029
翌日ハチドを出たシロエ達はグリフォンにて空の旅。
あと5日もしない間にアキバへとたどり着くだろう。
新しく知り得た仲間を見送り一行はもう1日休養を挟み、ハチドから海岸沿いを南下。
ヤマト本州最東端のトンドの岬、鉱山都市ポッストン、漁港トンロールを踏破して無事にタイハクの街へと戻ってきてた。
それからタイハク外城下街にて再度物資の調達を済ませて今度は現実世界で言う国道4号線を南下。
ワイストンの砦、家具の街ニホンマツ、そしてドワーフの街コオリマまで辿りついていた。
街に着くや否や宿の手配へ動く幹部一行。
数々の街を巡って来たので手慣れた動きであった。
淡々と受付の処理を行うシゲン。
しかしどうも上の空と言うか目線がこっち(自分)を向いていない。
自分を通り過ぎて後ろの誰かをジッとみているようであった。
なんだ?ドワーフの大地人はこんな感じなのか?
そうは思ったが口には出さなかった。
そのことを部屋に着いてから部屋の面々に話をすると思わぬ返事が返ってきた。
「俺さ、この街に来てからずっと見られてるんだけど。」
そう言を発したのはベアードであった。
「やっぱりか?」
「ドワーフが大半を占めるからなのか…さっぱりわからんがな。」
どうやら注目の的はベアードだったようだが、原因はわからない。
謎は深まるばかりであった。しかしそれをかき消すようにドアをノックする音が部屋に鳴り響いた。
「はいよー。開けてどうぞー。」
気の抜けた返事でシゲンは返答する。
「失礼する。」
聞きなれない声に部屋のメンバー全員がドアの方を向いた。
「こちらにベアード殿はいらっしゃるか?」
ぎぃっと不愉快な音と立てて開くドアの向こうには鎧を身にまとったドワーフの青年が一人佇んでいた。
部屋にいた全員が見慣れない青年の姿に驚いた。
ステータスウインドウと容姿で確認するに…
ロバート・コリンドン
ドワーフ
戦士Lv.25
所属 黒曜の大盾
どうやら大地人のようであった。
「俺だが…。」
そう言って立ち上がるベアード。
「父上、あ、いや、団長がお呼びだ。着いてきて貰いたい。」
「団長??その団長ってのは誰?なんで俺の名前を知っている?」
「この街を救った英雄の言葉とは思えないな、団長はオーギュスト・コリンドン。この街を守る戦士団の団長さ。」
「………、ちょっと待ってて。」
ベアードは身を返しシゲン、吉継と顔を合わせる。
「どう思う?アレか?電波系で怪しい人なのか?」
「何かのイベントじゃないのかイ?」
「黒曜の大盾…。」
頭をトントンと叩きながらゲーム時代の物語や設定を思い出す。
エルダーテイルの中に存在する物語、人物、設定…。
元より歴史好きなシゲンはそう言った冒険者の陰に隠れているストーリーを調べて研究することが好きであった。ゲーム内でこの類の趣味をもつプレイヤーのオフ会にも参加するほどあった。
「ふむ…。」
なにか思いついたようにベアードを見つめるシゲン。
「シゲ、何か思い当たるか?」
「まずだ…、黒曜の大盾ってのはドワーフの大地人の自衛組織だ。まずここで質問は?」
「特に。」
「無いネ。」
「よし。」
シゲンは坦々と話を続ける。
「クマの黒曜竜シリーズ装備、吉継の黒刀・虎牙破丸。共通点は?」
「「…?」」
「ここコオリマの街での受注クエストの上位報酬だろ?」
「確かに。黒!!」
「そうだネ。」
「言っちゃあ何だが、北のクエストや北の町々は一番出入りしている自信がある、俺らのギルドは。一番出入りしてたりクエストこなしている奴が英雄様として崇められたってオカシクはねえんじゃねーか?」
「それが俺だってか?」
「シゲンのその推論、面白イ。」
「そーゆーこった。いいじゃんいいじゃん、こっちにきて碌にイベントなんかやってないんだし行ってみようぜ!」
「泳汰達はどうするんだよ!」
「俺が話付けとくからさ!」
「ったく軍師様の思い通りみたいでやだなー。」
ベアードはまた向きを変えて訪問者であるドワーフの方を向いた。
「お話はお決まりかな?」
「あぁ、その団長の所へ行こう。他のメンバーも連れて行っていいか?」
「あぁ、もちろん。英雄のお仲間とあらば。」
一行は荷解きを途中にして促されるまま団長と呼ばれる人物の元へ向かった。
ヤマト本州最東端のトンドの岬→本州最東端魹ヶ崎 岩手県宮古市
鉱山都市ポッストン→岩手県釜石市
漁港トンロール→宮城県石巻市
ワイストンの砦→宮城県白石市 白石城
家具の街ニホンマツ→福島県二本松市
ドワーフの街コオリマ→福島県郡山市(公式設定)
コオリマ以外創作で名づけました。




