022
ここはススキノの街にある一番大きな酒場。
ススキノに籍を置く悪徳ギルドブリガンティアはこの酒場を不法に占拠し屯していた。
「デミクァスさん!鮫が動きました。見慣れない連中も一緒です、サイクロプスも一緒のようです。」
「あぁ?一角もだと?あの野郎、ノコノコと…。」
酒場に走り飛び込んできたプレイヤーの言葉に身体を震わせるギルマスと呼ばれた大柄な<武闘家>の男、名はデミクァス。
「まだアイツらを神殿送りにし足りねえ…。今まで散々邪魔されてきた分のお返しをしてやらねえとなあ!!!行くぞお前等、なぶり殺しだ!!」
デミクァスが酒場を飛び出すと他のメンバーもそれに続いた。
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「それじゃぁ手筈通りにな、十中八九そうなるだろうから。」
『御意。白眉殿にもそう伝えるでござる。』
そう言ってシゲンは念話を終える。
相手はススキノの街の外で待機している蔵人と白眉であった。
「こっちも手筈通りな、一角に花を持たせてやろうじゃんか。参謀の妖術師はベアード、敵の大将は一角、残りの三下は俺らが相手と。」
「スミマセン、あの人にわかってもらいたくてこんなわがままを聞いてもらって…。」
話を聞くに大災害にてトチ狂ったデミクァスに一発ブチ込んで目を覚ましてやりたいとのこと。
実力が付いてきているかはともかくその心意気に胸を撃たれた一行はそそくさと逃げる作戦から悪者に熱いお灸を据える方向へ作戦を変えた。
元よりノースオーガの3人はやられっぱなしは性には合わずこうなることを望んでいたところはある。
「男には越えなくちゃならない壁があるってもんよ!」
「ってなんでドヤ顔でお前が言うんだよ。」
ベアードの冷静なツッコミがシゲンへ入る。
「うるせー!吉継はわかるよなー!!」
「ウーン…、シゲンが壁を乗り越えタ?いやいや、乗り越えてないでしょウ。」
「うおい!!!」
「だって紙装甲だシ、吹けば飛びそうな防御力だシ。」
「関係ないわ!」
「あんた達よくこの状況でそんな漫才してられるわね…。」
口をはさんだのは暗い表情を見せるミライであった。
街中を足早に歩を進めるがすでにブリガンティアには捕捉されている。
一行の後ろにはぞろぞろと追跡部隊が着いてきている。不安なのも無理もない。
しるきーに至っては顔色が悪い。よほどの不安と緊張なのだろう。
「深刻な時に深刻な顔したって始まらないだろ?」
歩きながら頭の後ろで手を組んで相変わらずズケズケとした物言いで言い放つシゲン。
「ミライさん、俺も怖いさ。だけどみんなで力を合わせてここを出よう。そしたらきっと何かが変わるから。」
「…そうよね、アタシったららしくなくてごめんなさい。」
シゲンの発言と泳汰のフォローによって考え直すミライ。
「もーミライさんはしるきーちゃんのお母さんなんだからぁ~」
「そうそう!ウチのギルドの肝っ玉母さんなんだからぁ~」
「お、お母さんって…、あたしはまだこんな大きな子がいるような年じゃないわぁ!!」
ミライはシゲンと泳汰の息のあった(?)掛け合いにいつもの元気を見せる。
しるきーもこれをみてクスリと笑った!
「シゲ、作戦は成功だ、撤退じゃ!」
「合点承知!!」
スタコラサッサと泳太とシゲン、それを追いかけるミライ、またそれを追いかける一行。
「シゲには頭が上がらないよ。」
「どうしてだイ?」
小走りをしながら話をするのはベアードと吉継。
「アイツがいれば話が勝手にすすんじゃうだろ?俺なんかそんな引っ張る力ないなぁってさ…。」
「ギルマスも馬鹿だナァ、シゲンが盛り上げてギルマスが決めル。それだからなりたってるのサ。」
「ははっ、そう言ってもらえて何よりで。」
ベアードは少し照れくさそうだった。
「まぁ、今回は僕も決めるヨ。」
「???」
「なんてったって僕の仲間をいじめるような奴ら、只じゃ置かないよ…。」
吉継は魔法鞄に手を突っ込み、得物を決めながらそう言った。




