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クレアの独白  作者: こはぎ
第1章 クレアの独白
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気持ちの行く末

 


 この気持ちの正体がわかってからの一週間のことを、私はよく覚えていません。

 朧げに思い出せるのは、キースにいさまとステラかあさまの叫び声とスフィアとクリスの悲しそうな顔でした。

 こういう状態になった理由は、私にもわかりません。

 気持ちがわかった瞬間、急に胸の奥が苦しくなり、意識が戻ってきたときには一週間が経っていたのです。

 本当に不思議なのです。



 それと私には、さっきから気になっていることがあります。

 胸の奥にもう一人、自分がいるような気がするのです。

 多分、気のせいなのです。

 気のせいだと思うのですが………

 前世、悪魔、精霊、天使、神様、怨霊………

 可能性なんてあげたら、きりがありません。

 このことは、あまり深く考えたくないのです。

 理由なんてありませんが。



 私は、他のことについて、考えることにしました。

 さっきのことを忘れることが出来るように。

 そういえば、私は、どうしていたのでしょうか?

 ずっと私の世話をしていたらしいキリに聞いてみました。



「クレアはまるで別人のようだった。

 いきなり叫び出したり、部屋を飛び出したり、俺を殴ったり………

 本当に元のクレアが戻ってきて、助かってる。」

「わたしがキリをなぐったの?」

「いや………あぁ。

 でも、気にするな。

 あれは、クレアの姿を借りただけでクレアじゃない。

 その証拠に魔力が違っていた。」

「まりょく………?」

「あぁ。人の魔力って言うのは、同じものは絶対に存在しないんだ。

 あの時の魔力は、クレアの魔力とは決定的に違った。

 禍々しくて、でも純粋で、不思議な魔力だった。

 だから、クレアはもう気にするな。」



 あぁ、つながってしまった。

 多分、この一週間表に出ていたのは、胸の奥にいるもう一人の自分なのです。

 理由はわかんないけど、私を乗っ取ろうとしているのです。



「そのひとのなまえは、なに?」

「確か………えーと………みずはら………くみ、だったかな?

 変わった名前だよな。」



 その瞬間、私は唐突に理解しました。

 これは、私の前世の名前。

 ということは、つまり前世の自分が私を、私の身体を狙っているということになるのです。



「クレア、クレアどうした?」

「いいえ、なんでもないわ。」



 私は動揺していました。



「ごめんなさい、キリ。

 すこし、ひとりにさせてくれない?」

「何があったら、呼べよ。」



 そう言うと、キリは私の部屋から出て行きました。

 私は、いつか無くなるのでしょうか。

 私の意識も私の思い出も全て、全て。

 無意識のうちに涙が溢れていました。



「………こわい、………こわい。

 だれか………たすけて………」



 すると、いきなり腕を引っ張られ、私は抱きしめられていました。

 いつ私の部屋に入ってきたのでしょう?

 それは、クリスでした。



「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ、クレア。

 ぼくがクレアをまもってあげる。

 クレアのためなら、なんでもしてあげる。

 だから、クレアあんしんして、いまはおねむり。」

「クリス………、だいすき………」



 私は、安心したのか、泣き疲れたのか、そのままクリスの腕の中で意識を失ってしまいました。

 意識が覚醒したのは、それから3時間経った後でした。

 私は、とても驚きました。



「クリス、めのまえにクリスがいる。

 あれ、これはゆめかな?」

「ふふっ。ゆめじゃないよ、クレア。

 クレアは、ぼくのうでのなかでねちゃったんだよ!!」



 私は、顔が真っ赤になるのがわかりました。

 私は、一体何をしたのでしょうか?

 何も覚えていません。

 穴があったら、入りたいのです。



「そうだ、クレア。

 ぼく、こんやくしゃができるみたいなんだ。

 もちろん、せいしきのやつじゃないけど………」

「え、………え?」



 私の頭は真っ白になりました。



「こんやく………?」

「そう、こんやく!!

 ぼく、これからようじがあるからいくね!!」



 私は、呆然としました。

 目覚めたばかりの私の初恋は、ものの一週間で終わってしまったのです。

 私はただ、笑うことしか出来ませんでした。



「ははっ、はやいな、おわるの。」

「まだ、おわってないわよ!!クレア!!

 そのこんやくしゃ、どうもあやしいのよね。」

「え、スフィア、どういうこと!?」



 私達は、そこからある作戦を立てました。

 その内容は………今はまだ言わないほうがいいのです。

 その内、わかるのですから。





 さぁ、スフィアが私を呼んでいるのです。

 いざ、戦場へ向かいましょう!!

