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なんかすっごい嫌な予感がするんですが。

「それで...仕事一日目はどう?」


朝陽は悪くないんだけど、私の疲れの原因を思い出してしまった...さすがに彼であっても前世を思い出しましたなんて言えない。


「まあまあだよ。今日はお城と洞窟へ行った。」


「洞窟...?」


「うん。旧アヴニル王国の独裁者であるアンドルーが...自殺したところ。」


自分が倒したのに自殺というのはなんかやだ。なんだろう...なんかね、言い方悪いけど人に手柄持っていかれた気分。そんなに気持ちのいいことじゃないんだけど。


「へー。勉強が役に立ってるわけだ...」


最後の一言に少し恨みがましさがあった。


「そんなふうに言わないでよ...仕事よ仕事。」


「そう言って教会選びとかそっちのけにしただろ?」


「はい。」


そこは確かに反省してる。はい。


朝陽は携帯越しにはあっとため息をつく。


「まあ、こっちなんか毎日テキトーな料理食ってるんだから。」


「よく言うわ"コックさん"。」


「家でも料理作るのは面倒なんだよ...彼女の愛情こもった料理が...」


「やめろ気色悪い。」


これが私たちの"日常会話"。ロマンスがないよね分かります。3年も一緒にいて慣れたのか朝陽も電話越しで笑っていた。私には真似できない優しい笑い声だ。これを聞いてるとなんか元気が出る。


「あのさ...」


急に朝陽の声のトーンが落ちた。


「何?どうかしたの?」


「昨日さ...怖い夢見たんだよね...」


お前小学校低学年かっ!!


と、いう言葉をゴクリと飲み込んだ。声があまりにも真剣な声で言ったので、そんなこと言ったら怒られそうだった。


「うん...なんか生々しくてさ...ただの夢とは思えなくて。」


「へー。どんな夢?」


何気なく聞いたのが完全にアウトだった。


「俺は...なんか...権力者になってた...」


「ほうほう。」


「自分の目的のためならなんでもする奴なんだ...」


「なんか生々しい夢だね。まるで...」


「俺は誰かを殺したんだ...夢の中で。」


絞るように出した声だった。


「でも、夢でしょ?」


あまりにも深刻な声で言ったから私は励ます意味で言った。


「ああ。そうなんだけどなんかリアルだったんだよ。俺より年下の男の子が立ち向かってきて俺はバカにしてた..."なんで君が民衆を率いれたのか不思議だね..."って。」


『なんで君が民衆を率いれたのか不思議だね...』


脳内で何度も何度も反響した。


身体が震え始め、体の芯から記憶が蘇る。



「俺は突進してきた男の子のナイフを素早く奪い、何の躊躇もなく彼の胸に刺したんだ。」


突然の鋭い痛みと共にどす黒い何かが"私"の服を支配していった。


私は必死に自分を世界へ戻そうとする。


私は松本恵理香!!レイラじゃない!!


遠くで誰かがそう叫んでる。


「俺は勝利を確信して彼を置いて行き、次の仕事に移ろうとした。」


けどそうはならなかった。


"私"は最後の力を振り絞り、ポケットに手を突っ込んだ。


「少し歩き出したとき...胸が熱く焼けた。そこで夢から覚めた。」


覚えてない...私何したんだっけ?


「君の言うとおりただの夢なんだけど、そこにいたときのむわっとした洞窟の中や服まで覚えてるんだ。」


私も...必死に走ってきた時の息切れた感じ。一気に体温が上がり汗が吹き出た...そんなことも思い出した。


まさか...ありえない。

違う、ありえないよ。だって2人で前世を一緒に思い出してさ、しかもそれが宿敵同士?私は完全に思い出したけど、彼は違う。きっと彼の脳内に意味不明な虫が侵入して頭をポカポカ攻撃してるんだよ。きっとそうだ!!お父さんが人間ドック行った大学病院紹介してもらおうかな?バカバカ!!私ってバカ!!だからいつも家計簿でミスして朝陽に助けてもらっちゃうのよ!!


「恵理香?大丈夫?」


「はいっ!はいっ!松本恵理香はすこぶる元気でございまぁーす!」


「...なんだよいきなり。」


付き合い始めて初めてかもしれない。朝陽が私に呆れるの。いつも逆だから。ごめんねごめんねー!


「まあ...俺寂しくなっちゃったんだよ...。怖い夢見ても恵理香いないわけだし...」


「分かる分かる!怖い夢見たら人肌恋しくなるもんねー!だからね、私朝陽に病...」


ビーっ、ビーっ、


「ん?誰か来た。切らないでね!」


答えも聞かず、私は扉へと走りこむ。


ビーっ、ビーっ、ビーっ


「Please wait!!」


ビーっ、ビーっ、ビーっ、


「うるさいなあっ...」


私は誰かも確認せずに扉を開けた。


目の前には白Tシャツにジーンズを着た長身の男が立っていた。顔はこの国に溶け込めそうなホリの深さに空のように青い瞳だ。


耳には携帯を当てている。


「Erika,you are a bad girl.」


男は携帯を胸ポケットにしまい、私の前髪をかきあげ額にキスをした。


「ははは...どうも...朝陽。」



なんかすっごい嫌な予感がするんですが。















前置き長くなりましたね汗

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