015
ススキノからの念話の翌日、シゲンは救出作戦の内容をベアードに伝えた。
そこからベアードは泳汰へ念話を飛ばした。
ススキノ救援の旨と作戦を伝えると、泳汰は念話で音割れするくらいの大きな声で感謝を述べた。
それからはと言うもののギルドメンバーの一部は遠征準備に追われた。
主要メンバーである3人も、遠征メンバーの選出から移動ルート、荷物の準備に大忙しであった。
遠征メンバーはベアード、シゲン、吉継、白眉、それから
<北の鬼>の偵察班の蔵人の5人。
留守を預かるのはギルド最後のレベル90であるヴォルグが務めることとなった。
「っと前説はこんなんでいいか?」
ゴロンと横になってシゲンはダルそうにそう言った。
「なんの話でござるか?軍師殿。」
「いいや、なんでもない。手綱を頼んだわ。寝るから。」
「御意。」
蔵人は手綱を強く握り締めた。
一行は空を飛んでいた。
アキバを出て2日、現在遠征メンバーはタイハク外城へ向かっていた。
現実世界であれば仙台市に相当するタウンエリアは<北の鬼>の北の本拠地でもあった。
東北の在住者、出身者のみで構成された<北の鬼>。
ホームタウンであるアキバにギルドなどを置くものの、東北地方で受注可能なクエストや小さなレイドを請け負うにももう少し北に近い本拠地が欲しいということで、エリアの中でも大きな都市、タイハク外城に仮設ギルドホールを持っていた。(エリア購入した建物。機能的には特になく、ギルドのの集会所と倉庫。)
また、アキバなどのギルド会館や大神殿があるようなホームタウンに比べて、地方のタウンエリアの購入金額が安く、自分の家に近い町や村に箱庭感覚でエリアを購入しているプレイヤーも少なくない。
「軍師殿、もうすぐ仙台…いや、タイハク外城に着きますぞ。ギルマスや吉継殿が叫んでおりますが…。」
「あー、聞こえてるよー。人の安眠邪魔しあがって…。」
目を擦りながら眠そうにシゲンは起き上った。
「こらー!怠慢軍師!手綱を蔵人にブン投げて寝るんじゃねー!」
「僕だってそのドラゴンで寝てみたいヨ!」
「いや、そこかよ!」
「だってシゲンの<蒼天龍>大きくてサ、寝心地良さそうで…。<鋼尾翼竜>じゃ寝るスペースが無くテ…。」
「どんだけ居眠り運転したいんだよ!」
「人を起こしといて漫才すな!! んで、もう着くって?」
タイハク雲城・外城は遠目に見えるくらいまでに近づいていた。
「あぁ、今日はここで一泊だろう?」
ベアードが予定の確認をする。
「そうだな、ちょっとタイハク近郊の大きな街、モガミとかの様子も見てきたいからな。」
「了解、だったら僕はこのままラワロールの街まで行くヨ。時間もあるし、家もあるかラ。僕はそこで一泊するよ。」
「よし、んじゃ一旦降りて馬で街まで行こう。各々の移動は(仮設)ギルドホームに着いてからだ。」
そう言ってベアードは<鷲獅子>の高度を下げた。
それに追いかける様に<蒼天龍>と<鋼尾翼竜>
も高度をさげた。