第8章 龍の翼
第8章 龍の翼
第1話 衛星星域
その惑星は、太陽の1,000倍の質量を持つ恒星を周っていた。
その惑星は、今までの4つの惑星が持つ全ての技術を持っていた。
技術力はムーと比肩した。
更に、ブラックホールを産み出す技術も持っていた。
イズミは、その惑星に向かった。
レプトン砲が襲う。
その他に戦艦、宇宙空母、巡洋艦、駆逐艦、空母の搭載機が多数襲った。
その乗組員は、皆、人工頭脳だった。
レプトン砲が襲うのは、イズミだけではない。
味方も襲う。
この惑星の住人の思考性が鎮也には、理解できなかった。
しかし、この惑星の住人の思考性は単純だった。
「破壊あるのみだった」
「破壊するために造る」
ただ、それだけだった。
この惑星は、レプトン系素粒子波の発生装置による対消滅砲を持っていなかった。
襲われた味方の艦は粉々に砕ける。
イズミには、敵の攻撃は届かない。
煩い蝿がたかっているだけだ。
しかし、この惑星に近付く事が出来ない。
対策を練るためムーに退却した。
現在のイズミは2万光年を1時間で移動できる。
第2話 対策(1)
「龍の翼」を手に入れるために、問題は2つあった。
1つは、蝿のような多数の軍艦だ。
もう1つは、突如として現れるブラックホールだ。
この頃、アインは変わった。
無口になった。
思考に没頭している。
アインは、目覚めていた。
「物質の真理」を見通す遺伝子が、突如として現れ、発現していた。
突然変異が起きていた。
遺伝子研究所では、アインの遺伝子を調べた。
全体の遺伝子の発現率は60%くらいだ。
他の仲間は、80%を超えるものもいる。
全体の発現率は、低い。
この時、ムーでは、人類をレベル分けしていた。
差別ではない。
適材適所に配置するためだ。
希望するものには、そのレベルを教えた。
配置を拒否するものは、許した。
能力より本人の望みが優先だ。
レベルは、
発現率10%以上をレベル1
発現率20%以上をレベル2
発現率30%以上をレベル3
発現率40%以上をレベル4
発現率50%以上をレベルH
とした。
もちろん、細胞リサイクル遺伝子は、発現している。
そして、同じレベルでも、得意分野が違っていた。
レベルHは、人類の0.001%くらいだ。
理由は、解らないが人類が50%以上の発現率を示す事は稀なのだ。
そして、突然変異者は、23人見つかっていた。
それぞれ特異な能力を発揮する。
これを、レア・レベルと呼んだ。
第3話 対策(2)
アインにとって、対策は安易なものだった。
アインは、この宇宙の「物質の真理」に近付いていた。
1つ目の問題は、レプトン砲を放射型にすればいい。
2つ目の問題は、ブラックホール・シールドを作った。
斥力で、ブラックホールの重力を調節するアジャスターを備えた。
符号反転を起こす事、過度の斥力は、空間爆発を誘発する。
ブラックホールを制御できれば、問題は解決すると思っていた。
後は、幸とマリヤに任せればいいと思っていた。
イズミは、アユミを同行し、その惑星に向かった。
軍艦の駆除はその方が早い。
軍艦の乗組員は、生命体ではない。
遠慮はいらない。
鎮也とミチヤは、この惑星に降り立つ事が出来た。
だが、この惑星の真の支配者は、生命体ではなかった。
第4話 精神体
この惑星の生命体は、滅亡していた。
支配していたのは、巨大な精神体だった。
この惑星の住人は、「13個のクォ‐ク」の開発を行ったのだ。
その結果、巨大な精神体を産み出した。
そして、その精神体は、ブラックホールの影響を受け悪意を持ってしまった。
精神体は、自分にも命が欲しいと願った。
精神エネルギーが巨大でも、知性は激しく劣るのだ。
かなり前の事だが、精神体は「命の泉」を、軍艦を率いて、襲った。
そして、「龍の翼」を得た。
精神体は、命が得られない事を覚ると、悪意を増した。
この精神体を無に帰すのは、罪だろうか?
