私は頭がおかしくなったらしい。
最初なんでよく分からないかも...笑私も書いててよく分かりませんでした←←
私は今、とんでもないことを思い出してしまった。...in洞窟。
「ここは50年前、旧アヴニル王国の独裁政権を終わらせようとした革命軍により追い詰められた国王アンドルー・ワースフゥリックが亡くなったところです。」
そうだ。私はここであいつと決着をつけた。
昨日のことのように覚えている。湿気の酷い洞窟内、滴る汗、泥と水の混じる匂い...憎たらしく笑うあいつ...アンドルーの顔。
私は...
「ですが、今だに自殺か他殺かというのを裏付ける証拠はありません...根拠はありません。なぜならここでは...」
...は?
あいつが自殺なんてするわけねーだろ?今お前の声聞いとるのがあいつ倒したやつじゃ音声ガイド。お前水の中に投げ込んだろか?それかお前ドライバーで解体したろか?
イライラと音声ガイドを切り、洞窟を見回した。
今は観光用にライトがいたるところにあるし、憎たらしいことに外観ぶち壊しの非常口まで設けられている。50年前は違った。この時間帯ならもっと暗く目をこらしてやっと人影が分かる程度のはずだった。私が...あいつの顔まで見えたのは、ちょうど隙間から入る月明かりにあいつが照らされてたからだ。
...なんでこんなこと思い出したんだろう?
私は東京で生まれ東京育ち。公立の幼稚園、小学校に通い中高一貫の私立へと入った。大学も行って今の恋人と出会い...今に至る。
普通だ。本当に普通。
...もう一度自分に問う。なぜこのタイミングで思い出したし。
いやね、確かに前世と関係がある場所に行くと断片的に記憶が蘇るっていうのは聞いたことあるよ?でもあくまで断片的に(・・・・)でしょ?なんで生まれた時から思い出してんの?完璧に。昨日までその人生を歩んでたように。
私はジーンズからブルーのシリコンケースに入ったiPhone4sを取り出した。
『いつ帰って来る?』
朝陽からのメッセージだ。昨日の23:45に来ている。
『だからしばらくは帰ってこないって。何回言ったら分かるの汗』
『さみしい。』
『我慢せい。男だろ。』
『愛してる。早く帰って来てね。』
『あと20日後ね。』
『恵理香も愛してるって言ってよ。』
『うん。』
...いつもと変わらない一部の人に見せたら宇宙の彼方まで飛ばされそうなメール。
変わらない日常...のはずだった。
「エリカ!!エリカ!!」
私の目の前に青いビー玉のような瞳が出てきた。
「あっ、ミス・ウィルソン。」
「大丈夫?何か思いつめた顔してたけど?」
「あ...う...うん。大丈夫よ。ありがとう!」
多分こんなこと言っても信じてもらえないだろうし...
私はあのふざけた音声ガイドを頭で復唱した。
『ですが、実際レイラという少年がいたかという根拠はありません。なぜならここではアンドルーの遺体しか発見されていないからです。』
いろいろツッコミはたくさんあるよ。まずなんで前世のことを思い出したか...完璧に。しかも私は男で、17歳だった。今私は24歳で女...ああ、頭がおかしくなりそう。実際私はレイラだったなんて証拠この記憶以外にないじゃない!
それにさ、仮にさ、仮によ?私がレイラだったとして歴史上に存在しないことになってるわけでしょ?...確かにさっきは鋭いツッコミ入れたよ?なんというか条件反射っていうの?
「エリカ、一日目のアヴニル国はどう?」
何かよくわからないものにとり憑かれ頭がおかしくなったみたいです。
「最高ね!!本当に景色がキレイでヨーロッパ調だけどどこか他の国とは違うわね。」
50年前に比べてパブと外国人は増えたけど、道はかなり整備されたしまあいいんじゃない...ってお前はこの国の長老か。
「この国はヨーロッパや自然の文化を大切にしてきたけど、独裁者アンドルーが他の国に負けないように強制的に当時の最新テクノロジーを...」
案内人のミス・ウィルソンの話はほとんど聞いてない。
今日の午前中だって、アンドルーが所有していた城に見学しに行った。黄金やレトロな機械に溢れてて少し感動してた。本当に他人事だったのに...
「エリカ?エリカ?」
「...!?はっ、はい!!」
ミス・ウィルソンは不思議と不安に溢れた顔をしている。
「旅の疲れかしら?ぼーっとしてるわよ。」
「そう...?」
「城と洞窟で今日の観光地巡りは終了だし、ゆっくり休んだら?」
ミス・ウィルソンの顔がぼんやりと渦を巻いた...
『...イラ...レイラ...死ぬな...この大嘘つきめ...』
『一国の...が...された...こんなこと...』
『彼には...があって...』
真っ暗な闇の中で多くの声がこだましている。私の着ている白ブラウスにジーンズがどんどん重く暑苦しい鎧へと変化していく。
『恵理香...よく...ました...』
『また...か...さすが...だ...』
『はじめ...て...』
真っ暗な闇の中で言葉はやかましく耳へと突っ込んでくる。
助けて...助けて...
その時だった。
♫〜♫〜♫〜♫
「...ん?」
どこかで威風堂々が流れている。
それに気がついた瞬間、闇は何処かに吸い込まれて消え、真っ白な世界がゆらゆらと揺れていた。
威風堂々は今だに流れている。
「...ヤバっ!!!」
数秒聞いてそれが自分の携帯の着信音で、婚約者専用の音だということを思い出した。
「はいっ!!はいっ!!はいもしもし!!」
「元気いいね。」
ずいぶん長いこと聞いてないようなハスキーな声が耳に入ってきた。
竹本朝陽...私の婚約者が電話越しに微笑む顔が頭に浮かぶ。
「今なにしてたの?てか今大丈夫?」
「うん、仕事終わったところだから...」
この数秒後、私はこの電話をとったことを激しく後悔し机に頭を何回も激突させるなんて思ってもみなかった。
次回から本題入ります汗