009
「あぁ、そういえばシゲちゃんはほかのゲームでも装備いっぱい揃えてニヤニヤしとるタイプやったな。」
「そうだなぁ、クリア前にコレクター魂に火がついてアイテムコンプとかするタイプ。」
「俺も何回1%ドロップ確率のアイテムを拾うために同じモンスター倒したことか…。」
三人は先程のやり取りから世間話を続け、巴はそれをたのしそうに見ている。
そんなとき脇の茂みからガサガサと音がする。
遠くからこちらへ近づいてくるようだった。
4人は噂のPKが来たのかと慌てて武器を構えた。
現れたのはプレイヤー。
しかし、襲いかかってくる様子はない。
むしろ怯えているようだった。
「くっそ、こっちのもPKがっ!!」
和弓を携えた男の<暗殺者>こちらを見てそう嘆いた。
「やめて!殺さないでぇ!!」
弱弱しい声で叫ぶ男性は大きい鈍器になりそうな笛を担いでいる。
こちらは<吟遊詩人>のようだ。
「ビックリしたで~、PKかと思ったわ~。」
「私たちはPKではありませんよ。」
慌てる男性2人をなだめるレナと巴。
ここは異性が話した方がいいだろう。
様子をうかがっているとベアードは見覚えのあるギルドタグを確認した。
「君たちはエーヴィルのところのギルメンか。」
「我らがギルマスをご存じか!」
「マスターやるぅ!!」
<闇夜の魔狼>
これが彼らの所属するギルド。
ギルドマスターは、〈対剣〉のエーヴィル。
炎と氷の剣を使いこなす二刀流剣士。
ベアードとは〈D.D.D〉の第零師団三番隊で共に戦ってきた、
かつての仲間であった。
「あぁ、あのチャラ男んとこか。何度か組んでレイドもやったもんだ。」
「あのチャラいワンちゃんの!」
「そうそう、ウチ相方の元同僚的な?」
「懐かしいですね、あの方も大災害に巻き込まれていたんですね。」
かつて<北の鬼>、<石蛇姫の眼>、<闇夜の魔狼>でチームを組んでレイドに参加していたこともあったので現在いる4人とも面識があったのだ。
「チャラ男とは聞き捨てなりませんが、一旦置きましょう。」
「どうか助けてくださいませんか?
PKに追われてなんとか逃げ出しましたがまだ追手が…。」
言いきる前にまた茂みからガサガサと近づいてくる気配がある。
「君たちは隠れていて。俺たちが何とかするから。」
それを聞いた二人はすぐさま茂みに隠れた。
「なんとかってPK退治でもやるのか?」
「お~!やったる~!」
「弱い者いじめは許せません。」
「だそうだ。
正直俺も感心できないし、本当にそんな奴らがいると考えると悲しくなる。」
ベアードは大好きなエルダーテイルが壊されているような気持ちになりとても憤りを感じていた。
「そんじゃ悪者退治と行きますか!」