011
激しい光弾の嵐。
土煙が立ちこめて視界が悪い。
羽を羽ばたかせる音。
「ん~、シゲンも変わらずやってるネ。」
「すごい音がしたと思えばこういうことですか。」
まばゆい光と光弾の炸裂する音を聞きつけてベアード達と同じく巡回をしていた吉継と
<石蛇姫の眼>のナンバー3の音雨が<鋼尾翼竜>が駆け付けてきた。
「うーん、戦況は僕が出るまでもないけど、いい所見せないとネ。」
「戦いますか?では降りましょう!」
「いや、このままでいいヨ。手綱を頼んだヨ。」
「え、まさかここから飛び降りるんじゃ…。」
「そのまさかサ。なあに、冒険者の身体は強いから大丈夫。」
躊躇なく<鋼尾翼竜>から飛び降り、ごそごそと魔法鞄を漁る。
「ふふ、僕もこれの試し切りをしようかナ。」
□■□■□■□■
「ちくしょう!ずらかるぞ!!」
PKリーダーの武士が生き残っている武闘家、暗殺者、盗剣士に指示を出す。
「あいつら逃げるぞ!」
「あいよっ!<ナイトメアスフィア>!」
PKの移動速度がガクンと落ちる。
「逃がさないよ~!」
上から聞こえる聞き覚えのある間延びした声。
「ヒーロー参上~!」
着地と同時に武闘家を葬る。
その手には大きな斬馬刀。
「んーいい仕事してますねぇ。ナイス足止め、そしてこの刀。」
吉継はニコニコしながらシゲンの足止めを褒めて、
自身の持つ刀の切れ味に満足げである。
「別にお前の為にデバフしたんじゃねーわい。」
口を尖らせて呟くシゲン。
「で、僕の相手はまだいるかナ?」
吉継は身を屈め斬馬刀を担いで戦闘姿勢に入る。
「くそう!!」
「せめて一太刀!!」
「んー全然だネ。レベル1からやり直すといいヨ。」
そう言いながら避けては一太刀、避けては一太刀。
暗殺者と盗剣士を一撃で葬る。
「お、思い出した…。
五叉槍と反射する盾持ち守護戦士
軍師面したスプリンクラー付与術師
全身包帯の斬馬刀武士…。
こいつらノースオーガとか言うイロモノギルドの3トップじゃねーか!!!」
「俺らも有名なもんだ。」
イロモノと言う発言には心の中で引っかかるものの思わず言葉が漏れる。
「有名も何も
キンキラまぶしい城を模した鎧と盾は「動くラブホテル」、
スプリンクラーなんてぶっ飛んだビルドを作った張本人は「ぶっ飛び軍師」、
そしてリアルアンデット武士の「ミイラ武者」。」
「なっ!ラブホテル!!!???」
「どこがぶっ飛んでんだよ!!」
「そんなセンスのない二つ名はいらないナァ。」
「くっそ!くっそ!!こんなイロモノ軍団にやられたら一生の恥だ。」
慌てて逃げ出すPK。
「あ、また逃げ…。」
シゲンは逃げ出すPKに足止めをかけようとしたが、
ベアードに止められた。
「俺がやる。」
ベアードは槍を上に構え助走をつけて遠投する。
槍は吸い寄せられるようにPKを目がけて飛んで行き、
身体を貫いた。
こうして初のPK戦闘は幕を閉じた。