鎮也とミチヤは、悩んだ。
『ケント』に相談した。
『ケント』は、
「浄化した後なら、自分自身に融合できるかもしれない」
と、答えた。
イズミ搭載の『ケント』は、この精神体を融合した。
『ケント』は、融合初期にはかなり苦しそうだった。
「PQD2・3改」や他のものの援護を受けた。
それでも、この精神体は、巨大過ぎた。
暫くすると、『ケント』の意識がはっきりした。
『ケント』は、何かに目覚めたようだ。
『ケント』にも、それが何かは、解らなかった。
『ケント』が、悪意に染まる日はくるのだろうか?
誰にも解らなかった。
第5話 最小素粒子(1)
アインは、完全に覚醒した。
アインは言い放った。
「この宇宙の物質の構成素因が解った」
アインは、説明し出した。
「トリオン系素粒子の10のマイナス5乗くらいの粒子が存在する。
これが、万物を構成する唯一のものだ。
これは、自然界では、粒子ではなく波として存在する」
そして、その粒子(波)を「MIN波」と名付けた。
次のようなものだった。
現在の科学では、「自然界に正弦波、余弦波を発するものはない」とされている。
しかし、最小粒子の正体は、余弦波だった。
y=Acos(2π×f)+B
これが、最小粒子の正体だった。
y・・・瞬間のエネルギー
A・・・振幅定数
f・・・周波数(0~1を周期的に動く)=1/T(周期)
B・・・B>A。この宇宙の定数
fは、固有振動。時間ではない。
第6話 最小素粒子(2)
アインは、この宇宙の創生について説明した。
「この宇宙の創生の前、それは『全は一、一は全』の「一」だった。
「最初の爆発」が起きた。
「一」は、全から離れた。
「一」は「MIN波」となった。
その「MIN波」のエネルギーは、元々はB値だった。
そして、爆発は軸を1つ作った。
更に、「MIN波」は、Acos(2π×f)を持った。
そして、y=Acos(2π×f)+Bとなった。
最小粒子の正体は、これだ。
「MIN波」は、いくつかの性質を持っていた。
「MIN波」は、1つの軸の上を拡散しようとした。
この『拡散性』が、1つめの性質だ。
「一」は、「全」から離れた時、拡散する性質を持っている。
そして、波は、増幅した。
拡散しようとするスピードより、増幅が勝った。
「MIN波」は、波だ。
1つの軸では、存在できない。
幅が必要だ。
「第2の爆発」が起きた。
軸がもう1つできた。
平面座標系ができた。
この爆発の影響で、波は位相した。
そして、次の4種類に分かれた。
y=Acos(2π×f)+B…………(a)
y=Acos(2π×f+π)+B……(b)
y=Asin(2π×f)+B…………(c)
y=Asin(2π×f+π)+B……(d)
これらの波は、2つの軸上を拡散した。
(a)と(b)は、1つの軸上を拡散した。
そして、増幅と対消滅を起こした。
(c)と(d)は、もう1つの軸上を拡散した。
そして、増幅と対消滅を起こした。
対消滅すると、y=Bとなった。
そして、対消滅は衝撃を産んだ。
増幅したものが対消滅すると、衝撃は更に大きくなった。
重力子と斥力子の元となる大きさまで増幅した時、「第3の爆発」が、起きた。
第7話 最小素粒子(3)
3つ目の軸ができた。
3次元空間の基ができた。
そして、次の4つの「トリオン」系素粒子をつくった。
「トランスットⅠ」y=Ccos(2π×f)+B
「トランスットⅡ」y=Ccos(2π×f+π)+B
「トランスットⅢ」y=Dsin(2π×f2)
「トランスットⅣ」y=Dsin(2π×f2+π)
C=A×(10の5乗倍)
D=A×(10の8乗倍)
f2=(10の4乗倍)
2つのトランスットのエネルギー量と周波数が増大した。
「MIN波」の極一部が、「トリオン」系素粒子となった。
y=Bのものもある。
「トリオン」系になりかけた途中のものもある。
「トリオン系」素粒子は、3次元空間の基の中で混沌としていた。
そして、「トランスットⅠ~Ⅳ」は互いに干渉し合った。
そして、増幅と対消滅を繰り返した。
対消滅は、空間を形成していった。
