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神様は一体何をしたいんだ。

"最期の洞窟

ここの洞窟で旧アヴニル王国の独裁政権は終わった。当時の国王だったアンドルー・ワースフゥリックは自殺"


「はぁーっ。」


"自殺した"の文章をまた消した。もう何回消したことだろう。


「ため息つかないの。幸せ逃げるよ?」


朝陽は口をモグモグさせながら私の腰に手を回してきた。お土産で買ったマンゴークッキーをフラゲしたみたいだ。


「どうしたの?」


「う...ん。文章が思いつかなくて。」


やっぱり私...正式には"前世の私"がアンドルー...朝陽...アンドルー...もうっ!!混乱するわっ!!とりあえずこいつは私が倒したのに歴史が食い違ってるのが気に入らないの!!


「ふーん。」


あんまり話聞いてないなこいつ。おそらく私のほっぺにキスすることしか考えてない。


「やーめーて!くすぐったい!」


私は朝陽の整った顔をこれ以上近づかせないように押さえつけた。髪の毛はシャワーを浴びたからか少し湿っている。


「なんだよ冷たいな。せっかく会いにきたのに。」


迷惑です!正しく言えばタイミングと運が皆既日食もびっくりなほどそろって大迷惑です!


「今・仕・事・中・で・す!」


「ホテルで?」


「はい!」


私は再びパソコンに向き合った。朝陽はまた私に絡んでくるけど、今度は迷惑かけないようにしてるのか顎をちょこんと肩にのせるだけだ。


やっぱり、何かの思い違いだと思う。私が勇者?はっ。馬鹿げてる。だってレイラは男の子で昔からずっと強くなれって言われていろいろ鍛えられてたんだよ。私は女で運動嫌いで勉強ばっかやって全く違う人間。

朝陽もそう。人見知りで信頼した人にしか心を開かないけど本当に優しくていい人だし、この通り懐くと犬みたいじゃん?でも、あいつは?

冷酷で自分のためなら手段を選ばない。目の前に立ちはばかるのが老人でも子どもでも容赦無い。正反対だ。


「ねえ、最後に一つだけ。」


「ん?」


「お願いだから、ホテルでピンポン鳴らしてもすぐに出るなよ?俺だったからいいけど...」


ピンポンっていうかビーっだよねここ。


チラリと肩に乗ってる朝陽を見ると、結構真剣な目をしてた。こういう時だけ男らしくなる。あくまで、こういう時だけ。


「はい。」


「よろしい。You are a good girl.」


やっぱ英語発音いいなー。小さい子みたいに頭ポンポン撫でられるのはなんか気に入らないけど。


「お仕事続けて下さ〜い。」


「ういっす。」


って言っても続けられないんだよね〜。城はもう書き上げちゃったし明日行くのは"現地人オススメのパブ"だからミス・ウィルソンがいないと動けないし...待って、この土地にパブなんてあるの?だって禁酒法があって...ああっバカバカバカバカ!!それは50年前の話!!完全に混乱してるな...仕事だ仕事!!

ええっと!!最期の洞窟は...


「ちょっと行ってくる。」


私の顎に手が伸びきた。ぐいっと横を向かされ、唇にキスされる。


「じゃあね。」


「...ちょっ、ちょっ、ちょっ!!どこ行くの?!」


朝陽は椅子にかけていたレザージャケットを羽織り、袖に手を通した。


「洞窟。」








へ?



「どっ...」


「洞窟。暴君が死んだとこ。」


...待て。いろいろ待て。


あかんあかんあかんあかんあかんあかんあかんあかんあかんあかんあかんあかんあかん。


絶対思い出す。過去思い出すやんこいつ。


何か説得しろ、説得説得説得説得説得説得説得。




何か...




「あそこつまらないよ?穴だけだし!」


頑張ってかんがえた説得がそれ...涙出てくるわ。


「恵理香は忙しそうだから来なくていいよ。」


そういう問題じゃないんですううううううううううううう私たちの関係にヒビが入るかもなんですうううううううううう


「場所分かるのそもそも?」


よしっ、""場所分からないから案内させるように見せかけて迷ったように見せかけて帰らせる作戦"だ。名前は今考えた。ネーミングセンスについてのクレームは受け付けません。


「まあ...何と無く...」


何と無く、なんとなく、ナントナク...それってさ思い出しt...ぬわーっ!!ないない!!絶対ないっ!!


「初めてこの国来たんでしょ?」


「うん...でもなぜかここのこと知ってるんだ...なんでだろ...」


神様は結婚直前で順調に来てたカップルを前世での関係という形で原型がなくなるまでに叩き潰したいのか?神様欲求不満だから世の中のもうすぐゴールインの人たち破滅運動でも実施してるのか?



「そんなことあるわけないでしょ?初めて来たのに...」


朝陽はレザージャケットをベットの上に脱ぎ捨てた。ぐったりとした様子でその上に座り込んだ。


「...どうしたの?」


おかしい。血の気が引いてただでさえ白い肌が透き通りそうだ。私は近くに駆け寄る。朝陽は私を強く抱き寄せた。まるで私が周囲に駆け巡る邪気を取り払うかのように。


「恵理香...俺、頭おかしいかもしれない...」


「え?」


「電話で話した夢の話あるじゃん?あれ夢じゃないんだ...」


朝陽の腰に回してる手に鳥肌が立った。


「え...」


「おかしいよな...家にいた時に急にあの情景が浮かんで来たんだ。それもかなり細かく。名前や家族の顔や自分がしていたことまで細かく浮かんで...いや、思い出すって言った方が感覚的に正しいな。」


そんな...


「あっ、なっ、何か勘違いしてるんじゃないかな?夢と何か歴史での出来事が混乱するとか...」


「...え?」


朝陽は私からゆっくりと離れた。


「あり得ないよ。あなたが人を殺すなんてさ...だって」


朝陽はよく分からないといった顔をした。


「...俺は一回洞窟に行って確かめる。少し話したらスッキリしたよ。ありがとう。」


今度はレザージャケットも羽織らず走って部屋を飛び出して行った。


「ちょっ、ちょっと!!!」


私が朝陽を追いかけようとした時だった。






『うん...なんか生々しくてさ...ただの夢とは思えなくて。』


『名前や家族の顔や自分がしていたことまで細かく浮かんで...いや、思い出すって言った方が感覚的に正しいな』


『...前世なんて誰にも分からないし、違うよきっと。ね?』












朝陽、自分の前世だなんて一言も言ってない。



あの日のことを知ってるのは、レイラとアンドルーだけ...









全てが繋がってしまった。



何も考えず、朝陽の後を追いかけた...












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