017
シゲン・蔵人の二人は無事に近隣都市の偵察を終了し、そのままオウウの町にて夜を迎えた。
翌日、オウウからはシゲン組が、タイハクからはベアードがラワロールの街へ向かった。
前日から到着していた吉継と合流した。
「やあ、予定通りの到着だネ。」
「おうよ、ってなんだ?ずいぶんニコニコじゃねーか。」
ニコニコの笑顔で吉継が出迎えてきた。
「ふふふっ、何でもないヨ♪」
「まぁいいや…。今日はここから一気に本州最北端、こっちで言う〈最北漁港ムッツ〉に向かう。そこでミライさんと合流する手筈になっている。」
「ここからムッツか、直線距離でも結構あるな。」
「直線?ティアストーン山脈の<鋼尾翼竜>はどうする気だイ?」
「そこで問題です。ジャジャン!この場合の適切な方法を選べ。
①、このまま山脈上空の<鋼尾翼竜>の集団に密集隊形で突破。
②、<緑小鬼>のウヨウヨいる山脈周辺の森林地帯を踏破。
③、疫病持ちの<鼠人間>の蠢く地下通路・パルムの深き場所を突破。
④、飛行召喚獣にて三陸沿岸沿いまで出て海辺に沿って北上。」
「…了解。」
「全然4択になってないネ…。」
①は危険が多すぎてナシ。
②、③はどう考えても1日で突破できないのでナシ。
あからさまにわかる4択にてムッツまでの経路が判明した。
「OK?一応、空中戦に備えてみんなも遠距離攻撃できる装備で行けたらいいと思う。」
「了解。」
「それじゃ出発は30分後、身支度頼むわ。」
みんなが一斉に準備に取り掛かるとシゲンの頭の中でベルが鳴り響く。
「っと、念話か。」
メニューウインドウに浮かぶ文字。
古い友人からの念話であった。
「こちらシゲン。お久しぶりだな。」
『お久しぶりです。今よろしいですか?』
イイも何も、相変わらず礼儀正しいいい子だな。
「いいぜ。」
『大災害に巻き込まれていることは確認しておりましたがご連絡が遅くなり大変申し訳ございません。』
「なぁに、あんだけのことがあったら念話の1つや2つ気が回らず掛けそびれることもあるって!そんで、急にどうしたんだ?」
『さっそくですが、北に拠点を置くシゲンさんにお願いがあります。アキバ以北からススキノまでの詳細な地図はお持ちではありませんか?』
「要は東北地方と北海道南部の詳細な地図ってこった?」
『そうです。』
こんな時期に同じくススキノか…。
相変わらず何かに巻き込まれたか、人助けってところか。
シゲンは心の中でそうつぶやいた。
「あるにはあるんだが…。すまんがエッゾまでは無いな。あっても本州分までしかない。エッゾのエリアは作らせてなくてな。」
『そうでしたか…。』
「今アキバか?ギルドホールに来てくれれば渡せるようにしておくが?」
『よろしいですか?図書館で地図は模写しましたが詳細地図は見当たらなくて。』
「そかそか、遠慮無く使ってくれ。」
『はい、ありがたく。』
「あいよ、こりゃ貸しだな! なーんて!」
『シゲンさんにそんなこと言われると後で搾り取られそうで怖いですね。』
「冗談だって、なんだ、まぁ、気をつけてな。」
『はい、ありがとうございます。シゲンさんも道中お気をつけて。』
…コイツ、アキバにいないことを察して言いおる。
むむむ、流石は参謀キャラ。
「どこからだ?」
ベアードがそう尋ねた。
「なぁに、古い友人さ。」
「そっか、さぁ行こうぜ軍師殿、今日はハードなんだからな。」
一行は再び空へ飛び立った。