鬼畜一休さん
ラストはもう少し工夫したほうがよかっただろうな…
ノリとインスピレーションの導くままに書いた結果がこれか…
和尚は一休を探して、廊下をバタバタと音を立てながら走り回っていた。
その手には一枚の手紙が握られており、どうやら焦っているらしく、その禿げ上がった頭からは玉のような汗がびっしりと浮かんでいた。
「一休!一休はどこじゃ!?…おい、そこの小僧!一休の居場所を知らんか!?」
ふと、熱心に庭の掃除をしている小僧が視界に映り、一休の場所を尋ねると、小僧は本堂の方向を指さした。
和尚は小僧にお礼も言わずに、本堂へと走って行く。
本堂の扉を開けると、仏像の前で、一休が懸命に念仏を唱えていた。
「南無南無陀仏、南無陀仏、阿弥阿弥阿弥陀、阿弥陀クジ…あれ?念仏ってどう唱えるんだっけ?」
「一休!?」
和尚がそう叫ぶと、一休はゆっくりと振り向き、自分に話しかけたのが和尚だと気づき、見下すような笑みを浮かべる。
「ああ、ハゲジジイ…失礼、ハゲジジイではないですか」
「何で言い直したんじゃ!?あと、これはハゲじゃなくて坊主頭じゃよっ!」
「やだなぁ和尚、『寝るのは布団の中でだけにして下さい』と、いつも言っているじゃないですか」
「寝言を言っているワケでは無いんじゃがっ!?」
「ところで和尚、阿弥陀クジの結果によると、あなたの人生は明日、終わるそうです」
「阿弥陀クジで人の寿命を決めないで!?」
「さっきから五月蠅いですね。邪魔なので帰ってくれませんか?僕はわざわざ和尚のために、和尚の最後の毛根が無事に地獄へ送られますように祈ってるんですよ?」
「ワシの命と同じくらい大切な毛根に、なんて事しとるんじゃ!?」
そう言って和尚は自分の頭の頂点に生えている、最後の一本の髪の毛を慌てて手で覆うようにして隠す。
「そんな事より、一大事じゃ一休、これを見ろ!」
そう言って和尚が見せたのは、先ほどからその手に握られていた手紙。
一休は和尚から手紙を受け取って、手紙の内容に目を走らせる。
「城に来るように…という旨が書かれてありますね。なるほど、とんちを披露しろと…」
「そうじゃ、一刻も早く城へと向かうぞ!」
「なに張り切っているんですか和尚?これから魔王城に向かう勇者か何かですか?」
「RPGじゃないんじゃがっ!?」
「ところで、おやつは何円分までならオッケーですか?」
「遠足でもないんじゃがっ!?」
・
・翌日
・
城へ向かう準備も整い、一休たちは城へと向かい始めた。
「準備もできた事じゃし、城へと向かおうかの」
「そうですね、バナナはおやつに入りますか?」
「だから遠足ではないと言っておるじゃろう!?」
「安心してください。ちゃんと銅の剣は装備してあります」
「だからRPGゲームでもないんじゃがっ!?」
「そうですかね?試してみましょうか?」
一休の攻撃!
グサッ
和尚に5のダメージ!
和尚は倒れた
300ゴールドを獲得!
パララパッパッパパーン
一休はレベルが上がった!
