019
深夜…
明日の手筈や作戦を話し合い終えたノーズオーガ一行は宿屋の一室を宛がわれ、
久しぶりのベットでの睡眠を楽しもうとしていた。
白眉や蔵人はすでに就寝、ベアードと吉継は宿屋から外につまみ出された二人を覗き込んでいた。
「あ、シゲ、まじめに正座してる。」
「普段ふざけていても根はいい人だからネ。」
「スキンヘッドの彼もそんな経緯があったとはね…。」
「その点は明日にでも謝らないとネ。」
翌朝
ベアード達が1階の大広間へ向かうとつまみだされた二人が楽しそうに会話をして騒いでいた。
「昨日とは打って変わって仲が良くなってル?」
「あの後色んな事話したらよう、すんげーいい奴でよう…。」
シゲンの話を聞くに、どう見ても悪役の彼・一角は元ブリガンティア幹部であるが、大災害以降のギルドの傍若無人な振る舞いに嫌気がさして脱退を希望。
脱退申請を出しに行く最中、メガロドンがブリガンティアに襲われているのを黙ってはおけず援護。
次の在籍ギルドを探していた一角はこの縁からメガロドンに籍を置く形となっていた。(ギルド会館での手続きは未遂の為、在籍はまだブリガンティア。)
そこにメガロドンのアキバ行きか決まり先発隊としてムッツに来ていた。
「ゲームだかよくわからん世界に来て、まず自分のことより他人であるギルマスの「ヒャッハーッ!」な事を諌めるなんて出来た野郎だろ?」
「ほーそれは関心だネ!」
「あの騒ぎで他人の心配出来るなんて…、なんで君はそんなギルドに?」
「ブリガンティアって悪徳ギルドっちゃ、それまでですがギルマスのデミクァスさんって武闘家でもそれなりに有名な人でスキルを磨きたくてそこに所属していたんです。」
「なるほどねぇ…。」
一同うんうんと頷いていた。
「さぁ、お話はここら辺にして朝食としましょう。今日は忙しくなるわよー!!」
後ろの方からミライさんの声が聞こえたかと思えば、ずいぶん前から椅子に掛けて話を聞いていた雰囲気である。
「あっ、一応自己紹介っす!」
一角は思い出したようにそう言った。
「一角っす!<武闘家>やってます!リアルでも格闘技かじってる大学生です!よろしくお願いします!」
「あのチンピラオーラが一転、清々しさすらある…。」
「容姿が決められるこの世界なら尚更かもネ。」
一角は続けて話した。
「種族はドワーフ、サブは魔獣狩りです。」
「ドワーフだけどその身長は?」
「課金アイテムで変更しました、始めたころにパワフルなドワーフに憧れたんですが身長小さいのが気になってつい…。」
「なるほど、そんなものを売り出してた時期も確かにあったな。」
「今回の脱出作戦、お手伝いさせてもらってもいいですか?」
「おう、こっちも大歓迎さ!よろしく頼むぜ!」
一方、ススキノ…
「ミライから朝の定時報告、予定通り今日こちらに到着だそうだ。」
今回の脱出作戦の依頼人、泳太はそう言った。
「流石はベアードさんとこ、行くとなったら速いぜ。へーはシンソクをタットブって感じ。あ、猫の旦那にも最後の挨拶していかないとな。」
そう言ったのは<暗殺者>のマシューだった。
「兵は神速を尊ぶ、な?音で捕えすぎだろう。」
「あのー私は何をしたら?」
若干自信なさげに訪ねてきたのはしるきー。
ここ一ヶ月以内にエルダーテイルを始めた初心者だった。
先の脱出部隊の一人であったが逃げ遅れ幹部メンバーと行動を共にしていた。
「じゃあ身辺整理かな?荷物は最小限で!」
「わかりました、準備しますね。」
「あぁ、お願いするよ。」
作戦決行まであと数時間まで迫っていた。




