039
先へ先へと爆進を続ける吉継たちB班へ追いつくため、一度終結をしたベアードたちA班は洞窟の奥へ駆け足で歩を進めていた。
その時であった、遠く彼方後方から動物やモンスターとは違う雄叫びが洞窟の中を反響させて聞こえてきた。
一行は振り返り、その正体を突き止めた。
オーギュスト
「英雄殿!!助太刀致す!!皆の者!俺に続けーっ!!」
ロバート
「父上…じゃなかった、団長に続け!!ゴブリン共には日頃のお礼をしっかりしてやれ!!」
戦士達
「うおー!!」
コオリマの街を中心とした街々を防衛するために作られた戦士団<黒曜の大盾>のオーギュストの姿があった。
オーギュスト
「英雄殿!雑魚と退路は任せられい!!」
ベアード
「団長頼んだ!!ボスはきっちり片づけて来るから!」
ベアードは拳を高く掲げて返事をした。
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マシュー
「なんだこいつは…。」
エーヴィル
「こんなモンスターゲームじゃ居なかった…。」
先行していたB班はとんでもない光景を目の当たりにしていた。
炭鉱夫のように掘削に勤しむゴブリン、それを運び出す巨人達。
少し離れたところでは魔法陣の上に採れた鉱石安置して呪文を唱える魔法使い系のゴブリン。
ミライ
「あんなにゴブ達を倒したのにまだこんなにいるの…?ましてや未知数なモンスターばかり…。」
吉継
「ノウアスフィアの開墾…か。」
玉藻
「あの感じは上手く言えないけど気味が悪い、早く片付けて帰ろう。」
吉継
「そうだネ、玉姐の言う通りだ。ギルマス達も今に来るだろうからまず僕たちだけで探りを入れよう。ゴブリンはミライさん、玉姐、一角に任せる、従者もそっちで回しテ! デカイのは前の三人に任せて。あの魔法陣は嫌な感じがする。」
5人
「「了解!」」
前線を押し上げる吉継、マシュー、エーヴィルの三人は次々と<洞窟巨人>を葬っていく。
しかしゴブリン達もただただ殺されるのを待っているわけではない。
<洞窟巨人>に<緑小鬼の百鬼長>や<鉄躯緑鬼> を組ませて、そう簡単に倒されない様に
対策を講じてきた。
吉継
「やはりゲーム通りにはいかないネ、こんな編成のエンカウントも記憶に無いネ。」
一角
「こっちもやばいっス!! <調教師>が隠れててオウルベアや〈魔狂狼〉なんかも出てきて…。」
吉継
「泣き事なんか聞きたくないヨ、落ち着いて自分のサブ職業見てみなヨ?」
一角はオロオロとしながらパーティチャットを開き念話をしながらメニュー画面を動かす。
サブ職業:魔獣狩り
吉継
「見た時のないモンスター、咽返る熱気、敵の呼吸や獣臭さ、これはリアルで今までのゲームじゃ無いかもしれなイ、だけどまだゲームの部分もあるだろウ?」
吉継は大災害初日のベアードやレナたちのアキバ近郊での話を思い出した。
メニュー画面から作られた料理は味が無く、サブ職業が料理人である巴が「手作り」をした料理には味があったことを。
歪んだボーダーラインの抜け道と言えばいいのだろうか、ゲームに準じている部分とそうではない部分の線引きが不十分なこの世界ではアイテム1つを取っても全く違う使い方ができるという点である。
サブ職業もそうである。このゲームが現実となった世界では只の飾りに過ぎなかったロール系サブ職業が別の形で有効的な手段になり得るとベアードやシゲンと話をしていたのだ。
吉継
「…つまりだ、僕の〈剣客〉のスキルが生きているのはもちろん、何かしら別のメリットや面白い事が出来るってことサ。 一角、いまこの場でスレイヤースキルを持つ君はこっちの切り札になるって訳サ。
一角
「オッス!!少しテンパってただけっす!!もう忘れてください!!」
吉継
「よし、一角は魔獣系統のモンスターを集中で排除。お嬢様方に傷一つ付けない様にお守りしてネ。」
玉藻
「お嬢様だってよ?ミライさん、お姉さんって呼ばれ慣れたからちょっと新鮮?」
ミライ
「…お母さんと呼ばれ慣れてたからそれはそれで恥ずかしい…(小声)」
玉藻
「え?何だって?」
吉継
「アハハ、もうすぐ他のみんなも来る、コオリマのドワーフも駆け付けて来てくれたみたいだし、あともう一息サ。」