力+2
硬さ+2
素早さ+2
体力+2
魔力+1
殺人数+1
「…よし、行きましょうか」
「待てぇぇぇぇぇぇぇ!?」
一休が踵を返して城へ向かおうとすると、和尚の死体から魂が抜けだして一休に突っ込む。
「なに、さらっと殺してくれてるんじゃ!?あと、殺人数ってなんじゃっ!?いつもいつもお前はワシをいじめて楽しいのかっ!?」
「五月蠅いですね。黙ってください」
一休にキッと睨みつけられて黙らされる。
和尚が今にも泣きそうな顔で落ち込んでいるのを見て、少しやりすぎたな、と一休は反省する。
「ハァ…分かりましたよ、生き返らせればいいんでしょう?」
一休が両掌をパンッと打ち鳴らし、地面に手を置くと、和尚が何事も無かったかのように生き返った。
「人体錬成!?」
「安心して下さい、等価交換です。代わりに和尚の毛根をあの世に送りました」
和尚が慌てて自分の頭のてっぺんを撫でると、一本の髪の毛がプチリと千切れて風に吹かれて飛んで行った。
「…ワシの毛根になんて事を!?この外道が!」
「自分を助けた相手に『ありがとう』も言わないどころか、外道扱いですか?最低ですね」
「ワシを殺したのはお前じゃろうが!?」
・
・
・
城下町につくと、橋の前に看板が立っており、こう書かれていた。
『この橋渡るべからず』
「困りましたね、このままでは城に行けませんよ」
「確かにのう…はてさて、一体どうしたものか…」
和尚は暫く考え込むと、思い付いたように一休を見るなり、
「そうじゃ!はしではなく真ん中を渡ればいいんじゃないかのう?素晴らしいとんちじゃ!ワシの頭はかなり冴えとるのう!」
「和尚、ふざけたことを言うのはその位にして、真面目に考えてください」
「理不尽っ!?」
「橋と端を間違えるなんて、小学生ですか?とうとうボケが始まったんですかぁ?」
一休は見下すような目で和尚に唾を吐きかけた。
和尚の心に10のダメージ!
「この糞小僧が!バーカバーカッ!このアホ!お前なんかもう絶交じゃ!」
「小学生ですかっ!?」
そう叫ぶと、和尚は泣きながら橋の真ん中に向かって走り去っていった。
橋が崩れ落ちて、和尚が川に落ちていった
・
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和尚は必死に泳ごうと手足をジタバタと動かすが、服を着たままなので上手く泳げない。
溺れかけている和尚を見ながら、一休が呆れたように話しかける。
「だから言ったじゃないですか。バカなんですか?」
「原作ならっ!原作なら大丈夫だったはずなんじゃぁ!ゴボボボボボボ…」
「うちの作者がそんな普通の展開を用意しているワケないでしょう?こんな展開になるなんて、簡単に想像つきますよ?」
「いいから助けてくれ!ゴボボボ…」
「さて、どうやって川を渡ったものか…?とんちが浮かびませんねぇ」
「ワシは無視か!?」
一休は座禅を組んで、考えを巡らすが、一向に良い案は思いつかない。
「一休!?ちょっ、船がぁ!?船が来て…ゴンッ!」
和尚の泳いでいたところに丁度、船が通りかかり、和尚の頭に船首をぶつけていった。
船が通り過ぎて行った後、和尚は浮かんでこなかった。
・
・
・
「将軍様のおな~り~」
無事に城に到着した一休は、将軍様に謁見していた。
結局、和尚もとんちも浮かんでこなかったので、船で川を渡ったのだ。
「よく来たな一休殿。長旅で疲れたであろうが、お主のとんちを見たくてうずうずしておるのだ。早速だが、お主のとんちを披露してみてはくれまいか?」
将軍にそう言われ、一休は首をかしげる。
「突然そう言われても、一体何をすればいいのでしょうか?」
「実はな、この屏風の虎が、夜な夜な屏風から抜け出て暴れまわるのだ。お主のとんちでこの虎をやっつけてみてはくれんかのう?」
「屏風から虎ですか?なんとも奇怪な現象ですね。それは大変お困りでしょう。しかし、残念ながら将軍、とんちを使うことは出来ません」
一休が断ると思っていなかったのか、将軍は驚き、凄まじい剣幕で怒鳴った。
「何故出来ぬ!?くだらん理由ならば、即刻、打ち首に処するぞ!?」
一休はそれに臆することなく、にやりと笑って、
「私のとんちは、長旅の中ですっかり疲労(披露)してしまったもので。まずは一休みしたいところです」
将軍様がポカンと口を開けて驚くと、突然笑い出した。
「フハハハハハハ!!なるほど、疲労(披露)してしまったのか!これは一本とられたわい!」
扇子でペちんと自分の頭をたたき、一休に向けてこう言った。
「打ち首じゃ」
メデタシメデタシ
一休さんを書いたのは多分、僕の敬愛するどさんこGOGO!さんの、『新しい念仏を唱えてやるから覚悟しろ! (読了:1分)』を読んだ影響でしょうね。