そして、8種類の「スぺラン」系素粒子を作った。
「重力子」y=Ecos(2π×f)+B
「斥力子」y=Ecos(2π×f+π)+B
「エラドル」y=Fsin(2π×f2)+B
「反エラドル」y=Fsin(2π×f2+π)+B
「スペランⅠ」「重力子」と「エラドル」の複合波形
「スペランⅡ」「斥力子」と「エラドル」の複合波形
「スペランⅢ」「反スペランⅠ」
「スペランⅣ」「反スペランⅡ」
E=A×(10の8乗倍)
F=A×(10の11乗倍)
この時、EとFは質量を持った。
自然界の存在率は、重力子と斥力子が99%以上と推測される。
エラドルは、希少と推測される。
反エラドルは、存在しないと推測される。
エラドルは、自分のエネルギーを維持できず崩壊していくと推測される。
まして、それを位相させた反エラドルは、存在しないと推測される。
「反エラドル」と「スペランⅠ~Ⅴ」は、未発見だ。
第8話 最小素粒子(4)
この時、それぞれの素粒子の周期の初動が異なってきている。
ここで、2つめの性質がでた。
「MIN波は、互いを同期させる」
同期した、重力子と斥力子の対消滅が起こり、空間は成熟していった。
その時、重力子と斥力子は、空間生成エネルギーを放出し、「MIN波」へと還る。
だが、一部が何らかの形で残る事も推測された。
完全に同期しなくても、対消滅は起こった。
あまりにも、複雑になり過ぎている。
『複雑の余り』は、推察できない。
「スぺラン」系素粒子は、「レプトン」系素粒子を作る前段階を作った。
それは、中間子「ミッダー」と呼ばれる。
構成要素は、「重力子」または「斥力子」と「スペランⅠ・Ⅱ」である。
スペランⅠ・Ⅱの質量は、重力子(斥力子)のGと推測される。
G=E×(10の1.5~2乗倍)
中間子「ミッダー」の波形は、余弦波と異なっている。
複合されて、自然界に生き残った波が、「ミッダー」だ。
第9話 最小素粒子(5)
中間子「ミッダー」は、6種類が推測されている。
「ミッダーⅠ」は、質量がHで電荷が+1/3。
「ミッダーⅡ」は、質量がHで電荷が-1/3。
「ミッダーⅢ」は、質量がH×100で電荷が+1/3。
「ミッダーⅣ」は、質量がH×100で電荷が-1/3。
「ミッダーⅤ」は、質量がH×1,500で電荷が+1/3。
「ミッダーⅥ」は、質量がH×1,500で電荷が-1/3。
H=G×(10の1.5~2乗倍)
この中間子「ミッダー」は、「レプトン」系素粒子を形成していく。
現在、確認されている「レプトン」系素粒子は、次の通りだ。
「電子」
「反電子」
「タキオン」
「グル‐オン」
ここで、アインは疲れたようだ。
続きは、またしてくれるだろう。
そして、アインは詳細を考察するだろう。
ムーの科学者は、検証を行うだろう。
未だ、仮説の域にも達していない。
だが、アインは自信を持っていた。
「方向性は間違っていない」
第10話 命の泉
鎮也は、5つの試練を乗り越えて「命の泉」に戻った。
主は喜んだ。
そして、語り始めた。
「我は、頼まれただけなのだ。
この泉を守護する事を。
この泉から飛び立つ命は、いくつかの惑星に辿り着く。
そして生涯を終えて、ここにまた戻ってくる。
惑星に辿り着く時、人となるか?獣となるか?また植物となるか?
決めるのは、「命を織り成す方」だ。
1つだけ、例外がある。
それは、妖精だ。
妖精は、この泉の精でもあるのだ。
妖精は、選ばれた惑星にしか飛び立たない。
お前達は、「命を織り成す方」に選ばれたのだ。
しかし、思い違いをしてはならない。
保証されたのではない。
機会を与えられたのだ。
お前達が、この世界から飛び立つ日はくるだろう。
この世界で、命の真実は見つからない。
この世界で解るのは、物質の事だけだ。
だが、鍵を何本か貰っているはずだ。
その鍵に気付き、飛び立つのがいいだろう。
お前達が、この世界に安寧をもたらしてくれる事を願う。
そうすれば、我も我の世界に還る事ができる。
この世界に「命の泉」は、いくつかある。
選ばれたものは、お前達だけではない。
精進せよ」