023
一行がススキノの門をくぐり抜けると待ち構えていたのは体躯の良い大男。
灰色のローブをフードまでかぶる魔術師。
その他大勢のガラの悪い冒険者。
「お、見送りか?デミ。」
しらじらしく言葉を発したのは泳汰だった。
「何寝ぼけたこと抜かしてやがる!鮫野郎、今日もお前を神殿送りだ!」
声を荒げ、今にも飛びかかって来そうなデミクァス。
「寝ぼけてんのはお前だ。後ろから仕掛けて神殿送りにして喜ぶなんてレベル低いんじゃねーか?」
「なんだと!?鮫なら鮫らしく海に沈めてやるよ!」
「あー海いいねー。自分で海に入りたいから道空けてくれる?」
「俺が沈めるってんだろ!」
「それは断る、野郎と海でキャッキャッウフフの趣味はねえよ。」
「遊ばねえよ、一瞬だからよ。」
「そうだな、お前が神殿送りで一瞬と…。話が早くて助かるわ。」
「あぁ?決めたぜ…ズタズタのミンチにして巨人の餌にしてやるぜ。」
「おー?やるか?正面からでも戦えるのか?」
泳汰が言い終わらないうちにデミクァスから拳が飛んでくる。
それを斧の柄で受ける泳汰。
「相変わらず減らねえ口だ、鮫野郎。」
「そのまま返すぜ、肉団子。」
一旦距離を取って構え直す2人。
「そっちが来ないなら俺から行くぜ!」
気の早いデミクァスが先に仕掛けてきた。
「〈ファントムステップ〉!!」
デミクァスが特技で右に左にフェイントを入れながら近づいてくる。
「来い!〈クロス・スラッシュ〉!!」
「そんなん当たるか!!〈ワイバーンキック〉!!」
待ち構えていた泳汰のクロス・スラッシュをワイバーンキックにて回避。
泳汰の横を通り過ぎて後ろに回り込む。
「へっ!後ろがガラ空きだぜ!〈オリオンディレイb…」
泳汰はわざと背中に隙を作ってデミクァスを誘い込んだ。
「同じ手に何度も引っかかるか!!〈オンスロート〉ォォォォ!!!」
不意を突かれたデミクァスは防御動作に入ることができない。
泳汰はそのまま大きく得物の大斧を振りまわしてデミクァスに斬撃を叩き込む。
「あースッキリした!選手交代!!」
「了解っ!一角には悪いが俺らも腹が立ってんだ先にやらせてもらうぜ。」
後に続いたのは〈暗殺者〉のマシューだった。
「デミ、いままで世話になったな。釣りはいらんとっておけ。〈オーブ・オブ・ラーヴァ〉。」
マシューは音を立てず物凄いスピードでデミクァスに接近。
接近しながら〈魔盗賊〉のスキルで〈魔術師〉の特技を発動する。
「ヒーラー!デミクァスに障壁と回復を!これは決闘でもなんでもない、一方的な殺戮だ!!」
あっけに取られて茫然と見尽くしていたブリガンティアの面々も参謀のロンダークの声に動き出す。
「ちっ!黙っててくれたらいいものを。みんな手筈通りに!」
敵の動きにシゲンも仲間へ指示を出す。
「ふっ、ロンの奴め、いまさら気がついても遅いぞ。〈サンダーボルトクラッシュ〉。」
マシューは装備しているダガーに電撃と麻痺の効果を付与する。
「ぐっ…、糞野郎どもが…。」
デミクァスは泳汰の放ったオンスロートのダメージにまだ少しふらついている。
マシューの接近を察知しているものの回避動作には移れそうにないくらいダメージを受けている。
障壁のエフェクトとヒールのエフェクトが見えるもののダメージが残っているのは明白だった。
「遠慮なく行くぞ、デミ。〈アサシネイト〉。」
「ぐっ…、雑魚のくせに生意気な…。」
障壁に阻まれ大ダメージを与えるまでに至らなかったが、累積されたダメージは見るからにデミクァスの大半のHPを奪ってた。
「ヒーラー!!もっと回復だ!伏兵部隊も援護しろ!!」
デミクァスは隠していた茂みに隠していた伏兵部隊にも自身の回復を指示した。
「後は任せるぞ、一角。」
「オ、オスッ!!任せてください!!」
一角は緊張しながら返事をした。




