003
ベアード、シゲンの両名は旧アキバ駅へ向かっていた。
アキバの街の南東に位置する旧アキバ駅。
街の南端、プレイヤーが街からフィールドへ出るときに通るブリッジ・オールエイジスより東にある初心者向けダンジョン。
旧時代の交通機関の基地であったと言われる巨大建築物。
今ではその構内は老朽化しており、複雑な迷路型ダンジョンとなっていて、初級ポーションの素材となる草花が自生している。
初心者向けのクエストで必ず訪れるダンジョンであった。
「なるほど…この騒ぎじゃいくら初心者向けダンジョンでもその前でうろついてる奴はいないっと、そうゆう訳だ。」
「そゆこと。そしてここから線路を伝ってフィールドにも出られると。」
半ば諦め、そして呆れたように呟いたベアードにシゲンは意気揚々と答える。
「え?フィールドへは、あの橋からじゃないと出られないんじゃないのか?」
「ウィキの小技裏技の項目に有るんだが線路からも外へ出られるんだよ。」
「それは知らなかったぜ。」
「まあ、プレイ中そんなところに行く人もいないわな、旧アキバ駅だって低レベルの頃や、ポーションの素材集めにチマチマやるのが好きな奴くらいだろ?」
進んでいくと旧アキバ駅のダンジョンの入口に差し掛かった。
こちらを待っていたのか人影が見えてきた。
「シゲちゃんやほー!久しぶりやね!!あれ?ひさしぶり?」
「おうよ、レナもこんな状況だが、変わらずアホみたいに元気そうじゃねーか。
一応久しぶりでいいんじゃねーか?」
「んーアホは余計だよねー。」
「あいだだだだだ!!!! ふひまへん、ふひまへん…。ぐすっ…。」
余計なことを言ったシゲンのほっぺたを会って5秒でつねる魔術師風な女性。
「ほら、レナもやめなさい!」
「シゲが悪いんや!この怠慢軍師が!」
「ごへんなふぁい…ごへんなふぁい…。」
レナという女性を制止する巫女服の女性の姿があった。
「すみません、この子ったらこんなんでギルマスなんで困ったもんですよー。」
「まったくもう、シゲンこそこんな状況でも口はへらんようやなー。」
「いやいや、この明るさに助けられたこともあるんでいいんですよ。」
「助っ人ってのはレナと巴さんだったのか。」
大阪弁の魔導師風な格好の女の子はレナ。
メインは<妖術師>、サブは魔杖使い。
<石蛇姫の眼>という中初級者プレーヤーの互助ギルドを運営していて、レナはギルドマスターを務めている。
巫女姿のお姉さんチックな女性は巴。
メインは<神祇官>、サブは料理人。
巴はレナの補佐をしている。
「しょうゆ~こと~!」
レナは自分で言ったことに対してケラケラと笑っている。
この関西弁の自分で言ったことに笑っている女の子がギルマスで、
この礼儀正しい保護者のような女の子が補佐…?
相変わらずどう考えても逆じゃないのか?
リアルでそれを目の当たりにすると一時停止しそうになったが、
頭を働かせて通常運転に戻す。
「っと、このメンバーだと前衛ベアード、中衛レナ・巴、後衛が俺っつう感じだな。」
「それじゃあ向かうとしますか!」
一行はフィールドへ向かった。