 私がスフィアと向かった先はルール家の客間でした。

 今日は、ルール家にクリスの婚約者候補が来ているのです。

 私は客間のドアをバンッと開けると、大声でこう叫びました。



「そこのミーラさん!!

 あなた、ほんとうはべつにこんやくしゃがいるでしょう。

 しかも、たこくのじきこうてい!!

 にげだしたことはべつにせめません!!

 しかし、わたくしのだいじなゆうじんをあなたのどうぐとしてつかうのはやめてください!!

 あなたはほんとうにかれのことがすきなのですか?

 しょうじきにおっしゃってください!!

 さぁ!!」



 婚約者候補のミーラは一瞬たじろぎましたが、それでも毅然として言いました。



「な、何を言い出すのかしら?

 この人は。

 突然、入ってきて無礼よ!!

 あんたみたいなブスより、私のような美人の方がクリスさんには、お似合いです!!

 邪魔しないで!!」



 こう反論したミーラさんにスフィアは確固とした証拠を突き出しました。



「このてがみが見えますか?これは、あなたがあなたのおじであるはくしゃくさまににあてたてがみです。

 ここには

『あのお坊ちゃんはとても騙されやすいわ、本当に。

 感謝しているわ。

 こんな絶好のカモを教えてくれて。』

 とかかれております。

 さて、これをどうせつめいしますか?

 ミーラさん?」



 焦ったミーラさんは、クリスの方を向いて上目遣いをしながら聞いていました。



「ク・リ・ス・さ・ん?

 私のこと、見捨てたりしませんよね?

 ね?」



 そんなミーラさんを冷たい目で見ると、クリスは



「ぼくのたいせつなひとたちをぶじょくするようなあなたのことをぼくはすきになることはないでしょう。

 あなたはぼくのげきりんにふれたのです。

 いいですよね、ちちうえ?

 やはり、こんやくしゃはこのかたではつとまりません!!」



 どうやら、クリスはミーラさんを婚約者にする気は無かったようなのです。

 チラリとスフィアを見ると、「えへへ」と笑っていたのです。

 スフィア、分かっていたなら、教えて欲しかったのです!!

 ともあれ、クリスに婚約者ができなくてよかったのです!

 めでたし、めでたしで終わるはずでした。

 次のクリスの言葉が無ければ。



「なので、ぼくはクレアをこんやくしゃにすいせんしようとおもいます。」



 は?今、なんと?

 私?私ですか?

 私がクリスの婚約者!?

 私が戸惑ってる最中に話はどんどん進んでいき、気づいたら私はクリスの婚約者(仮)になっていました。



 どうやら、これはクリスとスフィアによって最初から仕組まれていたことだったみたいなのてます。

 ですが?私の気持ちは?

 私の気持ちは、どうでもいいのでしょうか?



「すこし、すこしかんがえさせてください!!」



 私はそう言ってその部屋から逃げ出しました。

 頭が混乱して、当分は何も考えられなさそうです。

 そうして、私は一カ月の間ルール家を避け続けました。

 ルール家からの食事の誘いを親にお願いして断り、遊びに来たクリスとスフィアを私の部屋に入れないと、徹底的に避け続けました。



 しかし、遂に親に強制的に話す機会を作られてしまいました。

 何とか脱出しようと試みましたが、右も左も凄腕執事に囲まれてしまっては、逃げようがないのです。

 私は観念して話し合いにのぞみました。



「「クレア、ほんとうにごめんなさい!!」」



 話し合いはそんなスフィアとクリスの謝罪から始まりました。

 そして、クリスは正直に告白しました。



「ぼくは、はじめてあったときからクレアがすきだったんだ。

 まぁ、ぞくにいう『ヒトメボレ』ってやつなんだけど。

 だから、どうしてもクレアとりょうおもいになりたくて、こいびとになりたくて、こんやくしゃになりたくて、ふうふになりたくて………。

 だから、スフィアにたのんでこんなことをしてしまったんだ。

 ほんとうにごめん!

 いちばんだいじなのはクレアのきもちなのに………」

「わたくしもクリスのことがすきだよ?

 わたくしのきもちをむししてはなしをすすめていったのはきずついたけど、それはクリスなりにわたくしのことをおもってしたことなのでしょう?

 だから、べつにいいの。

 わたくしはきにしてないから。

 だから、わたくしとつきあってください!!」

「こちらこそ!

 おねがいします、クレア!!」



 そうして、私達はめでたく婚約することになったのです!!

 実際に婚約出来るのは、成人してからなのでまだ『仮』ですが。



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