026
ギルマスの敗北にたじろぐブリガンティアの面々。
そこにロンダークの声が響き渡る。
「ヒーラー回復量上げろ!」
ロンダークは茂みに隠れているヒーラーに回復を促すが音沙汰がない。
「見えているプレイヤーに術者がいないのに、回復がされるのはあまりにお粗末ではないでしょうか?」
「そして無防備、無警戒。やってくれと言わんばかりでござる。」
茂みから現れたのは外で待機をしていた白眉と蔵人。
白眉の隣から現れたスライムの中には気絶したヒーラーが飲みこまれていた。
蔵人は状態異常を叩きつけて行動不能の状態となっていたプレーヤーを引きずって登場した。
2人は伏兵要員の割り出しと無効化の任を与えられていた。
「俺たちの勝ちです。」
ブリガンティアの面々にそう言い放ち仲間たちの方を向いた。
ロンダークも力なく崩れた。
「糞野郎、俺様のHP1だけ残してるなんてあるか!どんなイカサマしあがった!」
デミクァスは力尽き地面に伏せている状態で声を荒げた。
「イカサマじゃないです、これ<強者の余裕>ってアクセサリーアイテムです。本来はラストアタックボーナス調整用に敵対象のHPを1残すってアイテムです。あと即時復活の<インドミタブル>もあれだけじゃ不安だったので<気合いのハチマキ>で即時復活の確率を底上げしていたんです。」
「小細工しあがって…」
「なんと言われても構いませんが、この世界に来てススキノでふんぞり返っていたあなたとは違うんです。この世界に来て特技の有用性やアイテムの価値や使い道が変わったものもたくさんあります。それらの変わってきた事象を見て見ぬふりをしてきた。力任せに暴力を振りかざしてきたそれがアンタの敗因です。」
そう言い切った一角は向きを変えて仲間のもとへ歩み寄る。
「一角、アキバに行こう。」
「オス!ふつつか者ですがよろしくお願いします!!」
泳汰は笑いながらそれを優しく迎え入れる。
「俺たちも帰ろうか。」
「みんなが待ってるヨ。」
「そうすっか!!」
そういって召喚笛を鳴らし各々呼びだした召喚獣に乗り南を目指した。
■□■□■□■□
ススキノ脱出隊一行はルーキッドの街を経由してムッツへ辿り着いた。
ムッツで先に脱出していたもの達と合流。
メガロドンの面々はススキノの閉鎖的空間から抜け出し、いままで見ることのできなかった広い空と青い海を眺めて溜め込んでいた悪いものを吐き出すように道中の外の世界を楽しんでいた。
ムッツからは〈オソの霊山〉を横目に南下、貿易都市ハチドへ来ていた。
今日から数日滞在し、物資の補給を済ませ引き続き南下。
久々にふかふかのベットで寝られると低年齢層プレイヤーや女性プレイヤーは活気に沸いていた。
場所は宿屋、6人部屋を割り当てられたノースオーガ一行。
日はまだ高く、市も出ている。面々は荷をほどき出かける準備をする者もいれば休む準備をしているものもいた。
そこへシゲンが突然口を開いた。
「一つ提案いいか?」
「おう、どうした?」
「飯の件なんだけどさ。やっぱりほら、ふやけたせんべいじゃ味気ないだろ?あの料理人が作成してって奴。タネはともかく、おいしい御馳走を食べて元気になるってのはどうかな?」
「うーん…。吉継はどう思う?」
「そうだネ、実を言えばそろそろ味のある物を食べたいのが本音。それに鮫の彼らだって同じだろウ。幸い八戸は…あ、ハチドは魚介類が豊富で食材には困らない、みんなでおいしいものを共有するのも悪くないんじゃないかナ?」
「よし、じゃあ俺は泳汰達に伝えてくる、2人は食材調達と場所のセッティング頼んだ。」
「了解!美味いもん買ってくるぜ!」
「場所は任された、5月終わりの青森なら上手くいけば桜が見られるヨ。花見でバーベキューなんかいいじゃないカ。」
そういって手分けをして活動を始めた。
ルーキッドの街
ルー(ムオー)キッド→ルーム(部屋を室と変換)、オーキッド(蘭)
北海道室蘭市です。無理やりです。
貿易都市ハチド→青森県八戸市
すみません。




