016
タイハク外城。
タイハク地方領主の居城・タイハク雲城を取り巻く、堅牢な城壁を併せ持つ大きな城下町。
実戦を想定した堅牢な山城だが、「一体何と戦うつもりなのか」「時勢にそぐわぬ」と揶揄されることもあるがゲームとしては気分を盛り立てるモノとは思っていたが一同はその迫力に驚いていた。
アキバの城壁とはまた違う雰囲気を醸し出した城門を一同は恐る恐るくぐり抜けた。
眼前に広がる城下町、商店街を見渡すと商人と旅人が売買を行う威勢のいい声が聞こえてくる。
「あぁ、ここに来るといつも道具屋さんがあってポーション買ったっけ。」
「あの武器屋ではよく金欠になった時に武器売りに来たっけ。」
と思い出が蘇ってきた。
行き交う旅人、声を張り上げてくる商人を脇目にギルドホームに向かった一行は無事に辿り着くことができた。
「変わって無かったな。」
「あぁ、んまぁなにかあるとすればやっぱりここもアキバみたいに大地人増えてたな。」
「やっぱりNPCなんかじゃなくて生きているんだネ。」
「普通の人間だよな、やっぱり。」
いままでゲーム時代は気にも留めていなかったNPC、大地人の存在を今一度噛みしめて感じた。
「さーて、その摩訶不思議な大地人観察に行きますよ。」
場の空気が沈みかけたところにシゲンが言を発した。
「お、もう出るかイ?」
「あぁ、モガミと行けたらオウウまで行きたいかな?」
「それじゃ、僕も出よウ。ギルマス、手筈通りラワロールで明日待ってるヨ。」
「本当に一人で大丈夫か?」
「何を言ってるの、僕なんかより隣にいる紙装甲の心配しなヨ!」
「って俺かよおおお!!」
一同はクスリと笑った。
「僕は大丈夫、戦闘になっても、ポーションも多めに持ってきたし逃走用に目暗ましも持ってきたかラ。」
「了解、明日近くまで行ったら念話するよ。」
「それじゃ一旦解散で!」
「「「おー!!!」」」
数分後…。
「よし、俺と蔵人はまずモガミに行ってくるわ。留守番頼んだぜ。」
「了解!何かあったら念話頼むぜ!」
「(あぁ、先輩と一緒にならなくてよかった…。一緒にいるとコキ使われるからなぁ。)」
「白眉!今お前俺にパシられなくてよかった。みたいな顔したろ!」
「ぎくっ!!」
「お前もモガミ行きに巻き込むぞ!」
「その辺にしといてやれよ…。」
「…。(巻き込む?某は有無を言わさずモガミ行きなのに。ツッコミたいが口が裂けても言えん。むむむ。)」