振り返ってみると、そこにはクリスがいました。

 私は咄嗟にダッシュで逃げようか、とも思いました。

 しかし、逃げてもどうにもならないので私は逃げませんでした。

 クリスはこう見えてとってもしつこいのです。



「クレア、話したいことがあるんだ。

 14日の放課後、図書館の会議室に来てくれないか?」



 私がこくりと頷くとクリスはニコッと笑いました。



「ありがとう」



 それだけ言うと、クリスは立ち去りました。

 それにしても、クリスって気がきくやつなのです。

 わざわざ、約束の日にちをテスト最終日にしてくれるなんて。


  ◇ ◇ ◇





 と、まぁ、そういうことがあったのです。

 ていうか、一体全体クリスは何を話したいのでしょうか?

 私はそれにどう答えればいいのでしょうか?

 何か話すこととか考えるべきでしょうか?

 それとも………

 悶々と考えながら、歩いていたらいつの間にか会議室についていました。

 ドアを開けてみても、まだ誰も来ていないようなのです。

 少し早く来すぎてしまったみたいなのです。

 そう思っているとカチャッと音を立てて、会議室のドアが開き、クリスがやってきました。



「ごめん!!遅れて!!

 僕が呼び出したのに!!」

「いいよ、いいよ。

 クリス、また先生から何か頼まれてたんでしょう。」



 息を切らしてきたクリスに私は平常心を装って、いつも通りに話しかけました。


「うん、その通りだよ、クレア!!

 クレアは僕のことよくわかってるね!!

 あ、そうだ!!

 今日ここに呼び出したのはね!!

 実は、クレアに話したいことというか聞きたいことがあって………」

「うん。予想ついてた。

 話したいことって何?」



 やってきました、やってきました。

 さてさて、クリスは何を話し始めるのでしょうか?



「クレア、今後悔してるでしょ?」



 ギクッという音が聞こえるほど、私は驚いてしまいました。

 流石、クリスなのです。

 よく私のことがわかっています。



「伊達に恋人だったわけじゃないからね。

 僕をなめないでよ!!」



 そう言って、クリスは悲しい顔で笑いました。

 私は、この人をこんな優しい人を傷つけたのです。

 そして、クリスは私に爆弾発言をしました。



「それで婚約のことだけど、このままでいいかなって!!

 えーと、だから僕たち婚約者のままでいませんか?ってことなんだけど………」

「は………?」



 私は耳を疑いました。

 私の聞き間違いでしょうか。

 今、クリス何て言いました。



「いや、だからね!!

 僕はクレアが好きだし、クレアは僕との結婚を望んでいるし!!

 これって婚約者っていう関係を壊す必要ないんじゃないかなって!!」



 バカ、なのでしょうか、クリスは。

 正真正銘のバカなのです。

 生粋のバカなのです。

 何故、こんなにも私のことを一番に考えてくれるのでしょう。

 何故、こんなにも私のために自分を犠牲にしようとするのでしょう。



「クリス、自分が何言ってるかわかってる?」

「もちろん、わかってるよ。」



 私は、信じられなくてもう一度言いました。



「もし、私達が結婚したとして後悔するのはクリスだよ!!

 本当にわかって言ってる!!」

「もちろん、全部わかって言ってるよ。」



 私は、クリスに悪いなとは思いつつ、その提案を承諾しました。

 クリスを傷つけるとわかっていても。

 だって、しょうがないのです。

 私の将来の為なのです。

 あぁ、どうして私はあの時、あんなことをしてしまったんでしょうか?

 今更、後悔しても遅いのです。

 やってしまったことは、変わらないのですから。



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