014
シゲン・白眉の二人がギルドホールへ戻るとベアードと吉継が待ちわびていた。
「遅いヨ!シゲンどうせ道草食ってたんでショ!」
「俺はヤギか!順当に回ってこの時間だよ。」
「おっとそれは失礼、でどうだっタ?」
「可もなく不可もなく。みんな口にするのは食べ物の事とアキバの雰囲気かな?」
「やっぱりか。こっちもちょっとあってな。ススキノに遠征に出たい。」
「ほう、こりゃまた…どうしたんだ?」
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シゲンと白眉がギルド周りをしていた頃…
ベアードはギルド運営の処務に追われていた。
そんなとき一本の念話が入った。
頭の中で呼び鈴が鳴る。
「はぁ~。今度は誰だよ~。」
大災害以降引っ切り無しに念話が鳴り響く。
独り作業を進める執務室でついつい小言が漏れる。
意識を集中させてメニューウインドウを確認する。
そこには昔見慣れた人物の名前が表示された。
「はいはい!こちらベアード。」
『熊さん!久しぶり~!!!!!!!』
電話で言う声が大きすぎて音が割れる感じ。
念話でもあるのか…と思わず考え込む。
「泳汰じゃないか!おまえも大災害に巻き込まれてたのか。」
『もちのろんさ!こんなイベント逃すわけないっしょー!』
念話先の主は〈D.D.D〉時代の戦友・泳汰だった。
泳汰は第零師団四番隊のリーダーで、いわゆるお隣さんであった。
戦い方は全く違うものの、同じ<守護戦士>、同じ時期に〈D.D.D〉を抜けてギルド<深海の大鮫>を結成したということもあり境遇が似ていて仲がよかった。
「それもそうだな、それでどうしたんだ?急に念話なんて。」
『熊さん!頼みたいことが…。』
「改まってどうした?」
『ススキノまで迎えに来てほしい!』
「え?…えっ!」
『ススキノまでお迎えにきて!』
「俺はアッシー君じゃないぞ。」
『そういうことじゃなくて!』
「それに泳汰一人じゃないだろ?」
『そうなんだよ。ウチのギルドのメンバーもお願いしたいんだけど…。』
「ちょちょちょ!!!待て待てお前んトコ20人くらいいなかったか?」
『そうなんだけどさっ、このままススキノでは活動できないからアキバに移動したいんだ。』
「どういうことだ?」
泳汰の話によるとススキノはアキバより格段に治安が悪く、PKや大地人への暴行大地人を奴隷扱いして人身売買の真似事までに発展しているらしい。
ギルドホールや購入エリア、宿屋のエリアにいれば安全は確保されるがススキノから出ようとする者には容赦なく攻撃を仕掛けてくるという。
「わかった。善処はする。また連絡するよ。」
『了解。熊さんだけが頼りなんだ、頼んだよ。』
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「なるほどねぇ…。ススキノでそんなことがねぇ。」
事の顛末を聞いてシゲンが唸る。
1人や2人の救出であれば飛行できる召喚獣や脚の速い馬なんかで向かえば済む。
しかし、20人となれば話は変わる。
20人のレベル層にも寄るが低レベル者に足並みを揃えての逃避行となる。
ススキノでの悪徳ギルドがどこまで追撃をしてくるかと言う点も重要である。
帰りの移動の事だけではない。ススキノからの脱出も大問題である。
1度に大人数の脱出は不可能である。内外からの息の合った行動がカギを握る。
「20人かぁ…。戦力の確認をしよう。泳ちゃんとこは主力はみんないるって?」
「あぁ、泳汰にマシューにミライさんは健在らしい。」
「でもあとは初級中級者って話だヨ。」
「う~ん、あと2、3人腕利きがいれば駒足りんだけどなぁ~。」
ウンウンと唸りながら頭をフル稼働させる。
「レナとエーヴィルの所にも援軍頼もうか…?」
「いや、他には他の都合があるだろうし、あいつら心配して着いてきそうだから黙っておこう。」
「一理あるネ…。」
おもしろいことに目が無いレナとエーヴィルのことだからきっと
「アタシも(俺も)着いてく!」 となることは予想できた。
「よし、作戦は俺がちょちょいっと練っておくわ。」
「了解、では作戦は軍師殿にお任せして」
「今日はもう遅いから解散だネ。」
3人はギルドホールを後にした。
※ちなみ今までに登場したギルドの大災害時在籍数
<北の鬼> 45人
<石蛇姫の眼> 35人
<闇夜の魔狼> 30人
<深海の大鮫> 25人